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2巻
2-2
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「さて、こちらからの報告はこれで終わりだが、他に気になった点はないか?」
「いいえ。……詳細な情報は、これからの調査次第というわけね」
ジュリスの言う通り、ここまで集めた情報だけでは、どのような考えに至っても憶測の域を出ない。もっと、決定的な情報がなければ、真犯人にはたどり着けないだろう。
「こちらは継続して調査を進めていくつもりよ」
「分かった。それは本職の方々にお任せするとしようかな」
「あなたはこれからどうするの?」
「こっちは村づくりに専念するさ。――って、そうだ。肝心なことを聞きそびれるところだったよ」
「肝心なこと?」
俺はジュリスへ、条約が実際に効力を持ち、貿易が活性化すると見込んでいる時期について尋ねる。
「外国の貿易船がハバートに寄港して商品の取り扱いが解禁される時期はいつ頃になりそうなんだ?」
「うーん……こればっかりはなんともねぇ……」
彼女にしては珍しく歯切れの悪い口調だった。
「ハッキリしないということは……何か問題点でもあるのかい?」
「悪い意味ではないのよ。何せ他国との貿易が自由化されるのって数十年ぶりだから諸々整備が必要だし、相手国との商談もあるから……早くても半年はかかるんじゃないかしら。それでも希望的観測だから、実際は一年近くかかるかも」
「む? ……言われてみれば、それくらい必要かもしれないな」
改正された条約の中身を見る限り、癒着まみれの組織の体質を改善しようとする抜本的な見直しって感じがする。ゆえに、それくらいの長い時間を要するのは必然だろう。
だが、逆に村を整備できる時間が確保できたのはありがたかった。
こちらとしては誘致する宿屋やアイテム屋の選定など、村長に任命されたからには他にもやるべきことはたくさんある。遅くとも半年後には村としてある程度の機能を果たせるようになっていれば問題ない――おかげで、段取りがスムーズにできるよ。
「いろいろとありがとう、ジュリス。おかげで作業が捗るよ」
「こちらこそ。あっ、それから、村の名前が決まったらすぐに教えてね。貿易相手国に王都までの道のりを示した地図を配布する予定なんだけど、そこに中間地点に当たるあなたたちの村を加えておくから」
「了解だ」
「それから……今度またゆっくりお酒でも飲みましょう?」
「ああ、楽しみにしているよ」
こうして、ジュリスとの会談は終了。
話を聞く限り、他国との交渉は想定よりも難航しているという印象を受けた。これまでも何度か貿易を持ちかけられているが、国内の商会とべったりだった前大臣はそれを拒否し続けてきたらしいからな。相手側からすれば「何を今さら」って感じなのかもしれない。
それでも、ガウリー大臣は根気強く続けていくだろう――で、最高の形に締めくくってくれるはず。あの人にはそういう不思議な説得力のようなものがあるんだよな。
ともかく、俺たちは俺たちのやれることをやって備えよう。
およそ半年から一年……期限と呼ぶには少々幅が広い気もするが、いずれにせよ村づくりはここからクライマックスに向けて加速する。
ジュリスへの報告も終わり、次に俺たちが目指すのは港町のハバートかな。
まだまだ猶予があるとはいえ、準備は早いに越したことはない。今後は何かと連携を取っておかなくてはいけない町でもあるから、マーカム町長とはいろいろと段取りを決めておきたいところだ。
本来なら今すぐ話を持っていきたいけれど、ハバートがあるのは王都と反対方向なので今日中にたどり着くのは不可能。というわけで、明日改めて訪ねよう。
――と、いうわけで、ここからは王都散策と洒落込む。
城の中庭で庭園散策をしていた女性陣と合流し、王都の中央通りへと戻ってきた。
ルディはずっと屋内にいたせいか、ずっとうずうずしていたので「しばらく自由行動だ」と大空へ解放。白い羽を大きく広げ、まるで泳ぐように飛んでいった。
ミミューにとっては初めての王都であり、アキノやソニル、そしてリディアにとっても久しぶりの来訪……前はトラブルもあったりしてじっくり見る機会が少なかったから、今回は可能な限りのんびりと満喫したいな。
「凄い! 凄い! 凄い!」
