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第159話 突入! 魔王城!
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「ミヤハラ・ユージ……下がっていてくれ」
魔人バルザ改めニックが前に出て、真田と対峙する。
「魔人……君は彼らに味方をするのか」
さすがに魔人が相手とあっては、真田とこれまでの余裕な態度ではいられないようで、気を引き締めているようだ。
「ニックさん……」
優志はニックの背中に語りかける。ニックは振り返らず、そのままの状態で優志に話しかけた。
「ずっと……不思議に思っていた」
「え?」
「戦勝パレードで君を見かけた時……どうにも君の存在が気になっていた。それが一体なんなのかどうしても知りたくて、君の仕事場を遠目から眺めていた」
ニックは優志に何かを感じ取っているようだった。
優志は優志で、ニックがバルザ時代に抱いていた違和感の正体に気づく。
「それは……俺じゃなかったんですよね?」
「そうだ。私が気になっていたのは――君の近くにいるリウィルだった。あの子は私の大切な娘だから……魔人になっても、記憶の奥底にその存在は残っていたのだろう」
大きく息を吐いてから、ニックは腰を屈めた。
「あの子には……幼い頃からずっと苦しい思いをさせてきた。だが、君と仕事をしている時のあの子は本当に幸せそうな顔をしていた。できるならば、これからも君の店で働かせてやってもらいたい」
「そんな……俺の方こそ、彼女の働きぶりには助けられています」
「それを聞いて――安心した!」
言い終えると同時に、ニックは仕掛けた。
地を抉るほどの瞬発力をもって、真田との距離を一気に詰める。
「!?」
完全に虚を突かれた真田はなんとか大剣を体を守ったが、想定以上の威力にガードをしていたにも関わらず吹っ飛ばされた。
「ニックさん!」
「行け! ここは俺に任せろ!」
「そ、そんな……でも!」
「俺は……向こうの世界ではすでに死んだ人間だ。だったら――娘に生きる道を示してくれた恩人のためにこの命を燃やす。君は他の兵士たちと共に魔王城へ向かえ! そこに、すべての根源があるはずだ!」
「ニックさん……」
「娘を頼んだぞ――ユージ!」
ニックは吹っ飛ばされた真田へ追撃をするため再び大きく跳躍した。
「ユージくん!」
「ゼイロさん! ニックさんが!」
「彼は我々に道を作ってくれた! 今アデム団長が兵を集結させて魔王城へ進路を取るように命令を飛ばしている! サナダくんの手が及ばないうちに魔王城へ向かおう!」
「は、はい……美弦ちゃん」
「私は大丈夫です。それに……きっとニックさんだって無事に戻ってきますよ」
「……だな。よし、行こう!」
優志は腹を括った。
真田はニックに任せ、優志たち連合軍はとうとう魔王城の敷地内へと侵攻していく。
「よし! 城門を突破しろ!」
指揮官にアデムが戻ったことで、連合軍はしっかりと統率が取れるようになった。さらに副官を務めるゼイロの復帰も大きい。連携を中心に、獰猛な魔獣を次々と撃破していき、とうとう城門を突破して魔王城へと侵入していった。
「ここが魔王城内部か……」
連合軍が先行する中、優志たち転移組は最後尾の一団にいた。
というのも、真田の件を他の勇者たちに知らせなければいけなかったからだ。
その役を、優志は自ら買って出た。
年齢が一回り近く離れているとはいえ、同じ世界の同じ国で育った者たち。その複雑な心境の変化を汲み取るのは、きっとこの世界にいる者たちよりも優れているだろうからというのが理由だった。
「そ、そんな……」
橘は驚きのあまり震えが止まらない。
「くそっ!」
上谷は自分たちを騙していた真田へ憤っていた。
「マジかよ……」
武内は呆然と立ち尽くす。
「真田っちが……」
安積も同じくショックを受けたようだった。
「最初から、スキルだけが目当てだったのか……」
三上は真田の狙いが優れたスキルであったことに戸惑いを隠せない。
若き勇者たちは一様に動揺している。
それは懸念されていた反応であったが、それでも優志は今後のためにも真実を告げなければいけないと思っていた。
なぜなら――もし、ニックが敗れたら、この場に真田が乱入してくることは間違いない。そうなった時、事前に裏切ったことを知らない勇者たちはパニックになるだろう。これまで共に戦ってきた真田を咄嗟に敵と判断して迎撃できるのは無理だと踏んだのだ。
結果として、優志の作戦は成功と見ていい。
最初こそ動揺していたが、ここが魔界であり、もう魔王城に入っているという事実が、勇者たちを迷いから吹っ切れさせた。
実際に真田と対峙していたら、ここまで冷静に周囲を見回すことはできなかっただろう。
勇者たちの気持ちが切り替わったとのほぼ同じタイミングで、先頭集団から悲鳴のような声が聞こえてきた。
「! おいでなすったか!」
優志は聖水剣を構える。
他の勇者たちも戦闘態勢へ。
魔王城一階で連合軍を襲ったのは――まさかの相手だった。
「おいおいおい……いくらなんでもこれはないだろ」
