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第123話 鉱山王ダレン
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みんながダレンと呼ぶ王聖六将の五人目。
面識はないが、その名には聞き覚えがあった。
「まさか……【鉱山王】ロジャー・ダレン?」
「うぅん?」
名前を呼ばれたダレンさんはゆっくりとこちらへと振り返る。
「おまえさん……王国の関係者かと思ったが、どうも違うようだな。まさかとは思うが、俺と同じ王聖六将の候補者か?」
「は、はい。バーツ・フィリオンと言います」
「バーツ……聞いたことのない名前だな」
そりゃそうだ。
ノエリーから王聖六将の候補者に選ばれていると聞かされるまでの俺は、採集クエストをメインにこなす弱小冒険者。ニーナくらい知名度があるならまだしも、正直言って平均以下の実績しかない。
その点についてはダレンさんも了承しているようだった。
「そういえば、王聖六将の中には表立った実績のないヤツも選ばれているという話は聞いていたが……あんたがそうなのか?」
「た、たぶんそうだと思います」
「ダレンさん、バーツ先生はとても凄い方なのですよ?」
すかさずアリアーヌがフォローへと回ってくれた。
こういう気配りのできるところも昔と変わっていないな。
「先生? ――ああ、そういえば、おまえさんをはじめ、今やこのセラノスに欠かせない優秀な人材を育てたテイマーがいるって話だったな」
「彼がそのテイマーよ。連れているパートナーには神獣クラスもいるんだから」
さらにニーナが追撃のひと言。
「神獣を連れているテイマー……それで実績がないというのも妙な話だが、嘘やでまかせでここに顔を出せるわけもない。こいつは面白いな」
ダレンさんは「がっはっはっ!」と豪快に笑い飛ばしながら、俺の背中をバシバシと叩く。
なるほど……噂通り、豪快な人だな。
ロジャー・ダレン。
凄まじい鑑定眼のスキルを持った人物で、彼が見抜くのはズバリ鉱脈――魔鉱石が埋まる鉱脈を的確に見分け、その土地を買い取って採掘場をつくり、巨万の富を得たとされる。
だが、彼は驕り高ぶって他者を見下すようなマネはしなかった。
仕事のない者たちを集め、鉱山夫として働かせる。鉱山ということで労働環境は優しいとは言い切れないが、不満を口にする者はいないという。
彼の所有する鉱山の麓には大きな町があり、そこはどこも大規模で活気があると風の噂で聞いたな。
ここまで振り返れば、確かに王聖六将のひとりに相応しい実績と言える。
……一応、神獣使いという肩書きはできたけど、実績という面では他のメンツに大きく劣っているな、俺。
まあ、実績だけで選ばれたわけじゃないからいいんだけど。
そうこうしているうちにティオグがやってきた。
神妙な面持ちだが……何か重要な話し合いでもしようっていうのか?
面識はないが、その名には聞き覚えがあった。
「まさか……【鉱山王】ロジャー・ダレン?」
「うぅん?」
名前を呼ばれたダレンさんはゆっくりとこちらへと振り返る。
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「は、はい。バーツ・フィリオンと言います」
「バーツ……聞いたことのない名前だな」
そりゃそうだ。
ノエリーから王聖六将の候補者に選ばれていると聞かされるまでの俺は、採集クエストをメインにこなす弱小冒険者。ニーナくらい知名度があるならまだしも、正直言って平均以下の実績しかない。
その点についてはダレンさんも了承しているようだった。
「そういえば、王聖六将の中には表立った実績のないヤツも選ばれているという話は聞いていたが……あんたがそうなのか?」
「た、たぶんそうだと思います」
「ダレンさん、バーツ先生はとても凄い方なのですよ?」
すかさずアリアーヌがフォローへと回ってくれた。
こういう気配りのできるところも昔と変わっていないな。
「先生? ――ああ、そういえば、おまえさんをはじめ、今やこのセラノスに欠かせない優秀な人材を育てたテイマーがいるって話だったな」
「彼がそのテイマーよ。連れているパートナーには神獣クラスもいるんだから」
さらにニーナが追撃のひと言。
「神獣を連れているテイマー……それで実績がないというのも妙な話だが、嘘やでまかせでここに顔を出せるわけもない。こいつは面白いな」
ダレンさんは「がっはっはっ!」と豪快に笑い飛ばしながら、俺の背中をバシバシと叩く。
なるほど……噂通り、豪快な人だな。
ロジャー・ダレン。
凄まじい鑑定眼のスキルを持った人物で、彼が見抜くのはズバリ鉱脈――魔鉱石が埋まる鉱脈を的確に見分け、その土地を買い取って採掘場をつくり、巨万の富を得たとされる。
だが、彼は驕り高ぶって他者を見下すようなマネはしなかった。
仕事のない者たちを集め、鉱山夫として働かせる。鉱山ということで労働環境は優しいとは言い切れないが、不満を口にする者はいないという。
彼の所有する鉱山の麓には大きな町があり、そこはどこも大規模で活気があると風の噂で聞いたな。
ここまで振り返れば、確かに王聖六将のひとりに相応しい実績と言える。
……一応、神獣使いという肩書きはできたけど、実績という面では他のメンツに大きく劣っているな、俺。
まあ、実績だけで選ばれたわけじゃないからいいんだけど。
そうこうしているうちにティオグがやってきた。
神妙な面持ちだが……何か重要な話し合いでもしようっていうのか?
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