中央通りに入ってから、ミミューはもうこれしか発言していない。その瞳は過去一キラキラと眩く輝き、首はキョロキョロと忙しなく動いている。ここまで楽しんでもらえるとは……連れてきて正解だったな。
「そんなに慌てると転ぶよ」
「無理もありません。私も王都を初めて訪れた時は同じくらい興奮したものですから」
「わ、私も……」
ソニル、アキノ、リディアの三人はテンションが爆上がりのミミューを微笑みながら見守っていた。――だが、声に出さないだけで三人も相当テンションが上がっているのを俺は知っている。ソニルに関しては尻尾があるから余計に分かりやすい。ちぎれそうな勢いで左右に揺れているからな。
一方、俺とレメットはいたっていつも通りだった。何度か仕事で訪れているし、今さら目新しさはない。特にレメットに関してはアヴェルガ家の令嬢として幼い頃から数えきれないくらい来ているだろうし。
というわけで、いつの間にやら大はしゃぎのミミューをソニルたちが愛で、その様子を俺とレメットが愛でる――という構図が出来上がっていたのだった。
「さて、歩いてばかりいるのもなんだから、お店に入ろうか」
「でしたら、あちらの雑貨屋さんなんてどうでしょう?」
レメットが指さす先にあるのは、いかにも女の子が好きそうな雰囲気の漂っている小さなお店。やっぱり、こういう店のチョイスは同世代の子にやってもらった方がいいな。ミミューの嬉しそうな顔がそれを物語っている。
「私! 部屋に飾る小物が欲しかったんです!」
「あっ、私も同じこと考えてた!」
「なら、早くいこ!」
「うん!」
年齢の近いミミューとソニルは手をつないで店へと走っていく。
それから、アキノとリディアが続いて入店。
最後に、俺とレメットが動きだす。
「おぉ……中も雰囲気バッチリだな」
なんというか、ファンシーって言えばいいのかな?
女の子が「可愛い!」って叫びたくなるような物ばかり。正直、俺みたいな男がいると場違いな感じがする。外で待っているよとレメットに告げたら、「それはダメです」と食い気味に拒否された。
「ウィルムさん、これなんてどうでしょう?」
「い、いいんじゃないかな。レメットに合うと思うよ」
「こちらは?」
「うん。アキノっぽくていいんじゃないかな」
いろんなアイテムを俺のもとに持ってきては評価を尋ねる女性陣。ただ、俺にはあまりこうした物の良し悪しが分からないんだよなぁ。実用性のあるアイテムなら自分のクラフトスキルで作れちゃうし。
でも、みんなの表情を眺めていると、これが物づくりに大切なことだなと改めて認識させられる。誰もが笑顔になるようなアイテムをこの手で生みだす……これが醍醐味なんだよな。創作意欲をかき立てられるよ。
みんなの買い物はもうちょっと時間がかかりそうだし、アイディアをまとめるためにもほんのちょっとだけ店の外に出ようかな――と、
「きゃああああああああっ!」
女性の叫び声がした。
ひょっとしなくてもまたトラブルか?
なんだか王都に来るたび、トラブルが起きている気がするのだが……そういう気質なのだろうか。
とはいえ、放っておくわけにもいかない。
みんなを店に残したまま、俺は駆けだす。
たどり着いたのは中央通りから少し路地へ入ったところ。すでに人だかりができており、異様な空気が漂っていた。何が起きたのか、事態の把握に努めようとするも、人が多くてこれ以上先には進めそうになかった。
すると、町を巡回していた警備兵がやってくる。
そのうちのひとりとは顔見知りだった。
「おや? ウィルム殿? どうされましたか?」
「悲鳴が聞こえたから飛んできたんだけど……前に進めそうになくてね」
「でしたら、我らとともに行きましょう」
「いいのか?」
「お安い御用ですよ!」
兵士は他の仲間と一緒に、俺を現場へと連れていってくれた。
そこではうずくまって涙を流す若い女性の姿が。
「どうしましたか?」
早速、兵士のひとりが女性へと声をかける。剣を携えた兵士を見た女性は安堵したのか、呼吸を落ち着かせてから詳しい状況を説明し始めた。
「突然、裏から男に襲われて……」
「お怪我は?」
「いえ……幸い、悲鳴を聞いてすぐに人が集まってきたので、何もされることなく相手は逃げていきました」
「相手の外見はどんな感じでしたか?」
「金髪の若い男でした」
女性は涙ながらに答えていく。
話を聞く限り、暴漢だったのか?
