57 / 80
連載
第142話 ティオグの策略
しおりを挟む
レドルの町で行われていた違法行為の数々。
裏で糸を引いているのが評判のいいダルフォス家である可能性が浮上し、俺はティオグたちと一緒にその人物を訪ねることにした。
さすがに力のある貴族の屋敷。
外観はもうこれでもかってほど大きく、庭もしっかり整備されて立派な造りとなっている。
「はあ……やはり貴族の屋敷というのは違うな」
「先生も正式に王聖六将のメンバーとなれば、ここに負けない邸宅を構えられますよ?」
「うーん……俺にはちょっとなぁ。大きすぎて逆に住みづらく感じるよ。今住んでいるあの小屋が性に合っていてちょうどいい」
「そういう控えめなところは昔も今もお変わりありませんね」
あまり実感ないんだけどね。
まあ、こういうのは他の人から見た評価だから、自分じゃ気づきにくいっていうのもあるんだろうけど。
そうこうしているうちに、馬車はダルフォス家の屋敷前に到着。
かなりの数で移動してきたから、外にいた使用人たちは驚いて何事かと集まってきた。代表してティオグが「至急、当主のセブロイ・ダルフォス様にお会いしたい」と告げると、使用人たちは慌てて屋敷内へ。
やがて、当主のセブロイ・ダルフォスが姿を現す。
「遠路遥々よく来てくれた。さあ、中へ入ってくれ」
動揺する素振りは一切見えない。
こうなることを事前に予測し、おかしな言動をしないよう入念に準備していた可能性もあるが……まだなんとも言えないな。
この場にいる全員で屋敷内に足を踏み入れるのは難しそうなので、まずは何人かに絞り、他の騎士たちには外で待機してもらう。
「何やら大所帯ですが、ここらで不審な事件でも起きましたかな?」
応接室に通されると、早速セブロイ様はそう切り出す。
これに対し、ティオグは探りを入れた。
「えぇ。その件ですが、セブロイ様は、レドルという町をご存じですか?」
「レドルか……悩まされているよ、あの町の治安には」
大きなため息をついた後、セブロイ様はレドルに関する情報を口にした。
「以前から怪しい噂を耳にはしていたのだが、決定的な証拠を掴むまでには至らなくてね。どうもあの町を仕切っている者は騎士団から情報を得て巧みに悪事を隠している節がある」
「なるほど……」
詰まることも焦ることもなく、淡々と述べていくセブロイ様。
ここまでは彼に怪しいところはまったく見えないが……あとはあのテイマーふたり組の件を切りだすしかなさそうかな。
裏で糸を引いているのが評判のいいダルフォス家である可能性が浮上し、俺はティオグたちと一緒にその人物を訪ねることにした。
さすがに力のある貴族の屋敷。
外観はもうこれでもかってほど大きく、庭もしっかり整備されて立派な造りとなっている。
「はあ……やはり貴族の屋敷というのは違うな」
「先生も正式に王聖六将のメンバーとなれば、ここに負けない邸宅を構えられますよ?」
「うーん……俺にはちょっとなぁ。大きすぎて逆に住みづらく感じるよ。今住んでいるあの小屋が性に合っていてちょうどいい」
「そういう控えめなところは昔も今もお変わりありませんね」
あまり実感ないんだけどね。
まあ、こういうのは他の人から見た評価だから、自分じゃ気づきにくいっていうのもあるんだろうけど。
そうこうしているうちに、馬車はダルフォス家の屋敷前に到着。
かなりの数で移動してきたから、外にいた使用人たちは驚いて何事かと集まってきた。代表してティオグが「至急、当主のセブロイ・ダルフォス様にお会いしたい」と告げると、使用人たちは慌てて屋敷内へ。
やがて、当主のセブロイ・ダルフォスが姿を現す。
「遠路遥々よく来てくれた。さあ、中へ入ってくれ」
動揺する素振りは一切見えない。
こうなることを事前に予測し、おかしな言動をしないよう入念に準備していた可能性もあるが……まだなんとも言えないな。
この場にいる全員で屋敷内に足を踏み入れるのは難しそうなので、まずは何人かに絞り、他の騎士たちには外で待機してもらう。
「何やら大所帯ですが、ここらで不審な事件でも起きましたかな?」
応接室に通されると、早速セブロイ様はそう切り出す。
これに対し、ティオグは探りを入れた。
「えぇ。その件ですが、セブロイ様は、レドルという町をご存じですか?」
「レドルか……悩まされているよ、あの町の治安には」
大きなため息をついた後、セブロイ様はレドルに関する情報を口にした。
「以前から怪しい噂を耳にはしていたのだが、決定的な証拠を掴むまでには至らなくてね。どうもあの町を仕切っている者は騎士団から情報を得て巧みに悪事を隠している節がある」
「なるほど……」
詰まることも焦ることもなく、淡々と述べていくセブロイ様。
ここまでは彼に怪しいところはまったく見えないが……あとはあのテイマーふたり組の件を切りだすしかなさそうかな。
470
お気に入りに追加
4,766
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。