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第131話 エリ・タチバナの実力

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 ダンジョンの問題はダンジョンのスペシャリストの協力を仰いで解決するに限る。
 そうなった時、エリ・タチバナさんほど適した人物はいないだろう。
 この大陸で冒険者をしている者ならば誰もが耳にしたことのある一流パーティー《月光》のリーダーにして、ヒカリ村でともに暮らすアキノの母親だ。

 実力は折り紙付き。
 実際、俺は商人時代に何度か彼女たちがメインで攻略している迷宮渓谷へ足を運び、この目でその力を目の当たりにしてきた。
 ――しかし、それはあくまでも俺だけの話。
 エリさんたちを連れてヒカリ村へと戻る道中、冒険者事情に疎いレメットがこっそりと尋ねてきた。

「あの……ウィルムさん、少しよろしいですか?」
「どうかしたのか?」
「アキノさんのお母様――エリさんはどれほど強いのですか?」

 これはレメットだけでなく、後ろにいるミミューも同じ気持ちらしい。
 まあ、確かに体格は周りの男性冒険者に引けを取らないが、いざ戦闘になったらどれほど強いのか――俺は嘘偽りのない情報をふたりに教えた。

「強いよ。アキノやソニル、リディアがまとめて相手をしても止められるかどうか……きっと難しいだろうね」
「そ、そんなに……」

 ふたりにはこれが一番伝わりやすいかな。
 もっとも、過剰な表現というわけではなく、本当にそれくらい強いんだよな、エリさん。
 何せ、あの協力モンスターが大量に出没する迷宮渓谷を本拠地に据えて探索をしているわけだからな。ガウリー大臣が頼りにするのはそれだけの強さをエリさんが秘めているからだ。
 
「これから一緒にダンジョンへ入るんだから、目の前で見られるはずだよ」
「アキノさんたちの戦闘力も相当なのに……それでも止められないなんて……」
「し、信じられないですぅ」

 よほど衝撃的だったみたいだな。
 レメットもミミューも口が半開きになっている。
 そういえば、アキノにとっては久しぶりの再会となるのか。本人は喜びそうだが、まずはダンジョンに行って安否を確認しないと。厄介なモンスターがいるらしいけど、正直言って、アキノたちが苦戦を強いられる様子を想像できない。それこそ、エリさんのような頭のキレる実力者が相手というなら話は別だけど。

 それからしばらくして、無事ヒカリ村へと到着。
 村人の多くはその業界で活躍する人たち――なので、当然エリさんのことを知っている。
 いきなりの有名冒険者一行の登場に驚く村人たちであったが、例のダンジョンの存在をすぐに思い出して納得した表情へと変わった。

 さて、どうやらアキノ率いる先遣隊はまだ戻ってきていないようだ。
 サーデル王国側から来たダニーさんを案内役にして、うちでも戦闘自慢の三人娘と冒険者たちが現在ダンジョンを調査中――なのだが、どうにもキナ臭いというわけでガウリー大臣からの紹介もあり、《月光》の面々を連れてきたのだ。

 ――と、いう内容を村人たちに告げて、状況の整理に移る。

 しかし、どうも目立った進展はないようだ。

「私たちもすぐに後を追おう」
「そうですね。アイテムの準備をしてきます」

 やはり、娘のことが気がかりなのか、エリさんはすぐにでもダンジョンへ向かうという。
 俺たちもそれについていくため、準備へと取りかかった。
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