上 下
48 / 74
連載

第139話 謎の空間

しおりを挟む
 ついに本隊との合流を果たした俺たち――であったが、肝心のアキノの姿はどこにも見えなかった。

「ダニーさん、アキノはどこに?」
「彼女はモンスターの声を耳にした途端、急に走り出して……」
「なっ!? どっちの方向に行ったんですか!?」
「あ、あっちだ」

 ダニーさんが指さす場所にはさらに奥へと続く細い道が。
 どうやら、アキノはあそこへ入っていったらしい。

「しょうがない子だね。ダンジョン内では常に冷静でいろと口酸っぱく教えていたのに、単独で動くなんて」
「モンスターを追っていったのなら、俺たちもすぐに合流しないと」
「分かっているよ」

 今度こそ合流できたかと思いきや、アキノは単独でモンスター討伐に動きだしたという。
 恐らく、このダンジョンの攻略難易度を大幅に上昇させている原因となっているモンスターとさっきの咆哮を放ったモンスターは同一の存在だろう。となれば、単独での討伐はかなり難しいか。

 大急ぎでダンジョン内を駆けていく俺たち。 
 やがて、進行方向に光が見えてきた。

「あそこだ!」

 そこが目的地であるかどうかはハッキリしないが、ひとつ区切りとなる場所であるというのは間違いなかった。
 傾斜のある坂道をひたすら上り続け、光の先にあったのは――

「こ、ここは……外?」

 俺たちはダンジョンの外へと出ていた。
 サーデル王国との国境近くであるのは間違いないと思うのだが……周辺をチェックしても心当たりのある風景ではない。
 周辺は高い岩壁に囲まれており、移動できる範囲は狭い。真上から降り注ぐ陽光に照らされながら、他に道はないか探してみる。
 岩壁の隙間にできた空間であるというのは理解したが、それ以外に特徴らしい特徴は見当たらない。とりあえず、一本道が続いているようなので、そこをたどってみることにした。

 モンスターの気配は――する。
 どこかに潜んでいるようだが姿は見えない。
 いつ襲ってくるかも分からないので警戒しながら進んでいると、道をふさぐように倒木が重なり合っている場所へと出た。
 その倒木に寄りかかっている人影を発見。
 静かに近づいてみると、

「っ! ア、アキノ!」

 倒れていたのはアキノだった。
 エリさんとともに急いで駆け寄り、必死に声をかけてみる。

「う、うぅん……」

 気を失っているだけで、大した怪我ではないようだ。
 すぐに【月光】の仲間たちがアキノを保護。
 俺たちは幻覚を操るモンスターを見つけるため、もうしばらく周辺の調査を続行することにした。

 一体、アキノの身に何が起きたというのか。
 それはここを調べれば分かるだろう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ペントハウスでイケメンスパダリ紳士に甘やかされています

BL / 完結 24h.ポイント:781pt お気に入り:977

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,980pt お気に入り:853

神様に加護2人分貰いました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:553pt お気に入り:16,871

たとえクソガキと罵られても

BL / 連載中 24h.ポイント:901pt お気に入り:296

一生俺に甘えとけ

BL / 連載中 24h.ポイント:710pt お気に入り:102

ユーカリの花をいつか君と

BL / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:28

メンヘラ君の飼い犬

BL / 連載中 24h.ポイント:205pt お気に入り:25

生徒との1年間

BL / 連載中 24h.ポイント:525pt お気に入り:10

カペルマイスター ~宮廷楽長アントーニオ・サリエーリの苦悩~

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:32

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。