しかし、巡回の兵士も多いこの王都で、随分と大胆なマネをするな。おまけに、今は条約改正の件でいつも以上に警備は厳しくなっているというのに。
「何か……別の目的があった?」
「恐らく、風評被害を狙っているのではないでしょうか」
「風評被害?」
「条約改正に伴って、ガウリー大臣が中心となって外交が再開されたのですが……一部の国では未だに過去のメルキスの印象が先行し、難航しているとの話です」
「なるほど……」
その件についてはジュリスから聞いている。
交渉のために他国から来ている担当者もいるはず……その人たちに「メルキスはやはり危険な国」という印象をつけるための犯行ってわけか。実際、一部交渉は難航しているんだから効果は少なからず出ているようだ。
もしかしたら、俺たちの村にやってきて、俺の屋敷を壊した連中もそれが狙いだった?
特にうちは名うての商人や職人たちが集まっているからな。あの騒動がきっかけで村を離れるかもしれないと考えたのかも――まあ、そんなヤワな人は誰もいなかったけど。
しかしそうなると、騒ぎを起こしたヤツのバックに潜んでいるのは甘い汁を吸ってきた国内の商会である可能性は増々高くなるな。
……いや、国内だけじゃない。
メルキスは、俺が以前暮らしていたドノル王国のバーネット商会もお得意様にしていた。
当時俺はアヴェルガ家の担当だったが、他の商人たちは別枠で動いていた……そいつらが前大臣たちとつるんでいたのかもな。
まあ、確証も何もない話だからなんとも言えないけど。
犯人の目的について思案していると、
「あっ! ここにいた!」
声の主はレメットだった。
どうやら、店を出ると俺がいなくて辺りを捜し回っていてこの騒ぎに出くわしたらしい。
「まったくもう……トラブルがあるとすぐに動きだすのは悪い癖ですよ」
「申し訳ない。でも、もう終わったから」
この調子だと、アキノたちも心配しているだろうな。
「何か事件ですか?」
「ちょっと、な。ただ、大きな事件じゃないみたいだし、あとは警備兵が呼んだ騎士団がうまく対応してくれるだろうよ」
「そ、そうですか……」
レメットはちょっと気にかかっている様子だが、俺から「安心してくれ」という言葉を受けて納得したようだ。
ともかく、みんなに謝らなくちゃいけないということで同行してくれた警備兵たちと別れの挨拶を交わす。
さっきレメットにも言ったが、ここから先は王国騎士団に任せよう。
俺たちは俺たちで、これからハバートへ行く用事がある。
やれるべき場所でやれるべきことをする。
さっきそう整理したばかりだからな。
今回の件は少しだけ気にかけ、他のメンバーと合流するため現場をあとにした。
王都を出た俺たちは、真っすぐに屋敷へと帰還。
ミミューたちは王都散策をしっかり楽しめたようで、早速購入した小物を部屋のどこに飾ろうか話し合っていた。
一方、俺は明日訪れる予定のハバートについて考えを巡らす。
と言っても、あそこの町長であるマーカムさんとは前職からの付き合いがあるし、こっちへ来てからも一度訪問済みだ。レメットたちが頑張ってくれたおかげで道もだいぶ整備できてきたし、今後の発展に大きな期待が持てるな。
マーカム町長との会談は問題なく進むとして、あと考えておくべきは村の規模拡張か。
今後は来訪する人の数も劇的に増えてくると予想される。
ジュリスの話では、すでにこの村の存在は多くの人から注目を集めており、今後は訪ねる人だけではなく移住希望者も増えるだろうと語っていた。
そうなると、もはや村という規模では収まらないのかもしれない。それこそ、都市レベルに成長する可能性も秘めていた。仮に、もしそこまでの規模になったら、近くにあるベルガン村への影響も考慮しなければならないな。
「とりあえず、ハバートとのルートは確保しつつ、可能な限り村の規模を大きくしていくとするか」
俺は執務机の上に地図を広げた。
新しく作られた、この近辺の拡大図だ。
しかし、残念ながらところどころに漏れがある。長らく人が入っていなかったから無理もないが……これも、近いうちに完成を目指して専門家を呼ばないといけないな。
「あとは移住者の名簿も用意しておかないと」
今のところはまだそれほど人が多くないため問題は起きていないが、これからのことを考えると一度整理しておく必要はあるだろう。
今は村の拡張で手いっぱいということもあって、移住希望者はアヴェルガ家へ申請するように話を進めてある。これは当主であり、レメットの父親であるフリード・アヴェルガ様の配慮だった。
例の魔女の村での一件を報告しに行った際に「村への移住を希望する者については、私が責任を持って対応させてもらう」と言ってくれた。
