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第167話 優志とリウィル
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※次回いよいよ最終回です。
優志たちは大歓声をもって連合騎士団に迎え入れられた。
まるで地鳴りのような声が明るくなった魔界に響き渡り、優志たちはその熱狂ぶりに驚きながらも手を振ってそれに応えた。
そこで、彼らは驚くべき人物と再会を果たす。
「よくやってくれたね、ユージくん。それに若き勇者たち」
「ベルギウス様!」
次期国王の呼び声も高いベルギウスが危険な魔界にいる。今でこそ魔王シンが去り、平穏になっているが、それまではいつどこで魔獣が襲ってくるか分からない超がつく危険地帯であった。
それでも、ベルギウスがこの魔界に足を踏み入れた理由は、ひとえに優志たちの存在が大きかった。
「君たちのおかげでこの世界は救われた。その礼を言いに来たのさ。それに――彼の安否をいち早く君たちに教えたくてね」
「彼の安否?」
優志たちはベルギウスの言う「彼」について最初は見当がつかなかったが、すぐにその人物の顔が頭に浮かぶ。
「やれやれ、命を張って戦っていたというのに忘れられてしまうとはな」
ため息と共に優志たちの前に現れたのは――リウィルの父ニックだった。
「ニックさん!?」
優志と六人の勇者たちはニックの登場に驚きを隠せないでいた。
最終決戦の場に真田が現れたことから、ニックは敗れ、最悪死亡しているのかもしれないと全員が予想していた。現に、ニックは真田の攻撃を受けて瀕死の重傷を負っていたのだが、今は健康そのものといった感じ。
さらに優志たちを驚かせたのがニックの外見だった。
なんと、魔人化が解かれており、普通の人間と変わらない見た目だったのだ。
「ニックさん……その姿は!?」
「君の回復水のおかげだ」
「お、俺の?」
「俺が真田くんに敗北して死にかけていた時、ちょうどベルギウス様が通りかかったんだ」
「驚いたよ。バルザ――じゃなくて、ニックが倒れているところを目撃した時は」
「それで優志さんの回復水を」
美弦が言うと、ベルギウスはニッコリ微笑んで頷いた。その後、ベルギウスは何かを思い出したようで、勇者六人を見回してからゆっくりと語り始めた。
「それと、君たちを元の世界へ送り帰せる方法が見つかりそうなんだ」
「ほ、本当ですか!?」
勇者たちは元の世界へ戻れるかもしれないという希望に盛り上がりを見せた。この世界へ来た際に、元の世界には戻れないと事前に聞かされてから転移してきた彼らだが、ここで長らく生活しているうちにホームシックになったのだろう。
今、勇者たちは魔王討伐を成し遂げ、転移してきた目的を果たした。
もう、彼らを元の世界へ帰ることを止める者はいない。
「よかったな、みんな」
「優志さん……」
優志は美弦に囁き、それに対して美弦は最高の微笑みをもって応えた。
薄々ではあるが、優志は美弦が元の世界へ帰りたいと思い始めていることを悟っていた。なので、今回のベルギウスの言葉は、彼女にとってはこれ以上ない朗報となっただろう。
――その後、優志たちは魔界から戻り、勇者たちは元の世界へ戻る手段についての説明を受けるため城へ立ち寄ることとなった。
優志も、国王から労いの言葉が贈られるとベルギウスやガレッタに言われたが、それよりも優先しなければならないことがあると告げて、一足先に城をあとにし、帰路へと就いた。
すでに周囲は暗くなっている。
月明かりが照らす荒れた道を、ベルギウスが用意してくれた馬車に乗って進む。
その先にあるのは、この世界に来てから自分の生活を支えてくれた店――そして、そこで待っているのは、同じように優志を支えてくれたひとりの女性だ。
店が近づくと、明かりが見えた。
どうやらまだ起きているようだ。
優志は馬車から降りると御者に礼を述べて足早に店へと向かう。
そしてノックもせずに「本日閉店」の札がかかっている扉を開けた。
「あ、ごめんなさい。今日の営業はもうこれで――」
聞き慣れた女性の声は、その主が振り返って優志を視界に捉えた瞬間に消えた。
「ただいま、リウィル」
帰還を報告すると、声の主――リウィル・スパイクスは目尻に大きな涙を溜め、ふらつく足取りで優志の胸に飛び込む。
「よかった……本当によかったです……ユージさんが無事で……」
嗚咽混じりに優志が帰って来たことを喜ぶリウィル。
彼女の手違いで無理矢理召喚された挙句、城から放り出されて己の生きる道を模索し続けてきた。大変なこともあったが、この世界で必死に生きようとしていたこれまでの日々は、まさに生を実感する日々でもあった。
決められた時間に会社へ行って仕事をして帰ってまた会社へ行く。
この世界と比べたら大変さのベクトルは違うが、今の生活の方がずっとマシに思える。だから優志はリウィルに感謝していた――間違って自分を召喚してくれてありがとう、と。
「いろいろと伝えたいことがあるんだ。魔界へ行って、魔獣や魔王と戦って――他にも本当にいろいろなことがあって、君に伝えなくちゃいけないことがたくさんあるんだって……そう思ったら、国王からの労いの言葉なんて後回しにしちゃったよ。まず何よりも、君に会いたかった」
「私も! 私も会いたかったです!」
強く抱きしめ合うふたりはそのまま床に膝から崩れ落ちた。それでも抱き合うのをやめずに互いの温もりを――存在を確認し合う。
優志は静かに、リウィルは泣きじゃくり、その声に驚いた宿泊客たちが集まってきて優志の帰りを祝福した。
