67 / 91
連載
第158話 スクートの提案
しおりを挟む
サーデル王国の騎士スクート。
彼は信頼できそうな人物だったので、俺たちはここまでやってきた事情を説明した。国家間の争いごとになる可能性もあるため、そう易々とは信じてもらえないだろうから、根気よく協力してもらえるよう説得しなくてはと想定していたのだが、
「なんという……貴重な情報をありがとうございます。危険も多く、さぞ不安だったことでしょう」
どうやらスクートには思うところがあったらしく、俺たちの話を信じてくれた。
「俺たちの話を信じてくれるんですか?」
「えぇ、信じます。……実は、我が騎士団でも似たような噂が立っているのです。外部の方からまったく同じような内容が出てきて少し困惑していますよ」
スクートの話では、ここ最近の治安悪化に一部騎士団の者が関与しているのではないかという噂がまことしやかに流れていたらしい。そんな中、以前からの付き合いがあるバーネット商会が怪しいのではという話が出てきているという。
「バーネット商会代表のご子息であるラストン殿が、騎士団の詰め所で何度か目撃されているのですが……彼が訪れた日に、王都で暴力事件が発生しているという共通点に騎士団長が気づいたんです」
「ラストンが来た日に……」
……関与しているのはほぼ間違いないだろうな。
ラストンは「怪しまれないように日にちを変える」とかって悪知恵を働かせるタイプじゃない。思慮深さはなく思いつきで行動し、失敗したら他人のせいにして責任逃れをする。典型的なダメ二世って性格だ。
商会の経営が傾いた大きな原因のひとつはそれだろう。
今回の件も、恐らく大きな利益を生みだすために誰も手をつけていないダンジョンを標的に定めたことが原因だろう。
国境をまたぐダンジョンは利益分配が難しく、両国の信頼関係が何よりも重要視される。片方の国の領地にお宝が集中していてそちらに冒険者が殺到してしまい、国同士の仲が険悪になって戦争に発展したケースも耳にした。
ただ、サーデル王都の様子を見る限り、メルキスとサーデルは互いに仲良くやっていけるだろうと俺は判断した。もちろん、最終的な判断はガウリー大臣が下すのであくまでもイメージだけって話だが。
それでも敵対関係となるよりは絶対に仲良くしておいた方がお互いのためにいい。
その障害となっているバーネット商会をどうにかしてサーデルから追い払わないといけないな。
「あなた方はこれからどうするつもりですか?」
「商会のある場所へ向かおうと思います」
「っ! 直接対決というわけですか!?」
「できれば避けたいところですが……ヤツらが正直にこれまでの流れを離してくれるとは思いませんので、少し荒れそうです」
「ならば、騎士団も加勢します」
スクートは強い眼差しを向けながらそう提案する。
彼は信頼できそうな人物だったので、俺たちはここまでやってきた事情を説明した。国家間の争いごとになる可能性もあるため、そう易々とは信じてもらえないだろうから、根気よく協力してもらえるよう説得しなくてはと想定していたのだが、
「なんという……貴重な情報をありがとうございます。危険も多く、さぞ不安だったことでしょう」
どうやらスクートには思うところがあったらしく、俺たちの話を信じてくれた。
「俺たちの話を信じてくれるんですか?」
「えぇ、信じます。……実は、我が騎士団でも似たような噂が立っているのです。外部の方からまったく同じような内容が出てきて少し困惑していますよ」
スクートの話では、ここ最近の治安悪化に一部騎士団の者が関与しているのではないかという噂がまことしやかに流れていたらしい。そんな中、以前からの付き合いがあるバーネット商会が怪しいのではという話が出てきているという。
「バーネット商会代表のご子息であるラストン殿が、騎士団の詰め所で何度か目撃されているのですが……彼が訪れた日に、王都で暴力事件が発生しているという共通点に騎士団長が気づいたんです」
「ラストンが来た日に……」
……関与しているのはほぼ間違いないだろうな。
ラストンは「怪しまれないように日にちを変える」とかって悪知恵を働かせるタイプじゃない。思慮深さはなく思いつきで行動し、失敗したら他人のせいにして責任逃れをする。典型的なダメ二世って性格だ。
商会の経営が傾いた大きな原因のひとつはそれだろう。
今回の件も、恐らく大きな利益を生みだすために誰も手をつけていないダンジョンを標的に定めたことが原因だろう。
国境をまたぐダンジョンは利益分配が難しく、両国の信頼関係が何よりも重要視される。片方の国の領地にお宝が集中していてそちらに冒険者が殺到してしまい、国同士の仲が険悪になって戦争に発展したケースも耳にした。
ただ、サーデル王都の様子を見る限り、メルキスとサーデルは互いに仲良くやっていけるだろうと俺は判断した。もちろん、最終的な判断はガウリー大臣が下すのであくまでもイメージだけって話だが。
それでも敵対関係となるよりは絶対に仲良くしておいた方がお互いのためにいい。
その障害となっているバーネット商会をどうにかしてサーデルから追い払わないといけないな。
「あなた方はこれからどうするつもりですか?」
「商会のある場所へ向かおうと思います」
「っ! 直接対決というわけですか!?」
「できれば避けたいところですが……ヤツらが正直にこれまでの流れを離してくれるとは思いませんので、少し荒れそうです」
「ならば、騎士団も加勢します」
スクートは強い眼差しを向けながらそう提案する。
150
お気に入りに追加
5,189
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~
【書籍化決定!】
本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました!
第1巻は10月下旬発売!
よろしくお願いします!
賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。
その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。
一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。
こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。