フリード様の人を見る目は確かだからな。信用できる。なので、俺も村づくりに全力を注げるというものだ。
いろいろと考えていたら、部屋のドアをノックする音が。
「あ、あの、少しいいですか?」
声の主はミミューだった。
「うん? どうかしたかい?」
ドアを開けると、そこにはミミューがひとりで立っていた。てっきり、他のみんなと一緒だと思ったんだが。
「あのですね……これを渡したくて」
そう言って、ミミューが差しだしたのは――小さな犬の置物だった。
「これを俺に?」
「は、はい! 何を贈ろうか迷っていて遅くなっちゃいましたけど……この前、村のみんなやママを助けてくれたお礼です!」
なんと律儀な。
でも、俺としてはこれからミミューに魔法を教えてもらうことでそれを返してもらう気でいたからなぁ……そう返そうとしたけど、必死になっている彼女を見ると、受け取らないわけにはいかないよね。
「ありがとう、ミミュー」
「っ! そ、そんな……」
真っ赤になって俯いてしまうミミュー。本人としてもかなり勇気を振り絞ったんだろうなというのが伝わってくる。
早速、ミミューからもらった犬の置物は俺の執務机の上に置いてみた。
うん。
なんかこう……守り神になってくれそうだな。
その後、アニエスさんが夕食の準備ができたことを知らせてくれるまで、俺は今後のことをさまざまな角度から思案。
クラフトスキルを通して試してみたいこともいくつか出てきたし、まずはハバートでの会談を成功させてから動きだすとしよう。
◆ ◆ ◆
ドノル王国。
バーネット商会本部。
「くそっ!」
商会幹部から送られてきた情報を耳にした代表のジェフ・バーネットは、怒りに任せて執務机を蹴る。
「あれだけの予算を注ぎ込んで失敗とは……役立たずどもめ!」
ジェフは仕掛けていた計画がうまくいかなかったことを知り、憤慨していた。
その計画とは――ガウリー大臣の暗殺計画である。
貿易に関する条約改正を推し進めている大臣の存在は、バーネット商会にとって無視できない。
彼らだけではなく、これまでメルキス王国の外交大臣と癒着を続け、甘い汁を吸っていた者たちは、なんとしてもこれを阻止したいと協力体制を取るようになっていた。
そうして万全を期した状態で始まったはずの暗殺計画であったが、ウィルムたちの手によって阻止され、逆に暗躍していた商会関係者が次々と騎士団によって拘束され、牢獄送りとなっている。
国外の商会であるジェフたちのところへはすぐに手を伸ばしてこないだろうが、もはや時間の問題であった。
そこで、同業者ではダメだと判断したバーネット商会は、ドノル王国の王家を言いくるめ、メルキス王国に争いを仕掛けさせようとしていた。だが、今回の暗殺計画の失敗によりそれさえも頓挫する。
せめてもの抵抗と、金に困っている荒くれ者たちを雇い、王都で事件を起こさせてメルキスのイメージダウンを図るという姑息な手に打って出るが――騎士団が警備をより厳重にしたこともあってそれさえ成果は上がっていなかった。
「ど、どうするんだよ、親父……ただでさえ最近は顧客が減っているんだ。これ以上はさすがにヤバいぜ?」
ジェフの息子であり、将来的にはこのバーネット商会を背負うことになるラストンは青ざめた顔で父ジェフへと迫る。
「うるさい! おまえもピーピー騒ぐばかりでなく、少しは知恵を絞らんか!」
「け、けどよぉ……」
これまで、父の威光を盾にして仕事――と、呼べるかどうかも分からないが、とにかく楽をしてきたラストンにそのような知恵が働くはずもない。
本来であれば、高齢であるジェフより商会の後継ぎであるラストンが中心となって、この危機を乗り越えようと立ち上がるべきなのだが。
――困った時は誰かが代わりになって解決してくれる。
それが、ラストンの窮地を脱する方法だった。
しかし、今はもう助けてくれる人はいない。
いつも厄介事を押しつけていたウィルムは自分たちの手で追いだしてしまったし、他の商人たちも将来性を危惧して続々と辞めていった。
所属している商人の数は、全盛期の半分以下にまで落ち込んでいたのである。
これは単にウィルムが辞めたからではなく、原因としてはラストンの傍若無人な振る舞いにあった。それが引き金となって顧客が離れているという現実を目の当たりにし、次の道を探して辞めていったのだ。
間違いなく、商会の低迷を招いているのは息子のラストン。
当初から流れに身を任せ、面倒なことは父親に丸投げし、「そのうちどうにかなるだろ」程度の意識しかなかったが、ここへ来てようやく事態の重さに気づいたらしい。
さらにバーネット親子を怒らせたのが、大臣暗殺計画を阻止した者を調査したところ、その候補の中にウィルムの名前があったことだった。
