48 / 80
連載
第133話 涙の訴え
しおりを挟む
ジャンの言葉を受けた途端、酒場に集まっていた男たちの目の色が変わる。
「ほ、本当なのか?」
「し、信じられるかよ」
「いや、少しでも可能性があるなら俺はその話に乗りたい」
視線を集めるのは全員一緒でも、発した言葉はそれぞれ違っていた。そこがまた各個人の事情が透けて見えて、この町の闇の深さを感じさせられる。
だが、反応こそ異なるものの、そこから覗く全員の願望は――この町から抜けだしたいというもので一致していた。
俺はその部分を強調して伝える。
「落ち着いて聞いてもらいたい。俺はセラノス王都からこの町を調査しにやってきた者だ」
「「「「「っ!?」」」」」
店内のざわめきが一層強まった。
「お、王都の者が何をしに来たんだ?」
「とある商会からタレコミがあったんだ。この町では違法な取引などが行われていると――たとえば奴隷商とか、取り扱いが禁じられている魔草とか」
「うっ……」
ジャンをはじめ、周りの男たちはみんな思い当たる節があるようで俯いてしまう。だが、逆に言えば、全員やりたくもないことを半ば強制的にやらされ、それに対する罪悪感を覚えているような反応であった。
「顔を上げてくれ。もう二度とそんなマネをしないよう、ここの黒幕を叩いて抜けだそうじゃないか」
なんとか彼らにも立ち上がるきっかけを持ってもらいたくてそう呼びかける。
「……俺は嫌だ」
まず声をあげたのはここまで案内してくれたジャンだった。
「これ以上、ヤツらの悪事に加担するようなマネはもうしたくねぇ。俺はガキの頃からの夢だった一流の冒険者になる道を歩き直したい……」
涙ながらに、ジャンは訴えた。
恐らく、これまでに自分が犯してきた罪を思い返しているのだろう。
きっとそれは自分が望んでいた未来の姿じゃなかった。彼自身が語ったように、本来は一流の冒険者となろうと鍛錬を重ねていたはずなのだ。
ジャンの告白をきっかけに、周りからは次々と嗚咽が聞こえてきた。
みんな、思いはひとつなのだ。
とはいえ、これまでの犯罪行為が見過ごされるわけじゃない。彼らは事件が片付いたあとで騎士団に捕まるだろう――が、事件の黒幕が発覚し、強制されていたと分かれば罪は軽くはずだ。
そのためにも、ジャンたちから得られる情報は大きな鍵となる。
「ほ、本当なのか?」
「し、信じられるかよ」
「いや、少しでも可能性があるなら俺はその話に乗りたい」
視線を集めるのは全員一緒でも、発した言葉はそれぞれ違っていた。そこがまた各個人の事情が透けて見えて、この町の闇の深さを感じさせられる。
だが、反応こそ異なるものの、そこから覗く全員の願望は――この町から抜けだしたいというもので一致していた。
俺はその部分を強調して伝える。
「落ち着いて聞いてもらいたい。俺はセラノス王都からこの町を調査しにやってきた者だ」
「「「「「っ!?」」」」」
店内のざわめきが一層強まった。
「お、王都の者が何をしに来たんだ?」
「とある商会からタレコミがあったんだ。この町では違法な取引などが行われていると――たとえば奴隷商とか、取り扱いが禁じられている魔草とか」
「うっ……」
ジャンをはじめ、周りの男たちはみんな思い当たる節があるようで俯いてしまう。だが、逆に言えば、全員やりたくもないことを半ば強制的にやらされ、それに対する罪悪感を覚えているような反応であった。
「顔を上げてくれ。もう二度とそんなマネをしないよう、ここの黒幕を叩いて抜けだそうじゃないか」
なんとか彼らにも立ち上がるきっかけを持ってもらいたくてそう呼びかける。
「……俺は嫌だ」
まず声をあげたのはここまで案内してくれたジャンだった。
「これ以上、ヤツらの悪事に加担するようなマネはもうしたくねぇ。俺はガキの頃からの夢だった一流の冒険者になる道を歩き直したい……」
涙ながらに、ジャンは訴えた。
恐らく、これまでに自分が犯してきた罪を思い返しているのだろう。
きっとそれは自分が望んでいた未来の姿じゃなかった。彼自身が語ったように、本来は一流の冒険者となろうと鍛錬を重ねていたはずなのだ。
ジャンの告白をきっかけに、周りからは次々と嗚咽が聞こえてきた。
みんな、思いはひとつなのだ。
とはいえ、これまでの犯罪行為が見過ごされるわけじゃない。彼らは事件が片付いたあとで騎士団に捕まるだろう――が、事件の黒幕が発覚し、強制されていたと分かれば罪は軽くはずだ。
そのためにも、ジャンたちから得られる情報は大きな鍵となる。
115
お気に入りに追加
4,766
あなたにおすすめの小説
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
出来損ない皇子に転生~前世と今世の大切な人達のために最強を目指す~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日、従姉妹の結衣と買い物に出かけた俺は、暴走した車から結衣を庇い、死んでしまう。
そして気がつくと、赤ん坊になっていた。
どうやら、異世界転生というやつをしたらしい。
特に説明もなく、戸惑いはしたが平穏に生きようと思う。
ところが、色々なことが発覚する。
え?俺は皇子なの?しかも、出来損ない扱い?そのせいで、母上が不当な扱いを受けている?
聖痕?女神?邪神?異世界召喚?
……よくわからないが、一つだけ言えることがある。
俺は決めた……大切な人達のために、最強を目指すと!
これは出来損ないと言われた皇子が、大切な人達の為に努力をして強くなり、信頼できる仲間を作り、いずれ世界の真実に立ち向かう物語である。
主人公は、いずれ自分が転生した意味を知る……。
ただ今、ファンタジー大賞に参加しております。
応援して頂けると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。