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第59話 魔界疾走
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「ここが……魔界……」
勢いに任せて飛び込んだ先――そこは人にとって未踏の地。
紫色をした空の下で、ドミニクは呆然と立ち尽くしていた。
「――っ!? そうだ! イリーシャは!?」
我に返ったドミニクは先に乗り込んだはずのイリーシャを捜す。
「イリーシャ! どこだ! イリーシャ!」
「落ち着くんじゃ、ドミニク!」
耳元で叫ぶエヴァの声で、再びドミニクはハッとなる。
「エ、エヴァさん、イリーシャが……」
「あの子はきっと……あそこを目指していったに違いない」
「あそこ? ――うおっ!?」
ドミニクはエヴァの視線を追って空を見上げた。そこには、不気味な紫色の柱を貫くようにそびえる巨大な光の柱があった。
「あ、あれは……」
「修復魔法じゃ」
「!? あ、あんなに凄いんですか!?」
「それをふたりでやっておるんじゃ。たいしたものじゃよ」
「ふたりって――あっ! そうか!」
あの光の柱が修復魔法だというなら、あの柱のもとにギデオンとヴェロニカがいる。
「イリーシャは、あの光の柱を目指して……」
「そう考えるのが自然じゃな。あの子にも修復魔法が使える――あそこから放たれる魔力が両親のものであると感じ取ったのじゃろう」
「俺たちも行きましょう!」
「そうじゃな。ここは魔界……何が起きるか分からぬからな」
ドミニクは霊竜エヴァを憑依させ、臨戦態勢を保ちつつ魔界を疾走していく。
走り始めて五分。
「はあ、はあ、はあ……」
全力で力いっぱい走りながらイリーシャを捜すが、手掛かりさえ掴めていない状況だった。
すると、
「うぅっ!?」
慌てて立ち止まるドミニク。
やがてその場に膝から崩れ落ちる。
「どうした、ドミニク!」
「か、体が……思うように動かなくて……」
「何じゃと!?」
魔界の空気に当てられすぎて、ドミニクの体調に異変が生じ始めていた。
「ぐっ……ここまで来て……」
「待て、ドミニク! これ以上は危険じゃ! 亀裂から外へ出るんじゃ!」
「……それはできません」
ドミニクは歯を食いしばってゆっくりと立ち上がる。
「まだいけますよ、俺は」
「ドミニク……」
エヴァは判断を迷っていた。
人間が魔界でどれだけいられるのか――いい影響はないのだろうが、まさかこんなに早く変調が訪れるとは予想外だった。
それでも、気迫に満ちたドミニクの顔つきを見ていると、このまま行かせてやりたいという気持ちもあった。
「……ドミニクよ」
「はい……」
「光の柱を目指せ。あの辺り一帯は向こう側のさして変わらん環境のはずじゃ」
「分かりました……」
気力を振り絞って、ドミニクは足を動かす。
進めば進むほどに体が重くなって、地面に沈んでいくような感覚が襲う。
それでも、エヴァの言葉を信じて突き進む。
やがて、
「あっ!?」
ドミニクは足を止めた。
体調の悪化による停止ではない。
視線の先に、捜し続けていた人物がいたからだ。
「イリーシャ!」
汗だくになりながら、イリーシャの名を叫ぶ。
だが、反応は見られない。
聞こえなかったのか――ドミニクがもう一度叫ぼうとした時だった。
「! あ、あれは……」
立ち尽くすイリーシャが見据える先――光の柱の根本。
そこに、ふたつの人影を発見した。
「ま、まさか……あそこにいるふたりが……」
「ギデオン、ヴェロニカ……」
ドミニクとエヴァは、ついにその姿を視界に捉えた。
イリーシャの両親である、ギデオンとヴェロニカを。
勢いに任せて飛び込んだ先――そこは人にとって未踏の地。
紫色をした空の下で、ドミニクは呆然と立ち尽くしていた。
「――っ!? そうだ! イリーシャは!?」
我に返ったドミニクは先に乗り込んだはずのイリーシャを捜す。
「イリーシャ! どこだ! イリーシャ!」
「落ち着くんじゃ、ドミニク!」
耳元で叫ぶエヴァの声で、再びドミニクはハッとなる。
「エ、エヴァさん、イリーシャが……」
「あの子はきっと……あそこを目指していったに違いない」
「あそこ? ――うおっ!?」
ドミニクはエヴァの視線を追って空を見上げた。そこには、不気味な紫色の柱を貫くようにそびえる巨大な光の柱があった。
「あ、あれは……」
「修復魔法じゃ」
「!? あ、あんなに凄いんですか!?」
「それをふたりでやっておるんじゃ。たいしたものじゃよ」
「ふたりって――あっ! そうか!」
あの光の柱が修復魔法だというなら、あの柱のもとにギデオンとヴェロニカがいる。
「イリーシャは、あの光の柱を目指して……」
「そう考えるのが自然じゃな。あの子にも修復魔法が使える――あそこから放たれる魔力が両親のものであると感じ取ったのじゃろう」
「俺たちも行きましょう!」
「そうじゃな。ここは魔界……何が起きるか分からぬからな」
ドミニクは霊竜エヴァを憑依させ、臨戦態勢を保ちつつ魔界を疾走していく。
走り始めて五分。
「はあ、はあ、はあ……」
全力で力いっぱい走りながらイリーシャを捜すが、手掛かりさえ掴めていない状況だった。
すると、
「うぅっ!?」
慌てて立ち止まるドミニク。
やがてその場に膝から崩れ落ちる。
「どうした、ドミニク!」
「か、体が……思うように動かなくて……」
「何じゃと!?」
魔界の空気に当てられすぎて、ドミニクの体調に異変が生じ始めていた。
「ぐっ……ここまで来て……」
「待て、ドミニク! これ以上は危険じゃ! 亀裂から外へ出るんじゃ!」
「……それはできません」
ドミニクは歯を食いしばってゆっくりと立ち上がる。
「まだいけますよ、俺は」
「ドミニク……」
エヴァは判断を迷っていた。
人間が魔界でどれだけいられるのか――いい影響はないのだろうが、まさかこんなに早く変調が訪れるとは予想外だった。
それでも、気迫に満ちたドミニクの顔つきを見ていると、このまま行かせてやりたいという気持ちもあった。
「……ドミニクよ」
「はい……」
「光の柱を目指せ。あの辺り一帯は向こう側のさして変わらん環境のはずじゃ」
「分かりました……」
気力を振り絞って、ドミニクは足を動かす。
進めば進むほどに体が重くなって、地面に沈んでいくような感覚が襲う。
それでも、エヴァの言葉を信じて突き進む。
やがて、
「あっ!?」
ドミニクは足を止めた。
体調の悪化による停止ではない。
視線の先に、捜し続けていた人物がいたからだ。
「イリーシャ!」
汗だくになりながら、イリーシャの名を叫ぶ。
だが、反応は見られない。
聞こえなかったのか――ドミニクがもう一度叫ぼうとした時だった。
「! あ、あれは……」
立ち尽くすイリーシャが見据える先――光の柱の根本。
そこに、ふたつの人影を発見した。
「ま、まさか……あそこにいるふたりが……」
「ギデオン、ヴェロニカ……」
ドミニクとエヴァは、ついにその姿を視界に捉えた。
イリーシャの両親である、ギデオンとヴェロニカを。
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