無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一

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第131話 神獣のターン

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 クウタとタマが本来の姿を披露したことで、集まったチンピラたちは一気にパニック状態へと陥る。

「な、なんだ、ありゃあ……」
「勝てるわけがねぇよ……」
「お、俺は逃げるぞ!」
「俺もだ! こんなところで無駄死にしてたまるかよ!」

 とうとう武器を投げだして逃げだす者が出始めた。こうなると、あとはもう連鎖反応のようにひとりまたひとりとその場から走り去っていく。

「バカどもが! どこへ逃げても変わらんぞ!」

 最初に突っかかってきた男がそう叫ぶ――が、俺はその言葉が気にかかった。
『どこへ逃げても変わらんぞ!』
 それはつまり、ここで命惜しさに逃げだしたところで、結局は彼らの雇い主に見つかって消されるという意味なのだろうか。
 ……もう少し詳しく聞きだす必要があるな。

「ちょっといいかな?」
「うおっ!? な、なんだ、おまえ!?」

 最初に話しかけたドヤ顔の男に声をかける。
 周りではクウタとタマ、そしてふたりの暴れっぷりに我慢できなくなったシロンとクロスも加わって大立ち回りを演じており少々やかましいが、誰にも邪魔はされないだろうからちょうどいいとも言える。

「せっかくだからいろいろと話を聞きたいと思ってね」
「て、てめぇに話すことなんか――」
「この町を牛耳っているのは誰だ?」
「っ!?」
 
 核心を突く質問をぶつけた途端、男の顔が青ざめる。さらにはガクガクと震えはじめた。さすがに大袈裟だろと呆れていたのだが……どうやら本気で黒幕が怖いらしい。

「よほどボスが怖いみたいだな」
「あ、当たり前だ……おまえらも抵抗したところで無駄だぞ」
「俺の相棒たちを見てもそう思うか?」
「えっ?」

 そう告げると、男はゆっくりと振り返る。
 彼の視界には逃げ惑う男たちとそれを追いかけ回しているクウタ、タマ、クロス、シロンが映っているだろう。
 状況を確認した男は、再びゆっくりとした動きでこちらへと向き直る。

「あ、あんたたちは一体何者なんだ……?」
「諸事情で正体を明かすわけにはいかないが――王都から派遣されてきた者だ」
「お、王都から!?」
「協力をしてくれたら今みたいな状況から全員を開放することができる」
「…………」

 男は葛藤している様子だったが、しばらくするとさっきまでの弱々しい眼差しが消え去り、覚悟を決めた男の顔になる。

「分かった。ちょっと待っていてくれ。仲間たちにかけ合ってくる」
「いいとも。魔獣たちも手を引かせよう」

 交渉成立。
 とりあえず、あの子はクウタたちに護衛させて、俺は彼らとの話し合いへと参加することにした。





※明日新作を投稿中!

「地方勤務の聖騎士 ~王都からのどかな農村に飛ばされたけど楽しくやってます~」

ぜひ読んでみてください!
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