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第65話 協力体制

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 魔鉱石が潜んでいる場所を特定するための新しい魔法。
 これは……難しい条件だな。
 何せ、うちには魔法使いというか、そもそも魔法を使える者がいない。貴族によってはお抱えの魔法使いがいるらしいが、トライオン家はそういうのに無縁だったからなぁ。

「魔法使い……ですか」
 
 さすがのドイル様もこれには思わず苦い表情を浮かべる。魔法使いの存在はアボット地方にとってまさに泣きどころだ。領主という立場だからこそ身に染みて感じているはず。
 せっかく新しい希望が出てきたと思ったが……やはりそんなうまくはいかないか。
 落胆するアボットの面々。
すると、それを見たドノルド様が救いの手を差し伸べてくれた。

「魔鉱石の調査だが、もしヤル気があるようならうちからひとり魔法使いを派遣させてもらうよ。まだ若いが、実力は保証しよう」
「そ、そんな!? そこまでしていただくのは――」
「気にしなくていい。魔鉱石の採掘は国にとって重要な産業になる。それに協力をするのは公爵家として当たり前の動きだ」
「ド、ドノルド様……」

 感激のあまり言葉が詰まるドイル様。
 ……しかし、ドノルド様の言うように、ランドバル王国内で魔鉱石が採掘される場所というのは限られている。そもそも、鉱山はアボット地方を含め全部で三つしかないのだ。そのうちのひとつが復活するとなったら国家の運営に大きなプラス効果をもたらすだろう。だから協力を申し出てくれたのだ。
 
「アボット地方に魔鉱石の鉱山……もしそこが復活すれば、トライオン家にも大きな好影響が出ますわね」
「は、はい! ぜひやらせてください!」

 アリッサ様からの後押しもあり、ドイル様は魔鉱石の調査を決断した。
 水を差すだろうから発現は控えていたものの……まだ魔鉱石が見つかったわけじゃないんだよな。もちろん、アボット地方の――いや、それだけにとどまらず、ランドバル王国全体にとっても、国内で魔鉱石が手に入る可能性を広げるというのは重要な意味を持つので、そうなってもらいたいと願ってはいるのだが。

 当然ながら、ドイル様もそこをまったく考えていないわけじゃない。
 協力体制を申し出てくれた時こそ浮かれた様子だったが、すぐに引き締まった表情へと変わっていた。

 それにしても……マクリード家お抱えの魔法使いか。
 若いらしいが、ドノルド様も認める実力者。
 一体どんな人なんだろう。
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