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第118話 帰還
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雪山からメルキス王都へと戻ってきた俺たち。
早速、今回の件をラングトンに報告しようとするのだが、あいにく急用で不在だという。
対応してくれた兵士にどんな用事か尋ねてみるも、かなり急いでいたらしく何も説明を受けていないらしい。
「騎士団長という立場にある者がそこまで急かされるとなると……ちょっと厄介な案件でも舞い込んで来たか?」
「メイがいれば何か分かるかもしれませんが……」
報告に同行してくれたアリアーヌとフィオナはこうした組織の内情について疎い。頼れるのはノエリーだけだ。
雪山での一件はアリアーヌを無事に救出できただけでなく、白虎《ホワイト・タイガー》のタマという強力な戦力が加わったという報告もしなくちゃいけない。できる限り早い方がいいとは思ったが、今日中には無理そうだな。
――しかし、だからといってこのまま回れ右をして帰るのも気が引ける。
これでも一応、王聖六将って大層な名前の候補に数えられている身だ。
もうちょっと突っ込んでみてもいいだろう。
そうしなくちゃ気になって今日は眠れそうにないからな。
「騎士団長は今どこに?」
「大聖堂にいらっしゃるはずですが……」
「何っ?」
それはまた予想外の場所だな。
「騎士団長さんが大聖堂に……変わった組み合わせですね」
「そういうのに疎い俺でもそう思います」
アリアーヌやフィオナでも、ラングトン騎士団長が大聖堂にいるという事実に違和感を覚えているようだ。
「……少し様子を見に行ってみるか」
「お付き合いしますよ、先生」
「俺も行くよ」
「いいのか? ふたりとも疲れているだろう?」
道に迷っていて登山をしていないノエリーはともかく、一日経過しているとはいえふたりはバリバリ戦闘をこなした後だ。疲労が蓄積されていてもおかしくはない。
とはいえ、アリアーヌもフィオナも瞳に力がある。
まだまだやれそうだな。
これが若さってヤツか……おっさんにはないパワーで羨ましいよ。
「じゃあ、みんなで大聖堂へ行こうか」
「「「はい!」」」
とりあえず次の行動は決まった。
せめてラングトンに帰還したという報告だけでもしようと騎士団の詰め所を出て大聖堂を目指すことに――が、
「む?」
突然シロンが足を止める。
何か異変を感じたようで鼻先をピクピクと動かしていた。
「何かあったのか、シロン」
「変な臭いだな……あっちの方から漂ってくる」
「あっち?」
シロンが示した場所は――大聖堂のある方向だった。
「これはちょっと……洒落にならないぞ」
「行ってみましょう、師匠」
「騎士団長さんの身に何かあったのかもしれません」
「もしそうだったら大変だよ!」
「そうだな。――走るぞ」
俺も何だか嫌な予感がする。
ラングトン……何事もなければいいのだが。
早速、今回の件をラングトンに報告しようとするのだが、あいにく急用で不在だという。
対応してくれた兵士にどんな用事か尋ねてみるも、かなり急いでいたらしく何も説明を受けていないらしい。
「騎士団長という立場にある者がそこまで急かされるとなると……ちょっと厄介な案件でも舞い込んで来たか?」
「メイがいれば何か分かるかもしれませんが……」
報告に同行してくれたアリアーヌとフィオナはこうした組織の内情について疎い。頼れるのはノエリーだけだ。
雪山での一件はアリアーヌを無事に救出できただけでなく、白虎《ホワイト・タイガー》のタマという強力な戦力が加わったという報告もしなくちゃいけない。できる限り早い方がいいとは思ったが、今日中には無理そうだな。
――しかし、だからといってこのまま回れ右をして帰るのも気が引ける。
これでも一応、王聖六将って大層な名前の候補に数えられている身だ。
もうちょっと突っ込んでみてもいいだろう。
そうしなくちゃ気になって今日は眠れそうにないからな。
「騎士団長は今どこに?」
「大聖堂にいらっしゃるはずですが……」
「何っ?」
それはまた予想外の場所だな。
「騎士団長さんが大聖堂に……変わった組み合わせですね」
「そういうのに疎い俺でもそう思います」
アリアーヌやフィオナでも、ラングトン騎士団長が大聖堂にいるという事実に違和感を覚えているようだ。
「……少し様子を見に行ってみるか」
「お付き合いしますよ、先生」
「俺も行くよ」
「いいのか? ふたりとも疲れているだろう?」
道に迷っていて登山をしていないノエリーはともかく、一日経過しているとはいえふたりはバリバリ戦闘をこなした後だ。疲労が蓄積されていてもおかしくはない。
とはいえ、アリアーヌもフィオナも瞳に力がある。
まだまだやれそうだな。
これが若さってヤツか……おっさんにはないパワーで羨ましいよ。
「じゃあ、みんなで大聖堂へ行こうか」
「「「はい!」」」
とりあえず次の行動は決まった。
せめてラングトンに帰還したという報告だけでもしようと騎士団の詰め所を出て大聖堂を目指すことに――が、
「む?」
突然シロンが足を止める。
何か異変を感じたようで鼻先をピクピクと動かしていた。
「何かあったのか、シロン」
「変な臭いだな……あっちの方から漂ってくる」
「あっち?」
シロンが示した場所は――大聖堂のある方向だった。
「これはちょっと……洒落にならないぞ」
「行ってみましょう、師匠」
「騎士団長さんの身に何かあったのかもしれません」
「もしそうだったら大変だよ!」
「そうだな。――走るぞ」
俺も何だか嫌な予感がする。
ラングトン……何事もなければいいのだが。
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