164 / 168
第164話 魔王VS優志
しおりを挟む
「地球を……」
魔王シンの野望を耳にした優志は聖水剣を構える。
「勇ましいね。だけど君では私に勝つことは叶わない」
「宮原さんだけじゃない!」
六人の勇者たちの闘志もまだ死んではいない。それぞれが手にした武器を構えて魔王シンへと立ち向かう。
「本当に……君たちは理想通りの勇者だね」
こちらの戦意が萎えていないことを理解した魔王シンの表情が変化する。両手を前に突き出し、それぞれの掌からバスケットボールほどの大きさをした闇色の光弾を生み出した。
「君たちが私の野望の邪魔をするというなら、相応の態度を示すまでだ」
そう言い放ち、
「死ね」
明確な殺意が込められた一言が引き金となり、光弾は放たれた。
「みんな、避けろ!」
三上の指示を受け、勇者たちはその場から退避――だが、優志だけはその場に留まった。
「! 宮原さん!?」
「大丈夫だ、三上くん――俺が止める!」
優志は聖水剣をしっかりと握り、光弾へと飛び込んでいく。
そのうちのひとつを真正面に捉えた。
「!!!」
こちらを目がけて飛んでくる光弾へ、優志は剣を向ける。
「! まさか、アレを斬る気なのか!?」
「優志さん!?」
武内と美弦は優志が何をしようとしているのかいち早く読み取った。が、ふたりはすでに回避行動に移っているため、援護のしようがない。他の勇者たちも同様だった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
勇ましい雄叫びをあげて、優志は光弾を聖水剣で切り裂いた。
「うおっ!? すげぇ!」
「マジっ!? あのおっさんやるじゃん!」
上谷と安積は優志の気迫ある一撃に称賛の声を贈る。
だが、優志に慢心はない。
まだ光弾はあとひとつ残っているのだから。
「やるじゃないか。なら、こいつはどうだい?」
残りひとつの光弾は大きく軌道を変えて優志へと襲い掛かる。この光弾は魔王シンの意思ひとつで方向を変えられるのだ。
しかし、優志はそれを読んでいた。
すぐさま体勢を立て直し、自分へと向かってくるもうひとつの光弾を迎え撃つ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
一発目と同じように、優志は光弾を斬り捨てた。
「!?」
これには魔王シンも、そして同じくこの世界へ転移してきた若き勇者たちも同じように驚きを隠せないでいた。
「ば、バカな……君のスキルは回復スキルのはず!?」
「そうだ。俺のスキルは回復スキル――だからあんたに勝てる!」
優志は再び剣を構えた。
その瞳は自信に満ちている。
「そうか……優志さんの回復スキルなら魔人化したあの人を元に戻せる」
美弦の言葉を受けた武内も、優志の言動の意図を理解する。
「なるほど……魔王シンを元の人間――館川新太郎に戻せば、俺たちにも勝機はある!」
「そうと決まれば俺たちのやるべきことはひとつだ!」
橘のかけ声で、勇者六人は優志を援護するための陣形を整える――だが、それを遮るようにひとりの少年が決戦の場に舞い降りた。
「そこまでにしてもらおうかな」
ニックを打ち破って駆けつけた真田であった。
「! 真田くん!」
真田の登場に一番動揺したのは優志だ。
なぜなら、真田がこの場にいるということは、彼を止めるために戦線を離れたニックは敗れたということを意味する――リウィルの父であるニックの。
「宮原さん! 真田は俺たちが食い止める!」
「だから宮原さんは魔王シンに集中してくれ!」
「魔王を元の人間の姿に戻せば、さっき言っていたバカげた計画も食い止められるはずだ!」
勇者たちからの叫びを耳にした優志はハッと我に返る。
今、魔王シンを止められるのは自分しかいない。
この聖水剣で、魔王シンを元の人間の姿に戻す――そうするより他ないのだ。
「魔王シン! 覚悟してもらうぞ!」
「どうしても私の邪魔がしたいようだな」
