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第136話 ふたり組の男
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翌日。
レドルの町を牛耳っている黒幕の使いは昼前に姿を現した。
ひとりはかなりの巨漢で、右目に眼帯を装着している。こっちが剣士だろう。
もうひとりは小柄で、左頬に大きな切り傷をつけていた。こっちは魔法使いかな。
しかし……どの角度から見ても悪党って面構えをしているな。今のこの町の雰囲気に物凄くマッチする外見をしている。
そんなふたりを遠巻きから物陰に隠れて観察する俺とフィオナ。
ちなみに、魔獣たちは別の場所に待機させており、非常事態となればすぐに召喚術で呼びだせるようにしておいた。さすがにそのまま一緒に行動したら目立ってしまうからな。
ガラの悪い男たちは町の中心部で待っていたジャンのもとへ向かい、彼を発見すると静かに声をかけた。
「今月分の稼ぎをもらいに来たぜ」
「あ、ああ」
やっていることはチンピラそのものだな。
いつもならここで大人しく金を差しだすのだが、今回はまったく動こうとしない。
「なんだよ。さっさとしろ。俺たちだって暇じゃねぇんだ」
「……もうあんたらに金は払わねぇ」
「あん?」
「そりゃどういう意味だ、てめぇ」
巨漢の男がジャンへと迫る。
すると、周りの男たちが集まりだし、男ふたりを囲んだ。
「どういうつもりだ、おまえら」
「ジャンの言う通り、俺たちはもうおまえらの言いなりにはならない」
「大体、胡散臭いんだよ」
「おまえらはバックに大物がいると言っているが、本当はそんなヤツいないんだろう?」
昨日打ち合わせをした通り、町の男たちはふたり組を煽る。
だが、ふたりは余裕の態度を崩さない。
それぞれ剣術と魔法に関してはかなりの実力者らしいが、さすがに二十人以上の数と同時に戦うのは難しいだろう。これまでは黒幕の存在を匂わせることで人々を屈服させてきたが、今はそれが疑われているため効果が薄い。
できれば、ここで黒幕の正体を漏らしてくれると助かるんだが。
「なるほど……知恵を出し合ってこの状況から脱しようと試みたようだが、無駄な努力だったな」
「俺たちがハッタリをかましていると思い込んでいるようだが、その読みは大きな間違いだ」
「まあ、どのみちおまえらが束になってかかってきても俺たちには敵わない――これがその証拠だ」
男たちは揃って指をパチンと鳴らす。
直後、彼らの足元に魔法陣が広がった。
「し、師匠、あれって!」
事態に気づいたフィオナが思わず叫ぶ。あの魔法陣は見慣れているはずだから、すぐに彼らのもうひとつの顔が分かったのだろう。
「間違いない……魔獣の召喚術だ」
あのふたり――テイマーでもあったのか!?
レドルの町を牛耳っている黒幕の使いは昼前に姿を現した。
ひとりはかなりの巨漢で、右目に眼帯を装着している。こっちが剣士だろう。
もうひとりは小柄で、左頬に大きな切り傷をつけていた。こっちは魔法使いかな。
しかし……どの角度から見ても悪党って面構えをしているな。今のこの町の雰囲気に物凄くマッチする外見をしている。
そんなふたりを遠巻きから物陰に隠れて観察する俺とフィオナ。
ちなみに、魔獣たちは別の場所に待機させており、非常事態となればすぐに召喚術で呼びだせるようにしておいた。さすがにそのまま一緒に行動したら目立ってしまうからな。
ガラの悪い男たちは町の中心部で待っていたジャンのもとへ向かい、彼を発見すると静かに声をかけた。
「今月分の稼ぎをもらいに来たぜ」
「あ、ああ」
やっていることはチンピラそのものだな。
いつもならここで大人しく金を差しだすのだが、今回はまったく動こうとしない。
「なんだよ。さっさとしろ。俺たちだって暇じゃねぇんだ」
「……もうあんたらに金は払わねぇ」
「あん?」
「そりゃどういう意味だ、てめぇ」
巨漢の男がジャンへと迫る。
すると、周りの男たちが集まりだし、男ふたりを囲んだ。
「どういうつもりだ、おまえら」
「ジャンの言う通り、俺たちはもうおまえらの言いなりにはならない」
「大体、胡散臭いんだよ」
「おまえらはバックに大物がいると言っているが、本当はそんなヤツいないんだろう?」
昨日打ち合わせをした通り、町の男たちはふたり組を煽る。
だが、ふたりは余裕の態度を崩さない。
それぞれ剣術と魔法に関してはかなりの実力者らしいが、さすがに二十人以上の数と同時に戦うのは難しいだろう。これまでは黒幕の存在を匂わせることで人々を屈服させてきたが、今はそれが疑われているため効果が薄い。
できれば、ここで黒幕の正体を漏らしてくれると助かるんだが。
「なるほど……知恵を出し合ってこの状況から脱しようと試みたようだが、無駄な努力だったな」
「俺たちがハッタリをかましていると思い込んでいるようだが、その読みは大きな間違いだ」
「まあ、どのみちおまえらが束になってかかってきても俺たちには敵わない――これがその証拠だ」
男たちは揃って指をパチンと鳴らす。
直後、彼らの足元に魔法陣が広がった。
「し、師匠、あれって!」
事態に気づいたフィオナが思わず叫ぶ。あの魔法陣は見慣れているはずだから、すぐに彼らのもうひとつの顔が分かったのだろう。
「間違いない……魔獣の召喚術だ」
あのふたり――テイマーでもあったのか!?
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