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第119話 大聖堂の異変

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 シロンの感じ取った異臭。
 その正体を探るため、俺たちはラングトン騎士団長がいるという大聖堂へと向かった。

 現場に到着すると、何やら人だかりができている。
 騎士たちがこれ以上中には入らないようにと注意を促しながらロープで制限をかけているようだ。俺たちはそんな彼らに近づき、事情を説明してから中へと入れてもらった。

 どうやら俺たちが留守にしている間に大聖堂で何やら事件が起きたらしい。
 近づいていくと、ノエリーが異変に気づく。

「師匠、あそこを見てください」
「うん? ――ステンドグラスが割れている?」

 この大聖堂には一度来たことがあるんだけど、とても大きくて綺麗なステンドグラスが印象に残っている。だが、今は跡形もなく粉々に砕け散っていた。

「これは……一体何があったんだ?」

 周りの忙しなさから只事ではないと感じてはいたが、どうも俺たちの想像以上の事態が発生したようだ。とりあえず、ラングトンから事情を聞きたいと捜しているうちに、騎士のひとりが居場所を教えてくれた。

「バーツ様、ラングトン騎士団長でしたら大聖堂の中です」
「ああ、ありがとう」

 ……なんか、未だに「様」をつけられる呼び方に慣れないな。
 そもそもみんなの「師匠」とか「先生」もまだちょっとむず痒いだよねぇ。冒険者時代は採集クエストしかやらなかったので、どちらかというと下に見られることの方が多かったからなのか……まあ、徐々に慣れていこう。

 それはともかく、今はこの大聖堂に起きた事態を把握しなければ。
 大聖堂内部へと足を運ぶと、俺たちは言葉を失った。

「ど、どうなっているんだ、これは……」

 中はほとんど廃墟だった。
 まるで嵐でも通過した後のような荒れっぷりに、俺だけじゃなく他のみんなも茫然と立ち尽くしている。
 そんな俺たちのもとへ、ラングトンがやってきた。

「おぉ! 戻って来たか!」
「ラングトン騎士団長、これは一体……」
「見ての通り……派手に暴れ回っていたヤツがいてな。すでに取り押さえてある」
「取り押さえたということは、犯人も?」
「すでに連行している。錯乱状態でまともに会話ができないが……どうやら冒険者パーティーに所属する魔法使いらしい」

 魔法使いか。
 この状況から察するに、恐らく強力な風魔法を使用したのだろう。

 ――問題は動機だ。
 なぜこのような暴挙にでたのか。
 大聖堂に恨みがあるとしか思えないが、ここは特に悪評など聞いていない。それに、捕まえた魔法使いが錯乱状態だったというのも気にかかる。

 もしかして、シロンの感じた異臭と何か関係があるのかもしれないな。
 それをラングトン騎士団長へ伝えると、

「バーツ……帰ってきて早々で悪いが、もう少し詳しい話を聞かせてくれるか?」

 眼光がさらに鋭くなった。
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