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第53話 変わりつつある風向き

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 ゲイリーとミラッカのふたりと再会を喜び合った後、俺はここ最近の騎士団の動きについて教えてもらう。何せ、アボット地方での勤務では王都で何をやっているのかまったく情報が入って来ないからな。

「この舞踏会が終わった二日後に二回目の王国議会が開かれるんだが……俺たちはそこでハンクへの疑惑をぶつけるつもりだ」

 最初に聞かされたのは王国議会について。
 どうやら、ゲイリーたちは何か有力な情報を掴んだらしい。

 ――もし、それで俺の疑惑が晴れたのなら……やはり王都へ戻るべきなのだろうか。
 こちらの判断も早いうちにつけなくてはいけないと思っていたら、

「あの……なんだか騒がしくありません?」

 周囲の異変にエリナが気づく。俺はゲイリーの話を聞いていろいろと考えを巡らせていたから気づかなかったけど……確かに、使用人たちが何か慌ただしく動き回っている。その表情には焦りの色が見られた。

「何かあったようだな」

 緊急事態かと警戒心を強める俺とエリナ。
 対照的に、ゲイリーとミラッカは大きくため息をついてどこかうんざりしているようにも映った。そして、

「またいなくなったみたいだな」

 ゲイリーがボソッとそう漏らす。

「いなくなった?」
「ジャスティンたちはさっき到着したばかりだから知らされていないんだったな……どうも公爵家ご令嬢はお年頃ってヤツらしいんだ」
「? どういう意味だ?」
「この舞踏会が開催された本当の理由……あなたたちなら勘づいているんじゃない?」
「っ! なるほど、そういうわけですか」

 エリナは納得しているようだが、俺は皆目見当もつかない。
 それを見抜いてか、ゲイリーが説明をしてくれた。

「今回の舞踏会はご令嬢であるアリッサ様の誕生日を祝うものとされているが、集まっている連中の狙いは彼女との婚約だ」
「ハンクも同じ考えを持ってこの会場へやってきているみたいよ」
「みたいだな」

 公爵家ご令嬢との婚約――あいつの凄まじい出世欲を満たすのにこれほどバッチリ合う条件はないだろう。デラント家としても、それが叶えば国内での地位が一気に上がる。まさに夢のような展開だ。

 ただ、ご令嬢であるアリッサ様はそもそも婚約自体に乗り気じゃないらしい。

「分かりますねぇ……好きとか嫌い以前に初めて顔を合わせた殿方と結婚しろなんて言われてもピンときませんよ」
「昔はそれが当たり前だったんだがなぁ。これも時代の流れってヤツか」

 どうやら、いなくなるのはこれが初めてってわけじゃなさそうだ――けど、まさかそっち方向から暗雲が流れ込んでくるなんてさすがに予想外だったよ。
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