「いいえ。……詳細な情報は、これからの調査次第というわけね」
ジュリスの言う通り、ここまで集めた情報だけでは、どのような考えに至っても憶測の域を出ない。もっと、決定的な情報がなければ、真犯人にはたどり着けないだろう。
「こちらは継続して調査を進めていくつもりよ」
「分かった。それは本職の方々にお任せするとしようかな」
「あなたはこれからどうするの?」
「こっちは村づくりに専念するさ。――って、そうだ。肝心なことを聞きそびれるところだったよ」
「肝心なこと?」
俺はジュリスへ、条約が実際に効力を持ち、貿易が活性化すると見込んでいる時期について尋ねる。
「外国の貿易船がハバートに寄港して商品の取り扱いが解禁される時期はいつ頃になりそうなんだ?」
「うーん……こればっかりはなんともねぇ……」
彼女にしては珍しく歯切れの悪い口調だった。
「ハッキリしないということは……何か問題点でもあるのかい?」
「悪い意味ではないのよ。何せ他国との貿易が自由化されるのって数十年ぶりだから諸々整備が必要だし、相手国との商談もあるから……早くても半年はかかるんじゃないかしら。それでも希望的観測だから、実際は一年近くかかるかも」
「む? ……言われてみれば、それくらい必要かもしれないな」
改正された条約の中身を見る限り、癒着まみれの組織の体質を改善しようとする抜本的な見直しって感じがする。ゆえに、それくらいの長い時間を要するのは必然だろう。
だが、逆に村を整備できる時間が確保できたのはありがたかった。
こちらとしては誘致する宿屋やアイテム屋の選定など、村長に任命されたからには他にもやるべきことはたくさんある。遅くとも半年後には村としてある程度の機能を果たせるようになっていれば問題ない――おかげで、段取りがスムーズにできるよ。
「いろいろとありがとう、ジュリス。おかげで作業が捗るよ」
「こちらこそ。あっ、それから、村の名前が決まったらすぐに教えてね。貿易相手国に王都までの道のりを示した地図を配布する予定なんだけど、そこに中間地点に当たるあなたたちの村を加えておくから」
「了解だ」
「それから……今度またゆっくりお酒でも飲みましょう?」
「ああ、楽しみにしているよ」
こうして、ジュリスとの会談は終了。
話を聞く限り、他国との交渉は想定よりも難航しているという印象を受けた。これまでも何度か貿易を持ちかけられているが、国内の商会とべったりだった前大臣はそれを拒否し続けてきたらしいからな。相手側からすれば「何を今さら」って感じなのかもしれない。
それでも、ガウリー大臣は根気強く続けていくだろう――で、最高の形に締めくくってくれるはず。あの人にはそういう不思議な説得力のようなものがあるんだよな。
ともかく、俺たちは俺たちのやれることをやって備えよう。
およそ半年から一年……期限と呼ぶには少々幅が広い気もするが、いずれにせよ村づくりはここからクライマックスに向けて加速する。
ジュリスへの報告も終わり、次に俺たちが目指すのは港町のハバートかな。
まだまだ猶予があるとはいえ、準備は早いに越したことはない。今後は何かと連携を取っておかなくてはいけない町でもあるから、マーカム町長とはいろいろと段取りを決めておきたいところだ。
本来なら今すぐ話を持っていきたいけれど、ハバートがあるのは王都と反対方向なので今日中にたどり着くのは不可能。というわけで、明日改めて訪ねよう。
――と、いうわけで、ここからは王都散策と洒落込む。
城の中庭で庭園散策をしていた女性陣と合流し、王都の中央通りへと戻ってきた。
ルディはずっと屋内にいたせいか、ずっとうずうずしていたので「しばらく自由行動だ」と大空へ解放。白い羽を大きく広げ、まるで泳ぐように飛んでいった。
ミミューにとっては初めての王都であり、アキノやソニル、そしてリディアにとっても久しぶりの来訪……前はトラブルもあったりしてじっくり見る機会が少なかったから、今回は可能な限りのんびりと満喫したいな。
「凄い! 凄い! 凄い!」
中央通りに入ってから、ミミューはもうこれしか発言していない。その瞳は過去一キラキラと眩く輝き、首はキョロキョロと忙しなく動いている。ここまで楽しんでもらえるとは……連れてきて正解だったな。
「そんなに慌てると転ぶよ」
「無理もありません。私も王都を初めて訪れた時は同じくらい興奮したものですから」
「わ、私も……」
ソニル、アキノ、リディアの三人はテンションが爆上がりのミミューを微笑みながら見守っていた。――だが、声に出さないだけで三人も相当テンションが上がっているのを俺は知っている。ソニルに関しては尻尾があるから余計に分かりやすい。ちぎれそうな勢いで左右に揺れているからな。
