工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する

鈴木竜一

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第176話 心配ごと

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 翡翠島へコンタクトを取ってきた別大陸の獣人族。
 最近になって大陸側の人間たちと友好的な関係を築きつつあるこの島の獣人族たちにとっては、同じ種族ということもあって受け入れに前向きな者たちも多いという。

 だが、彼らの話をするザクセンさんの表情は険しい。

「何かあったんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……」
「ではどうして?」
「勘だ」

 気持ちいいくらいハッキリと言い切ったザクセンさん――だけど、さすがに勘だけで相手を判断するというのはなぁ。
 当然、本人もそんな理由で相手を追い返すつもりではないらしいのだが、どうにも嫌な予感がしているという。そういえば、獣人族は人間よりも野生の勘が働くって話を聞いたことがあったな。

 それに、ザクセンさんは人を見る目がある。

 何の根拠もないとはいえ、彼がそこまで言うくらいなら……決めつけはよくないけど、会って話をしてみた方がいいのかもしれない。

「彼らは今どこに?」
「野暮用があるからと、一旦この島を離れているが、明日には戻ってくるそうだ」
「明日……なら、俺もそこへ同席してもいいですか?」
「っ! 本当か! ウィルムがいてくれたら助かる!」

 相当不安だったのか、俺が参加を申し出るとザクセンさんは手を取ってブンブンと力強く上下にゆする。
 脳みそがシェイクされてちょっとクラクラするが、裏を返せばいつも冷静なザクセンさんがそこまではしゃいでしまうほど追い込まれていたってことだからな。

「じゃあ、今日はここへ泊っていってくれよ。島のみんなも喜ぶはずだ」
「では、お言葉に甘えてそうさせていただきます」
「よーし! ならば今日は宴会だ! 支度は俺たちに任せて、ウィルムもたまにはみんなと一緒に羽を伸ばしてこい!」
「あ、ありがとうございます!」

 いつもの調子に戻ったみたいだな、ザクセンさん。
 ひと安心をしつつ、俺はみんなが遊んでいる島の浜辺へ向かうことにした。

 ――っと、その前に水着へ着替えなくちゃな。
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