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第130話 大ピンチ?

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 この町で行われていたこと――それを保護した女の子から聞きだせれば、全容の解明につながるはずだ。

 しかし、悪事が露呈して騎士団が乗り込んで来たらまずいと考える連中はひとりやふたりってレベルじゃないらしい。その証拠に……町から出ようとしていた俺たちは、ガラの悪い連中に囲まれてしまっていた。中には武器を持っている者もいるようだし、親切な観光案内人というわけではなさそうだ。

「俺たちに何か用か?」

 集まってきた男のひとりに尋ねると、勝ち誇った表情を向けつつ「はっ」と鼻で笑い飛ばされた。

「強気に出られるような状況かよ。もっと周りをよく見るんだな」

 男たちの数は総勢で二十人以上入るだろうか。
 物陰にも気配を感じるので、視界に収まりきれない者を含めると倍以上に増えそうだ。
 数でいえばこちらが明らかに不利ということもあって、女の子は怯えた表情で俺のズボンにしがみついている。
 俺は彼女を安心させるため、そっと頭に手を添える。

「大丈夫だから、心配しなくていいよ」

 優しくそう語りかけると、女の子はキョトンとした顔で俺を見つめる。
 ……そういえば、ノエリーやミネットたちと出会ったのもこれくらいの年齢だったかな。
 とりあえず、思い出に浸るのはあとにして、まずは目の前のことに集中しよう。もしかしたら王都で起きた謎の暴走事件についても何か聞けるかもしれない。

「なぜ俺たちを囲むんだ?」
「理由は自分自身が一番よく分かっているだろう? 俺たちの商売を邪魔されたとあっては生かして返すわけにはいかない」
「随分と物騒なんだな」
「それがボスの決めたこの町のルールだからな」
「ボス……」

 やはり、バックにはもっと別の権力者がいるようだ。
 彼らはそのボスとやらに仕える駒。
 ここでどれだけ倒したところで事態の進展は望めない――が、ボスの情報を集めておく必要はあるだろう。

「見たところ、おまえはテイマーのようだが、そっちのリザードマンと魔犬以外はたいした戦力ではない。Dランクの魔獣が二体いたところでこの状況を打開するのは無理だろう?」
「「っ!?」」

 あっ……バカだなぁ。
 
「あーあ……知らねぇぞぉ……」
「無知とは恐ろしいな……」

 クロスとシロンもドン引きしている。
 そりゃそうだ。
 ランクだけでいえば、クウタもタマも計測不能の神獣。今は動きやすく、そして目立たないように小さくなっているが、本気を出せばどうなるか……周りの物騒な男たちは身をもって知ってもらうとしよう。

「僕たちもなめられたものですね、タマ」
「うむ。そこまで言われたら力を披露すべきだろう。――ご主人!」
「分かっているよ。派手に暴れてこい」

 俺からの許可が下りたことで、クウタもタマもすぐさま本来の姿へと戻る。

「……えっ?」

 先頭で吠えていた男は、二体のあまりの変わりぶり脱力し、手にしていた剣がカランカランという虚しい音を立てて地面に落ちた。

 さあ、ここからはクウタとタマのターンだ。

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