優志は驚愕する。
現れたのは――百体以上はいる魔人の群れだった。
魔人バルザ改めニックが前に出て、真田と対峙する。
「魔人……君は彼らに味方をするのか」
さすがに魔人が相手とあっては、真田とこれまでの余裕な態度ではいられないようで、気を引き締めているようだ。
「ニックさん……」
優志はニックの背中に語りかける。ニックは振り返らず、そのままの状態で優志に話しかけた。
「ずっと……不思議に思っていた」
「え?」
「戦勝パレードで君を見かけた時……どうにも君の存在が気になっていた。それが一体なんなのかどうしても知りたくて、君の仕事場を遠目から眺めていた」
ニックは優志に何かを感じ取っているようだった。
優志は優志で、ニックがバルザ時代に抱いていた違和感の正体に気づく。
「それは……俺じゃなかったんですよね?」
「そうだ。私が気になっていたのは――君の近くにいるリウィルだった。あの子は私の大切な娘だから……魔人になっても、記憶の奥底にその存在は残っていたのだろう」
大きく息を吐いてから、ニックは腰を屈めた。
「あの子には……幼い頃からずっと苦しい思いをさせてきた。だが、君と仕事をしている時のあの子は本当に幸せそうな顔をしていた。できるならば、これからも君の店で働かせてやってもらいたい」
「そんな……俺の方こそ、彼女の働きぶりには助けられています」
「それを聞いて――安心した!」
言い終えると同時に、ニックは仕掛けた。
地を抉るほどの瞬発力をもって、真田との距離を一気に詰める。
「!?」
完全に虚を突かれた真田はなんとか大剣を体を守ったが、想定以上の威力にガードをしていたにも関わらず吹っ飛ばされた。
「ニックさん!」
「行け! ここは俺に任せろ!」
「そ、そんな……でも!」
「俺は……向こうの世界ではすでに死んだ人間だ。だったら――娘に生きる道を示してくれた恩人のためにこの命を燃やす。君は他の兵士たちと共に魔王城へ向かえ! そこに、すべての根源があるはずだ!」
「ニックさん……」
「娘を頼んだぞ――ユージ!」
ニックは吹っ飛ばされた真田へ追撃をするため再び大きく跳躍した。
「ユージくん!」
「ゼイロさん! ニックさんが!」
「彼は我々に道を作ってくれた! 今アデム団長が兵を集結させて魔王城へ進路を取るように命令を飛ばしている! サナダくんの手が及ばないうちに魔王城へ向かおう!」
「は、はい……美弦ちゃん」
「私は大丈夫です。それに……きっとニックさんだって無事に戻ってきますよ」
「……だな。よし、行こう!」
優志は腹を括った。
真田はニックに任せ、優志たち連合軍はとうとう魔王城の敷地内へと侵攻していく。
「よし! 城門を突破しろ!」
指揮官にアデムが戻ったことで、連合軍はしっかりと統率が取れるようになった。さらに副官を務めるゼイロの復帰も大きい。連携を中心に、獰猛な魔獣を次々と撃破していき、とうとう城門を突破して魔王城へと侵入していった。
「ここが魔王城内部か……」
連合軍が先行する中、優志たち転移組は最後尾の一団にいた。
というのも、真田の件を他の勇者たちに知らせなければいけなかったからだ。
その役を、優志は自ら買って出た。
年齢が一回り近く離れているとはいえ、同じ世界の同じ国で育った者たち。その複雑な心境の変化を汲み取るのは、きっとこの世界にいる者たちよりも優れているだろうからというのが理由だった。
「そ、そんな……」
橘は驚きのあまり震えが止まらない。
「くそっ!」
上谷は自分たちを騙していた真田へ憤っていた。
「マジかよ……」
武内は呆然と立ち尽くす。
「真田っちが……」
安積も同じくショックを受けたようだった。
「最初から、スキルだけが目当てだったのか……」
三上は真田の狙いが優れたスキルであったことに戸惑いを隠せない。
若き勇者たちは一様に動揺している。
それは懸念されていた反応であったが、それでも優志は今後のためにも真実を告げなければいけないと思っていた。
なぜなら――もし、ニックが敗れたら、この場に真田が乱入してくることは間違いない。そうなった時、事前に裏切ったことを知らない勇者たちはパニックになるだろう。これまで共に戦ってきた真田を咄嗟に敵と判断して迎撃できるのは無理だと踏んだのだ。
結果として、優志の作戦は成功と見ていい。
最初こそ動揺していたが、ここが魔界であり、もう魔王城に入っているという事実が、勇者たちを迷いから吹っ切れさせた。
実際に真田と対峙していたら、ここまで冷静に周囲を見回すことはできなかっただろう。
勇者たちの気持ちが切り替わったとのほぼ同じタイミングで、先頭集団から悲鳴のような声が聞こえてきた。
「! おいでなすったか!」
優志は聖水剣を構える。
他の勇者たちも戦闘態勢へ。
魔王城一階で連合軍を襲ったのは――まさかの相手だった。
「おいおいおい……いくらなんでもこれはないだろ」
優志は驚愕する。
現れたのは――百体以上はいる魔人の群れだった。
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