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第49話 アスレティカの提案

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 湖の水を持っていくといい――そう語ったアスレティカ。
 けど、この水をどうすればいいんだ?

「水を持っていくのは構わないけど、それをどうすればいいんだ?」
「飲めばいい。そうすればたちまち足の怪我は治るじゃろう」
「ほ、本当か!?」

 この湖の水にそんな効果があるとは知らなかった……というか、間違いなくアスレティカが来たからこそ、そういった効果が得られているのだろう。

 ――待てよ。
 確か、似たような逸話を持つドラゴンの話を聞いたことがあったな。

「なあ、アスレティカ。君はもしかして……聖竜と呼ばれる種族なのか?」
「知っておったか」
「確信を持っていたわけじゃないよ。ただ、以前ある老兵が『ドラゴンの浸かっていた水には回復効果がある』って語っているのを思い出してね。興味本位で調べてみたら、数あるドラゴンの中でも聖竜と呼ばれる種族は回復能力に長けていると記された書物を見つけたんだ」

 アスレティカにそう話すと、彼は大きく息を吐いた。

「黙っていて悪かったのぅ」
「そんな……謝ることじゃないさ」

 書物にはさらに聖竜の血には不老不死の効果があるとまで書かれていた。 
 ゆえに、アスレティカは言いだせなかったのだろう。自分の血を巡ってドラゴン狩りでも起きれば、せっかく見つけた理想の住処を追われるかもしれない。

 だから、俺からするとよくそれを告白してくれたと思う。

「どうして教えてくれたんだ?」

 たまらず、俺はそう尋ねた。
 すると、アスレティカは小さく笑いながら答える。

「ワシの命は……もう残り少ないんじゃ」
「えっ!?」

 またしても驚愕の告白だった。

「まあ、少ないと言っても、十年以上あるから人間の寿命に換算すると長いと感じるかもしれないが……千年生きている身としては、本当にあとわずかと感じる短さなんじゃよ」
「そ、そんな……」
「じゃから、その水はここを終の棲家にしようと決めたワシを受け入れてくれたお礼――足が治れば、舞踏会とやらに参加はできるのだろう?」
「あ、ああ」

 俺は一度駐在所へと戻り、王都時代から使っている水筒を持ちだし、厩舎から馬のレオンを連れだして再び湖へ。そして水筒の中を湖の水で満たすと、アスレティカに礼を告げてトライオン家の屋敷に向かうのだった。



※本日は18時と21時にも投稿予定!
 明日からは1日2話投稿に戻ります!
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