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第141話 小さな島の秘密

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 ダンジョンで冒険者たちを翻弄していた犯人がついにその姿を現した。

「クエーッ!」

 その正体は体長三メートルほどの鳥……で、いいのかな?
 体毛の色が真っ赤という点を除けば、全体的なフォルムは前世の世界にいたダチョウとよく似ている。あの小さな羽では巨体を浮かせて飛ぶことはできなさそうだし、恐らく脚力自慢だろう。実際、ここへ来るのも森を猛ダッシュしてきたわけだし。

「フレイム・オストリッチ!? どうしてこんなところに!?」

 モンスターの名前を口にしたのはリディアだった。

「し、知っているのか、リディア」
「はい。うちの常連客だった冒険者の方がとあるダンジョンの攻略話を聞かせてくれた際に出てきたんです。どんなトラップより、炎のように真っ赤な体毛をした巨大鳥型モンスターとの戦闘が一番厄介だった、と」

 ということは、デニスさんの工房を訪れた人物の評価というわけか。デニスさんは自分が認めた相手にしか武器や防具を作らないから、そう語った冒険者はかなりの実力者であると言える。
 
 そんな人が強敵と評したのが、目の前にいるフレイム・オストリッチなのだ。
 リディアからの情報により、なかなか手をだしづらい状況なのだが……なぜか相手も攻撃を加えるような素振りを見せてこない。追加の情報として幻覚を使うほか、名前にある通り口から炎を吐いて攻撃してくるとのことだったが、特にそういった動きはしてこなかった。

「なんだ……一体どうしたっていうんだ……?」

 何もしてこないフレイム・オストリッチを前に、俺たちもまったく動けないでいた。
 すると、

「あたしが話してみる」

 ソニルが一歩前に出て、そう告げる。
 一部モンスターとも会話ができる特殊能力を有したソニルは、事前にヤツの声を感知していた。そのため、会話が可能と判断してそれを試みようというのだ。

「大丈夫だよ。あたしたちは敵じゃないから……何かあったか話してみて?」
「クゥ……」

 優しい口調でソニルが語りかけると、フレイム・オストリッチは急に大人しくなって彼女に近づいていく。警戒心も敵意もなく、まるですがりつくような目つきと声色だった。

「ほ、本当に何かあったみたいですね……」
「幻覚を使ってダンジョンから冒険者を排除しようとしていたのと何か関係がありそうだな」

 遠くからフレイム・オストリッチを刺激しないよう静かに見守っていた俺とリディアはそれぞれの考えを述べる。
 やはり、何か深い事情がありそうだな。
 アキノに対しても幻覚を見せ、気絶させたのか?

 真相を知るため、俺たちはソニルからの言葉を待つ――と、

「分かった。相談してくるね」

 どうやらひとつ結論が出たらしく、それを伝えるためにソニルがこちらへと駆け寄る。
 果たして、フレイム・オストリッチは一体なんと言ったのだろうか。

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