一方、俺とレメットはいたっていつも通りだった。何度か仕事で訪れているし、今さら目新しさはない。特にレメットに関してはアヴェルガ家の令嬢として幼い頃から数えきれないくらい来ているだろうし。
というわけで、いつの間にやら大はしゃぎのミミューをソニルたちが愛で、その様子を俺とレメットが愛でる――という構図が出来上がっていたのだった。
「さて、歩いてばかりいるのもなんだから、お店に入ろうか」
「でしたら、あちらの雑貨屋さんなんてどうでしょう?」
レメットが指さす先にあるのは、いかにも女の子が好きそうな雰囲気の漂っている小さなお店。やっぱり、こういう店のチョイスは同世代の子にやってもらった方がいいな。ミミューの嬉しそうな顔がそれを物語っている。
「私! 部屋に飾る小物が欲しかったんです!」
「あっ、私も同じこと考えてた!」
「なら、早くいこ!」
「うん!」
年齢の近いミミューとソニルは手をつないで店へと走っていく。
それから、アキノとリディアが続いて入店。
最後に、俺とレメットが動きだす。
「おぉ……中も雰囲気バッチリだな」
なんというか、ファンシーって言えばいいのかな?
女の子が「可愛い!」って叫びたくなるような物ばかり。正直、俺みたいな男がいると場違いな感じがする。外で待っているよとレメットに告げたら、「それはダメです」と食い気味に拒否された。
「ウィルムさん、これなんてどうでしょう?」
「い、いいんじゃないかな。レメットに合うと思うよ」
「こちらは?」
「うん。アキノっぽくていいんじゃないかな」
いろんなアイテムを俺のもとに持ってきては評価を尋ねる女性陣。ただ、俺にはあまりこうした物の良し悪しが分からないんだよなぁ。実用性のあるアイテムなら自分のクラフトスキルで作れちゃうし。
でも、みんなの表情を眺めていると、これが物づくりに大切なことだなと改めて認識させられる。誰もが笑顔になるようなアイテムをこの手で生みだす……これが醍醐味なんだよな。創作意欲をかき立てられるよ。
みんなの買い物はもうちょっと時間がかかりそうだし、アイディアをまとめるためにもほんのちょっとだけ店の外に出ようかな――と、
「きゃああああああああっ!」
女性の叫び声がした。
ひょっとしなくてもまたトラブルか?
なんだか王都に来るたび、トラブルが起きている気がするのだが……そういう気質なのだろうか。
とはいえ、放っておくわけにもいかない。
みんなを店に残したまま、俺は駆けだす。
たどり着いたのは中央通りから少し路地へ入ったところ。すでに人だかりができており、異様な空気が漂っていた。何が起きたのか、事態の把握に努めようとするも、人が多くてこれ以上先には進めそうになかった。
すると、町を巡回していた警備兵がやってくる。
そのうちのひとりとは顔見知りだった。
「おや? ウィルム殿? どうされましたか?」
「悲鳴が聞こえたから飛んできたんだけど……前に進めそうになくてね」
「でしたら、我らとともに行きましょう」
「いいのか?」
「お安い御用ですよ!」
兵士は他の仲間と一緒に、俺を現場へと連れていってくれた。
そこではうずくまって涙を流す若い女性の姿が。
「どうしましたか?」
早速、兵士のひとりが女性へと声をかける。剣を携えた兵士を見た女性は安堵したのか、呼吸を落ち着かせてから詳しい状況を説明し始めた。
「突然、裏から男に襲われて……」
「お怪我は?」
「いえ……幸い、悲鳴を聞いてすぐに人が集まってきたので、何もされることなく相手は逃げていきました」
「相手の外見はどんな感じでしたか?」
「金髪の若い男でした」
女性は涙ながらに答えていく。
話を聞く限り、暴漢だったのか?
しかし、巡回の兵士も多いこの王都で、随分と大胆なマネをするな。おまけに、今は条約改正の件でいつも以上に警備は厳しくなっているというのに。
「何か……別の目的があった?」
「恐らく、風評被害を狙っているのではないでしょうか」
「風評被害?」
「条約改正に伴って、ガウリー大臣が中心となって外交が再開されたのですが……一部の国では未だに過去のメルキスの印象が先行し、難航しているとの話です」
「なるほど……」
その件についてはジュリスから聞いている。
交渉のために他国から来ている担当者もいるはず……その人たちに「メルキスはやはり危険な国」という印象をつけるための犯行ってわけか。実際、一部交渉は難航しているんだから効果は少なからず出ているようだ。
もしかしたら、俺たちの村にやってきて、俺の屋敷を壊した連中もそれが狙いだった?