魔王シンは背中にある大きな黒い翼を広げると、空高く舞い上がった。
「これで一対一……正真正銘、最後の戦いだ」
上空から魔王が呟く。
優志にその声は届かないが、敵意をむき出しとしていることはハッキリと認識できた。
「来いよ、魔王」
優志も腹を括る。
これが最後の勝負――最後の一撃。
「ふっ――食らうがいい」
魔王シンは特大の光弾を生み出し、それを優志目がけて解き放つ。だが、優志は怯む様子もなく、その巨大光弾を一刀両断。衝撃で辺りに突風が生じるが、それをもろともせずに反撃へと移る。
「伸びろ!」
優志の意思に応じて、聖水剣は姿を変化する。
大きく伸びる聖水剣は真っ直ぐ魔王シンへと向かって伸びるが、これを難なく回避されてしまった。
「その剣はいろいろと厄介だ」
魔王シンは急降下し、優志と距離をあっという間に詰めると、体当たりをしたあとそのまま優志を掴んで上空へと持ち上げていく。体当たりを食らった衝撃で、優志は聖水剣を手放してしまっていた。
「あれだけの衝撃ならば、落としても無理はない」
「ぐっ……」
突き立てることが叶わず、しかし、切り払うこともできない。
「このまま地面に叩きつけてやろう」
「そいつは――どうかな!!」
優志は拳を握る。
その手には――落としたはずの聖水剣が握られていた。
魔王シンの野望を耳にした優志は聖水剣を構える。
「勇ましいね。だけど君では私に勝つことは叶わない」
「宮原さんだけじゃない!」
六人の勇者たちの闘志もまだ死んではいない。それぞれが手にした武器を構えて魔王シンへと立ち向かう。
「本当に……君たちは理想通りの勇者だね」
こちらの戦意が萎えていないことを理解した魔王シンの表情が変化する。両手を前に突き出し、それぞれの掌からバスケットボールほどの大きさをした闇色の光弾を生み出した。
「君たちが私の野望の邪魔をするというなら、相応の態度を示すまでだ」
そう言い放ち、
「死ね」
明確な殺意が込められた一言が引き金となり、光弾は放たれた。
「みんな、避けろ!」
三上の指示を受け、勇者たちはその場から退避――だが、優志だけはその場に留まった。
「! 宮原さん!?」
「大丈夫だ、三上くん――俺が止める!」
優志は聖水剣をしっかりと握り、光弾へと飛び込んでいく。
そのうちのひとつを真正面に捉えた。
「!!!」
こちらを目がけて飛んでくる光弾へ、優志は剣を向ける。
「! まさか、アレを斬る気なのか!?」
「優志さん!?」
武内と美弦は優志が何をしようとしているのかいち早く読み取った。が、ふたりはすでに回避行動に移っているため、援護のしようがない。他の勇者たちも同様だった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
勇ましい雄叫びをあげて、優志は光弾を聖水剣で切り裂いた。
「うおっ!? すげぇ!」
「マジっ!? あのおっさんやるじゃん!」
上谷と安積は優志の気迫ある一撃に称賛の声を贈る。
だが、優志に慢心はない。
まだ光弾はあとひとつ残っているのだから。
「やるじゃないか。なら、こいつはどうだい?」
残りひとつの光弾は大きく軌道を変えて優志へと襲い掛かる。この光弾は魔王シンの意思ひとつで方向を変えられるのだ。
しかし、優志はそれを読んでいた。
すぐさま体勢を立て直し、自分へと向かってくるもうひとつの光弾を迎え撃つ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
一発目と同じように、優志は光弾を斬り捨てた。
「!?」
これには魔王シンも、そして同じくこの世界へ転移してきた若き勇者たちも同じように驚きを隠せないでいた。
「ば、バカな……君のスキルは回復スキルのはず!?」
「そうだ。俺のスキルは回復スキル――だからあんたに勝てる!」
優志は再び剣を構えた。
その瞳は自信に満ちている。
「そうか……優志さんの回復スキルなら魔人化したあの人を元に戻せる」