こうして、優志の魔界での戦いは真の終幕を迎えたのであった。
優志たちは大歓声をもって連合騎士団に迎え入れられた。
まるで地鳴りのような声が明るくなった魔界に響き渡り、優志たちはその熱狂ぶりに驚きながらも手を振ってそれに応えた。
そこで、彼らは驚くべき人物と再会を果たす。
「よくやってくれたね、ユージくん。それに若き勇者たち」
「ベルギウス様!」
次期国王の呼び声も高いベルギウスが危険な魔界にいる。今でこそ魔王シンが去り、平穏になっているが、それまではいつどこで魔獣が襲ってくるか分からない超がつく危険地帯であった。
それでも、ベルギウスがこの魔界に足を踏み入れた理由は、ひとえに優志たちの存在が大きかった。
「君たちのおかげでこの世界は救われた。その礼を言いに来たのさ。それに――彼の安否をいち早く君たちに教えたくてね」
「彼の安否?」
優志たちはベルギウスの言う「彼」について最初は見当がつかなかったが、すぐにその人物の顔が頭に浮かぶ。
「やれやれ、命を張って戦っていたというのに忘れられてしまうとはな」
ため息と共に優志たちの前に現れたのは――リウィルの父ニックだった。
「ニックさん!?」
優志と六人の勇者たちはニックの登場に驚きを隠せないでいた。
最終決戦の場に真田が現れたことから、ニックは敗れ、最悪死亡しているのかもしれないと全員が予想していた。現に、ニックは真田の攻撃を受けて瀕死の重傷を負っていたのだが、今は健康そのものといった感じ。
さらに優志たちを驚かせたのがニックの外見だった。
なんと、魔人化が解かれており、普通の人間と変わらない見た目だったのだ。
「ニックさん……その姿は!?」
「君の回復水のおかげだ」
「お、俺の?」
「俺が真田くんに敗北して死にかけていた時、ちょうどベルギウス様が通りかかったんだ」
「驚いたよ。バルザ――じゃなくて、ニックが倒れているところを目撃した時は」
「それで優志さんの回復水を」
美弦が言うと、ベルギウスはニッコリ微笑んで頷いた。その後、ベルギウスは何かを思い出したようで、勇者六人を見回してからゆっくりと語り始めた。
「それと、君たちを元の世界へ送り帰せる方法が見つかりそうなんだ」
「ほ、本当ですか!?」
勇者たちは元の世界へ戻れるかもしれないという希望に盛り上がりを見せた。この世界へ来た際に、元の世界には戻れないと事前に聞かされてから転移してきた彼らだが、ここで長らく生活しているうちにホームシックになったのだろう。
今、勇者たちは魔王討伐を成し遂げ、転移してきた目的を果たした。
もう、彼らを元の世界へ帰ることを止める者はいない。
「よかったな、みんな」
「優志さん……」
優志は美弦に囁き、それに対して美弦は最高の微笑みをもって応えた。
薄々ではあるが、優志は美弦が元の世界へ帰りたいと思い始めていることを悟っていた。なので、今回のベルギウスの言葉は、彼女にとってはこれ以上ない朗報となっただろう。
――その後、優志たちは魔界から戻り、勇者たちは元の世界へ戻る手段についての説明を受けるため城へ立ち寄ることとなった。
優志も、国王から労いの言葉が贈られるとベルギウスやガレッタに言われたが、それよりも優先しなければならないことがあると告げて、一足先に城をあとにし、帰路へと就いた。
すでに周囲は暗くなっている。
月明かりが照らす荒れた道を、ベルギウスが用意してくれた馬車に乗って進む。
その先にあるのは、この世界に来てから自分の生活を支えてくれた店――そして、そこで待っているのは、同じように優志を支えてくれたひとりの女性だ。
店が近づくと、明かりが見えた。
どうやらまだ起きているようだ。
優志は馬車から降りると御者に礼を述べて足早に店へと向かう。
そしてノックもせずに「本日閉店」の札がかかっている扉を開けた。
「あ、ごめんなさい。今日の営業はもうこれで――」
聞き慣れた女性の声は、その主が振り返って優志を視界に捉えた瞬間に消えた。
「ただいま、リウィル」
帰還を報告すると、声の主――リウィル・スパイクスは目尻に大きな涙を溜め、ふらつく足取りで優志の胸に飛び込む。
「よかった……本当によかったです……ユージさんが無事で……」
嗚咽混じりに優志が帰って来たことを喜ぶリウィル。
彼女の手違いで無理矢理召喚された挙句、城から放り出されて己の生きる道を模索し続けてきた。大変なこともあったが、この世界で必死に生きようとしていたこれまでの日々は、まさに生を実感する日々でもあった。
決められた時間に会社へ行って仕事をして帰ってまた会社へ行く。
この世界と比べたら大変さのベクトルは違うが、今の生活の方がずっとマシに思える。だから優志はリウィルに感謝していた――間違って自分を召喚してくれてありがとう、と。
「いろいろと伝えたいことがあるんだ。魔界へ行って、魔獣や魔王と戦って――他にも本当にいろいろなことがあって、君に伝えなくちゃいけないことがたくさんあるんだって……そう思ったら、国王からの労いの言葉なんて後回しにしちゃったよ。まず何よりも、君に会いたかった」
「私も! 私も会いたかったです!」
強く抱きしめ合うふたりはそのまま床に膝から崩れ落ちた。それでも抱き合うのをやめずに互いの温もりを――存在を確認し合う。
優志は静かに、リウィルは泣きじゃくり、その声に驚いた宿泊客たちが集まってきて優志の帰りを祝福した。
こうして、優志の魔界での戦いは真の終幕を迎えたのであった。
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