特にうちは名うての商人や職人たちが集まっているからな。あの騒動がきっかけで村を離れるかもしれないと考えたのかも――まあ、そんなヤワな人は誰もいなかったけど。
しかしそうなると、騒ぎを起こしたヤツのバックに潜んでいるのは甘い汁を吸ってきた国内の商会である可能性は増々高くなるな。
……いや、国内だけじゃない。
メルキスは、俺が以前暮らしていたドノル王国のバーネット商会もお得意様にしていた。
当時俺はアヴェルガ家の担当だったが、他の商人たちは別枠で動いていた……そいつらが前大臣たちとつるんでいたのかもな。
まあ、確証も何もない話だからなんとも言えないけど。
犯人の目的について思案していると、
「あっ! ここにいた!」
声の主はレメットだった。
どうやら、店を出ると俺がいなくて辺りを捜し回っていてこの騒ぎに出くわしたらしい。
「まったくもう……トラブルがあるとすぐに動きだすのは悪い癖ですよ」
「申し訳ない。でも、もう終わったから」
この調子だと、アキノたちも心配しているだろうな。
「何か事件ですか?」
「ちょっと、な。ただ、大きな事件じゃないみたいだし、あとは警備兵が呼んだ騎士団がうまく対応してくれるだろうよ」
「そ、そうですか……」
レメットはちょっと気にかかっている様子だが、俺から「安心してくれ」という言葉を受けて納得したようだ。
ともかく、みんなに謝らなくちゃいけないということで同行してくれた警備兵たちと別れの挨拶を交わす。
さっきレメットにも言ったが、ここから先は王国騎士団に任せよう。
俺たちは俺たちで、これからハバートへ行く用事がある。
やれるべき場所でやれるべきことをする。
さっきそう整理したばかりだからな。
今回の件は少しだけ気にかけ、他のメンバーと合流するため現場をあとにした。
王都を出た俺たちは、真っすぐに屋敷へと帰還。
ミミューたちは王都散策をしっかり楽しめたようで、早速購入した小物を部屋のどこに飾ろうか話し合っていた。
一方、俺は明日訪れる予定のハバートについて考えを巡らす。
と言っても、あそこの町長であるマーカムさんとは前職からの付き合いがあるし、こっちへ来てからも一度訪問済みだ。レメットたちが頑張ってくれたおかげで道もだいぶ整備できてきたし、今後の発展に大きな期待が持てるな。
マーカム町長との会談は問題なく進むとして、あと考えておくべきは村の規模拡張か。
今後は来訪する人の数も劇的に増えてくると予想される。
ジュリスの話では、すでにこの村の存在は多くの人から注目を集めており、今後は訪ねる人だけではなく移住希望者も増えるだろうと語っていた。
そうなると、もはや村という規模では収まらないのかもしれない。それこそ、都市レベルに成長する可能性も秘めていた。仮に、もしそこまでの規模になったら、近くにあるベルガン村への影響も考慮しなければならないな。
「とりあえず、ハバートとのルートは確保しつつ、可能な限り村の規模を大きくしていくとするか」
俺は執務机の上に地図を広げた。
新しく作られた、この近辺の拡大図だ。
しかし、残念ながらところどころに漏れがある。長らく人が入っていなかったから無理もないが……これも、近いうちに完成を目指して専門家を呼ばないといけないな。
「あとは移住者の名簿も用意しておかないと」
今のところはまだそれほど人が多くないため問題は起きていないが、これからのことを考えると一度整理しておく必要はあるだろう。
今は村の拡張で手いっぱいということもあって、移住希望者はアヴェルガ家へ申請するように話を進めてある。これは当主であり、レメットの父親であるフリード・アヴェルガ様の配慮だった。
例の魔女の村での一件を報告しに行った際に「村への移住を希望する者については、私が責任を持って対応させてもらう」と言ってくれた。
フリード様の人を見る目は確かだからな。信用できる。なので、俺も村づくりに全力を注げるというものだ。
いろいろと考えていたら、部屋のドアをノックする音が。
「あ、あの、少しいいですか?」
声の主はミミューだった。
「うん? どうかしたかい?」
ドアを開けると、そこにはミミューがひとりで立っていた。てっきり、他のみんなと一緒だと思ったんだが。
「あのですね……これを渡したくて」
そう言って、ミミューが差しだしたのは――小さな犬の置物だった。
