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第137話 ランプの光を追って
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ソニルたちとは合流できたものの、未だにアキノやリディアたちの行方は分からないままとなっていた。
謎のトラップによって複雑な迷宮と化しているが……ダンジョン自体の難易度はそう高くないというのがエリさんの下した評価であった。
ダンジョンに関してはプロ中のプロであるエリさんが言うのだから、素人の俺がとやかく言うつもりはない。むしろ俺は彼女とまったく同意見だった。
かなりの規模を持つこのダンジョンは、それと裏腹に恐ろしく強いモンスターの存在を確認できない。それでいて、魔鉱石などのアイテムは豊富だ。
このダンジョンを対象にギルドを作れば、かなりの経済効果がありそうという見解であったが――となると、同時にサーデルとの間で争いを生みだしかねない非常に危険な存在という見方もできた。
サーデル側からのアプローチは未だにない。
こちらとしても、ガウリー大臣はすぐに動きだそうとはしないようだ。
どちらも慎重に物事を進めているという印象を受けるが、それはある意味で一番理想的な展開と言える。
ダンジョン運営が可能というプラス部分にだけ惹かれて一方的な制圧に乗りだしたとするなら、サーデルとメルキスの争いは避けられないだろう。それが即座に勃発する可能性もあっただけに、両国の国王や大臣は冷静な判断力を持っている。
一方、そんな争いの種ともなり得るこのダンジョンに足を踏み入れている俺たちも、そういった意味ではかなり危険な最前線に立っていると言えた。
今のところ、特に目立った対立などはないが、ひとつの小さな綻びがやがて代理戦争なんて事態を招くかもしれない。
割と軽い気持ちで乗り込んでしまったが、ここからは気合を入れ直して挑まなければな。
そんなことを考えつつランプの光を追っていると、前方から獣のような雄叫びが聞こえてきた。
ここまで特に強いモンスターと遭遇してこなかったので「ここには強いモンスターがいない」という感覚に陥っていたのだが……どうやら、奥に大物が潜んでいたようだ。
「い、今のって……」
「下がっているんだ、レメット」
怯えるレメットを背後に回すと、神杖リスティックを握る手に力を込める。エリさんやソニルといった戦闘担当者たちも同じように臨戦態勢をとった。さっきの叫び声の迫力からして相当ヤバそうな感じではあるが、誰ひとりとして怯えた様子を見せない。
相変わらず頼もしい限りだよ。
どんな相手でも負ける気がしない中、さらに奥へと進むと、
「おっ? 泉か?」
湖と呼ぶには規模は小さく、水たまりと呼ぶには大きい。
そうなれば、この場所は泉と呼ぶのが相応しいだろう。
その泉の近くにも、複数の冒険者が。
「リディア!」
「あっ、ウィルムさん!」
真っ先に視界へ飛び込んできたのはリディアだった。
だが、ここでもアキノの姿はない。
彼女は一体どこへ行ってしまったのか……ソニルの時と同じように、彼女からも情報をもらわないと。
謎のトラップによって複雑な迷宮と化しているが……ダンジョン自体の難易度はそう高くないというのがエリさんの下した評価であった。
ダンジョンに関してはプロ中のプロであるエリさんが言うのだから、素人の俺がとやかく言うつもりはない。むしろ俺は彼女とまったく同意見だった。
かなりの規模を持つこのダンジョンは、それと裏腹に恐ろしく強いモンスターの存在を確認できない。それでいて、魔鉱石などのアイテムは豊富だ。
このダンジョンを対象にギルドを作れば、かなりの経済効果がありそうという見解であったが――となると、同時にサーデルとの間で争いを生みだしかねない非常に危険な存在という見方もできた。
サーデル側からのアプローチは未だにない。
こちらとしても、ガウリー大臣はすぐに動きだそうとはしないようだ。
どちらも慎重に物事を進めているという印象を受けるが、それはある意味で一番理想的な展開と言える。
ダンジョン運営が可能というプラス部分にだけ惹かれて一方的な制圧に乗りだしたとするなら、サーデルとメルキスの争いは避けられないだろう。それが即座に勃発する可能性もあっただけに、両国の国王や大臣は冷静な判断力を持っている。
一方、そんな争いの種ともなり得るこのダンジョンに足を踏み入れている俺たちも、そういった意味ではかなり危険な最前線に立っていると言えた。
今のところ、特に目立った対立などはないが、ひとつの小さな綻びがやがて代理戦争なんて事態を招くかもしれない。
割と軽い気持ちで乗り込んでしまったが、ここからは気合を入れ直して挑まなければな。
そんなことを考えつつランプの光を追っていると、前方から獣のような雄叫びが聞こえてきた。
ここまで特に強いモンスターと遭遇してこなかったので「ここには強いモンスターがいない」という感覚に陥っていたのだが……どうやら、奥に大物が潜んでいたようだ。
「い、今のって……」
「下がっているんだ、レメット」
怯えるレメットを背後に回すと、神杖リスティックを握る手に力を込める。エリさんやソニルといった戦闘担当者たちも同じように臨戦態勢をとった。さっきの叫び声の迫力からして相当ヤバそうな感じではあるが、誰ひとりとして怯えた様子を見せない。
相変わらず頼もしい限りだよ。
どんな相手でも負ける気がしない中、さらに奥へと進むと、
「おっ? 泉か?」
湖と呼ぶには規模は小さく、水たまりと呼ぶには大きい。
そうなれば、この場所は泉と呼ぶのが相応しいだろう。
その泉の近くにも、複数の冒険者が。
「リディア!」
「あっ、ウィルムさん!」
真っ先に視界へ飛び込んできたのはリディアだった。
だが、ここでもアキノの姿はない。
彼女は一体どこへ行ってしまったのか……ソニルの時と同じように、彼女からも情報をもらわないと。
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