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第128話 怪しい町

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 到着したレドルの町は……話に聞いた通り、お世辞にもいい町とは呼べない雰囲気をまとっていた。

 窓ガラスが割れた家屋や店。
 視線の焦点が合わず、フラフラと徘徊する若い男性。
 どこからともなく聞こえてくる性別不明の奇声。

「これは……なかなか怖い町だな」
「旦那がそれを言うんすか?」
「なんだよ。俺の方が怖いっていうのか?」
「というより、おっかない我々を従えて歩いているというだけでだいぶ目立つのでは?」

 タマに言われてハッとなる。
 俺が連れている魔獣たち――主にクロス、シロン、タマだが、確かに見た目はかなり怖い。
 どうりでさっきからチラチラと視線を感じるわけだ。

 だが、無用なトラブルを避けるという意味ではとても役に立っている。
 そんな怪しげなレドルの町だが、俺たちは物見遊山でこの地を訪れたわけじゃない。ミネットが心配していた、不穏な動きについて調査するため遠路遥々やってきたのだ。

 ……とはいえ、町全体が怪しい雰囲気で包まれているこの町をどうやって調べたらいいのやら。叩けば叩いた分だけ埃がわんさか出てきそうな気配だし。

「これからどうする、主よ」
「何もないまま王都へ戻っても状況は変わらないだろうな」
「王聖六将なんて大層な立場になったんすから、旦那がひと声かけたら騎士団か魔法兵団は動くんじゃないんすか?」
「そう単純な話でもないみたいだよ」

 まあ、実際、騎士団の方は動いてくれるかもしれない。団長のラングトンとは懇意にさせてもらっているし。

 ただ、私情で動いてもらうのは気が引けた。
 もし空振りに終わったとなったら、ラングトン騎士団長の責任問題にも発展しかねないからな。ここは確固たる証拠を掴み、町を正常化に導かないと。

「クウタ、おまえは上空から町の様子を探ってくれ。何かあったらすぐに俺のもとへ戻ってくるんだ」
「任せてください」
「それから……もし非常事態が発生した場合、俺の許可を待たずに神獣化して脅威を取り除いて構わない。いざとなったら助かる方法を探るんだ」
「分かりました」

 クウタは真面目な子だから、すぐに俺のことを考えてしまうだろう。
 だが、この町ではいつ何が起こるかまったく読めない。
 それを考慮し、トラブルが発生した際は独断で動けるように指示を出しておいた。

「俺たちはどうします?」
「そうだな……とりあえず、もう少し辺りを見て回ろう」

 俺は進路を西へと取り、直進――と、その時、背中に軽い衝撃を受けた。

「えっ?」

 驚いて振り返ると、そこには五歳くらいの小さな女の子が。
 身なりはボロボロで、ところどころ泥やゴミで汚れており、瞳に涙を浮かべながら訴えかけるようにジッとこちらを見つめていた。

「君は……」

 どうしたのかと尋ねようとしたら、

「待ちやがれ、このクソガキ!」

 涙の原因と思われる存在が向こうからやってきたよ。
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