「これを俺に?」
「は、はい! 何を贈ろうか迷っていて遅くなっちゃいましたけど……この前、村のみんなやママを助けてくれたお礼です!」
なんと律儀な。
でも、俺としてはこれからミミューに魔法を教えてもらうことでそれを返してもらう気でいたからなぁ……そう返そうとしたけど、必死になっている彼女を見ると、受け取らないわけにはいかないよね。
「ありがとう、ミミュー」
「っ! そ、そんな……」
真っ赤になって俯いてしまうミミュー。本人としてもかなり勇気を振り絞ったんだろうなというのが伝わってくる。
早速、ミミューからもらった犬の置物は俺の執務机の上に置いてみた。
うん。
なんかこう……守り神になってくれそうだな。
その後、アニエスさんが夕食の準備ができたことを知らせてくれるまで、俺は今後のことをさまざまな角度から思案。
クラフトスキルを通して試してみたいこともいくつか出てきたし、まずはハバートでの会談を成功させてから動きだすとしよう。
◆ ◆ ◆
ドノル王国。
バーネット商会本部。
「くそっ!」
商会幹部から送られてきた情報を耳にした代表のジェフ・バーネットは、怒りに任せて執務机を蹴る。
「あれだけの予算を注ぎ込んで失敗とは……役立たずどもめ!」
ジェフは仕掛けていた計画がうまくいかなかったことを知り、憤慨していた。
その計画とは――ガウリー大臣の暗殺計画である。
貿易に関する条約改正を推し進めている大臣の存在は、バーネット商会にとって無視できない。
彼らだけではなく、これまでメルキス王国の外交大臣と癒着を続け、甘い汁を吸っていた者たちは、なんとしてもこれを阻止したいと協力体制を取るようになっていた。
そうして万全を期した状態で始まったはずの暗殺計画であったが、ウィルムたちの手によって阻止され、逆に暗躍していた商会関係者が次々と騎士団によって拘束され、牢獄送りとなっている。
国外の商会であるジェフたちのところへはすぐに手を伸ばしてこないだろうが、もはや時間の問題であった。
そこで、同業者ではダメだと判断したバーネット商会は、ドノル王国の王家を言いくるめ、メルキス王国に争いを仕掛けさせようとしていた。だが、今回の暗殺計画の失敗によりそれさえも頓挫する。
せめてもの抵抗と、金に困っている荒くれ者たちを雇い、王都で事件を起こさせてメルキスのイメージダウンを図るという姑息な手に打って出るが――騎士団が警備をより厳重にしたこともあってそれさえ成果は上がっていなかった。
「ど、どうするんだよ、親父……ただでさえ最近は顧客が減っているんだ。これ以上はさすがにヤバいぜ?」
ジェフの息子であり、将来的にはこのバーネット商会を背負うことになるラストンは青ざめた顔で父ジェフへと迫る。
「うるさい! おまえもピーピー騒ぐばかりでなく、少しは知恵を絞らんか!」
「け、けどよぉ……」
これまで、父の威光を盾にして仕事――と、呼べるかどうかも分からないが、とにかく楽をしてきたラストンにそのような知恵が働くはずもない。
本来であれば、高齢であるジェフより商会の後継ぎであるラストンが中心となって、この危機を乗り越えようと立ち上がるべきなのだが。
――困った時は誰かが代わりになって解決してくれる。
それが、ラストンの窮地を脱する方法だった。
しかし、今はもう助けてくれる人はいない。
いつも厄介事を押しつけていたウィルムは自分たちの手で追いだしてしまったし、他の商人たちも将来性を危惧して続々と辞めていった。
所属している商人の数は、全盛期の半分以下にまで落ち込んでいたのである。
これは単にウィルムが辞めたからではなく、原因としてはラストンの傍若無人な振る舞いにあった。それが引き金となって顧客が離れているという現実を目の当たりにし、次の道を探して辞めていったのだ。
間違いなく、商会の低迷を招いているのは息子のラストン。
当初から流れに身を任せ、面倒なことは父親に丸投げし、「そのうちどうにかなるだろ」程度の意識しかなかったが、ここへ来てようやく事態の重さに気づいたらしい。
さらにバーネット親子を怒らせたのが、大臣暗殺計画を阻止した者を調査したところ、その候補の中にウィルムの名前があったことだった。
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