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第44話 ドミニクの狙い
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一旦部屋へと戻ったドミニクは、事情をアンジェに報告。
「それはまた……凄いことになりましたね」
アンジェは驚くが、無理もない話だ。
「ところで、どうして御令嬢が貸し切り風呂に?」
「一般の客と同じ風呂に入るわけにもいかず、かといって女ふたりで貸し切り風呂は怪しまれるかもしれないということから、誰も使っていない風呂をこっそり拝借するって案が採用されたらしいが……結果的に大失敗だったな」
「見張りくらい立てておけばよかったのに」
「いたらしいんだが……ほんのちょっと目を離した隙に俺が入っていったらしいんだ」
「タイミングがいいというか悪いというか……」
頭を抱えるアンジェ。
確かに、話だけを聞くとただの寄り道にしか思えないのだが、ドミニクには秘策があった。
「安心してくれ、アンジェ。今回の件がうまくいけば、ラドム王国への入国がスムーズにいくかもしれない」
「? どういうことですか?」
入国への審査が厳しいことで知られるラドム王国だが、そういった面倒がな手続きを一切パスして入国できる方法がある。
それは、
「紹介状だよ」
「紹介状……ああっ!」
その手があったか、とアンジェがポンと手を叩いた。
「それなら、諸々の書類を用意したりする必要がなくなりますね!」
「ああ。そのためにも……青い流星をあのお嬢様に見せないと」
「しかし、青い流星って一体どんな現象なんでしょうか」
「俺を知らないんだよなぁ……というわけで、今からちょっと情報収集に行ってくる」
「今からですか?」
驚くアンジェ。
しかし、明日にはカタリナとイザベラを連れてダンジョンに向かい、そこで青い流星を見せる。その見返りとして、入国紹介状を書いてもらうという運びになっていた。
「絶対に失敗できないからな」
そう言うと、ドミニクは布団で寝息を立てるイリーシャたちのもとへ。
「あとちょっとでお父さんとお母さんに会えるぞ」
寝ているイリーシャの頭を優しく撫でながら、ドミニクは目を細める。
「……分かりました。くれぐれも、無茶だけはしないようにしてください。あなたに何かあったら、子どもたちも悲しみますから」
「肝に銘じるよ。じゃあ、子どもたちを頼んだ」
「はい」
「ワシも行くぞ、ドミニク」
部屋を出ようとしたドミニクに、霊竜エヴァが声をかけた。
「孫娘のために頑張ってくれておるのじゃからな。ワシにできることは協力しよう」
「ありがとうございます、エヴァさん」
子どもたちをアンジェに預け、ドミニクとエヴァは夜の温泉街へと繰り出していった。
結論から言うと、青い流星にまつわる情報を手に入れることはできなかった。
それどころか、
「青い流星? 聞いたこともねぇな」
「なんだい、そりゃ?」
「ダンジョンで流れ星が見られるわけねぇだろ」
情報収集はただ笑われて終わるだけだった。
「……これはちょっとまずいかも」
「そのお嬢様が読んだ本にある情報が間違っておるのかのぅ」
「あるいは、創作だったのを勘違いしたか、ですね」
実在するダンジョンをモデルにしたフィクションという可能性もある。
「もしそうなら、きちんと説明しておかないと」
「…………」
「? エヴァさん?」
霊竜エヴァは一点を見つめて黙ったまま。
その視線の方向には、ダンジョンがある。
「感じるのぅ」
「な、何をですか?」
「妙な魔力じゃ」
訝しげに呟くエヴァ。
「のぅ、ドミニクよ。当日はワシと憑依した状態で向かうぞ」
「そ、それって、どういう……」
「掴めたかもしれんのじゃ――ダンジョンに降る流れ星の正体が」
「それはまた……凄いことになりましたね」
アンジェは驚くが、無理もない話だ。
「ところで、どうして御令嬢が貸し切り風呂に?」
「一般の客と同じ風呂に入るわけにもいかず、かといって女ふたりで貸し切り風呂は怪しまれるかもしれないということから、誰も使っていない風呂をこっそり拝借するって案が採用されたらしいが……結果的に大失敗だったな」
「見張りくらい立てておけばよかったのに」
「いたらしいんだが……ほんのちょっと目を離した隙に俺が入っていったらしいんだ」
「タイミングがいいというか悪いというか……」
頭を抱えるアンジェ。
確かに、話だけを聞くとただの寄り道にしか思えないのだが、ドミニクには秘策があった。
「安心してくれ、アンジェ。今回の件がうまくいけば、ラドム王国への入国がスムーズにいくかもしれない」
「? どういうことですか?」
入国への審査が厳しいことで知られるラドム王国だが、そういった面倒がな手続きを一切パスして入国できる方法がある。
それは、
「紹介状だよ」
「紹介状……ああっ!」
その手があったか、とアンジェがポンと手を叩いた。
「それなら、諸々の書類を用意したりする必要がなくなりますね!」
「ああ。そのためにも……青い流星をあのお嬢様に見せないと」
「しかし、青い流星って一体どんな現象なんでしょうか」
「俺を知らないんだよなぁ……というわけで、今からちょっと情報収集に行ってくる」
「今からですか?」
驚くアンジェ。
しかし、明日にはカタリナとイザベラを連れてダンジョンに向かい、そこで青い流星を見せる。その見返りとして、入国紹介状を書いてもらうという運びになっていた。
「絶対に失敗できないからな」
そう言うと、ドミニクは布団で寝息を立てるイリーシャたちのもとへ。
「あとちょっとでお父さんとお母さんに会えるぞ」
寝ているイリーシャの頭を優しく撫でながら、ドミニクは目を細める。
「……分かりました。くれぐれも、無茶だけはしないようにしてください。あなたに何かあったら、子どもたちも悲しみますから」
「肝に銘じるよ。じゃあ、子どもたちを頼んだ」
「はい」
「ワシも行くぞ、ドミニク」
部屋を出ようとしたドミニクに、霊竜エヴァが声をかけた。
「孫娘のために頑張ってくれておるのじゃからな。ワシにできることは協力しよう」
「ありがとうございます、エヴァさん」
子どもたちをアンジェに預け、ドミニクとエヴァは夜の温泉街へと繰り出していった。
結論から言うと、青い流星にまつわる情報を手に入れることはできなかった。
それどころか、
「青い流星? 聞いたこともねぇな」
「なんだい、そりゃ?」
「ダンジョンで流れ星が見られるわけねぇだろ」
情報収集はただ笑われて終わるだけだった。
「……これはちょっとまずいかも」
「そのお嬢様が読んだ本にある情報が間違っておるのかのぅ」
「あるいは、創作だったのを勘違いしたか、ですね」
実在するダンジョンをモデルにしたフィクションという可能性もある。
「もしそうなら、きちんと説明しておかないと」
「…………」
「? エヴァさん?」
霊竜エヴァは一点を見つめて黙ったまま。
その視線の方向には、ダンジョンがある。
「感じるのぅ」
「な、何をですか?」
「妙な魔力じゃ」
訝しげに呟くエヴァ。
「のぅ、ドミニクよ。当日はワシと憑依した状態で向かうぞ」
「そ、それって、どういう……」
「掴めたかもしれんのじゃ――ダンジョンに降る流れ星の正体が」
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