美弦の言葉を受けた武内も、優志の言動の意図を理解する。
「なるほど……魔王シンを元の人間――館川新太郎に戻せば、俺たちにも勝機はある!」
「そうと決まれば俺たちのやるべきことはひとつだ!」
橘のかけ声で、勇者六人は優志を援護するための陣形を整える――だが、それを遮るようにひとりの少年が決戦の場に舞い降りた。
「そこまでにしてもらおうかな」
ニックを打ち破って駆けつけた真田であった。
「! 真田くん!」
真田の登場に一番動揺したのは優志だ。
なぜなら、真田がこの場にいるということは、彼を止めるために戦線を離れたニックは敗れたということを意味する――リウィルの父であるニックの。
「宮原さん! 真田は俺たちが食い止める!」
「だから宮原さんは魔王シンに集中してくれ!」
「魔王を元の人間の姿に戻せば、さっき言っていたバカげた計画も食い止められるはずだ!」
勇者たちからの叫びを耳にした優志はハッと我に返る。
今、魔王シンを止められるのは自分しかいない。
この聖水剣で、魔王シンを元の人間の姿に戻す――そうするより他ないのだ。
「魔王シン! 覚悟してもらうぞ!」
「どうしても私の邪魔がしたいようだな」
魔王シンは背中にある大きな黒い翼を広げると、空高く舞い上がった。
「これで一対一……正真正銘、最後の戦いだ」
上空から魔王が呟く。
優志にその声は届かないが、敵意をむき出しとしていることはハッキリと認識できた。
「来いよ、魔王」
優志も腹を括る。
これが最後の勝負――最後の一撃。
「ふっ――食らうがいい」
魔王シンは特大の光弾を生み出し、それを優志目がけて解き放つ。だが、優志は怯む様子もなく、その巨大光弾を一刀両断。衝撃で辺りに突風が生じるが、それをもろともせずに反撃へと移る。
「伸びろ!」
優志の意思に応じて、聖水剣は姿を変化する。
大きく伸びる聖水剣は真っ直ぐ魔王シンへと向かって伸びるが、これを難なく回避されてしまった。
「その剣はいろいろと厄介だ」
魔王シンは急降下し、優志と距離をあっという間に詰めると、体当たりをしたあとそのまま優志を掴んで上空へと持ち上げていく。体当たりを食らった衝撃で、優志は聖水剣を手放してしまっていた。
「あれだけの衝撃ならば、落としても無理はない」
「ぐっ……」
突き立てることが叶わず、しかし、切り払うこともできない。
「このまま地面に叩きつけてやろう」
「そいつは――どうかな!!」
優志は拳を握る。
その手には――落としたはずの聖水剣が握られていた。
1
お気に入りに追加
2,090
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
付与効果スキル職人の離島生活 ~超ブラックな職場環境から解放された俺は小さな島でドラゴン少女&もふもふ妖狐と一緒に工房を開く~
鈴木竜一
ファンタジー
傭兵を派遣する商会で十年以上武器づくりを担当するジャック。貴重な付与効果スキルを持つ彼は逃げ場のない環境で強制労働させられていたが、新しく商会の代表に就任した無能な二代目に難癖をつけられ、解雇を言い渡される。
だが、それは彼にとってまさに天使の囁きに等しかった。
実はジャックには前世の記憶がよみがえっており、自分の持つ付与効果スキルを存分に発揮してアイテムづくりに没頭しつつ、夢の異世界のんびり生活を叶えようとしていたからだ。
思わぬ形で念願叶い、自由の身となったジャックはひょんなことから小さな離島へと移住し、そこで工房を開くことに。ドラゴン少女やもふもふ妖狐や病弱令嬢やらと出会いつつ、夢だった平穏な物づくりライフを満喫していくのであった。
一方、ジャックの去った商会は経営が大きく傾き、その原因がジャックの持つ優秀な付与効果スキルにあると気づくのだった。
俺がいなくなったら商会の経営が傾いた?
……そう(無関心)
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる