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第42話 満喫
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温泉街イヴァンを満喫するドミニク一行。
次はいよいよメインの温泉へと向かう。
――が、ここで問題発生。
公共浴場であるため、ドミニクたち以外の客も温泉を利用する。エルフと竜人のハーフであるイリーシャや、妖精のエニスは入りづらいのではないかと思ったドミニクは、宿屋の老婆に相談する。もちろん、ふたりの存在は隠し、人の目に触れない、貸し切りの風呂はないかと告げた。
すると、
「ほぉ~……」
老婆は意味深な笑みを浮かべながら、貸し切り風呂はあると教えてくれ、そこへ入る鍵も出してくれた。
「ひとつ、注意点があるんじゃ」
「注意点? 使用上のですか?」
「うむ」
老婆は何やら思いつめた表情で語り始めた。
「その風呂には、あなた方のようなお客さんがよく利用するんじゃ」
「ふむ」
「じゃが、時折気分が盛り上がりすぎてしまい、ふたり揃ってのぼせてダウンしていることもあるんじゃ」
「? なぜ気分が盛り上がるとダウンするんですか?」
「風呂場でおっぱじめるからに決まっておるじゃろ」
「おっぱじめ――っ!?」
そこで、ドミニクはすべてを察した。
「し、しませんよ!」
「なんじゃ。つまらん」
老婆は一気に興味を失い、冷めた目つきへと変わる。とても接客業に従事する人間とは思えない態度だった。
とりあえず、これでイリーシャやエニスたちもゆったりと温泉を楽しめる。
それだけで十分だ。
ただ、あの子たちの性格上、「一緒に入ろう!」と誘ってくる可能性もある。そしてそのままアンジェも一緒に――
「……って、何を考えているんだ、俺は」
「何を考えていたんですか?」
「うおうっ!?」
不意を突かれたドミニクは思わず飛び退いた。
「ご、ごめんなさい。そんなに驚くとは思っていなくて」
「い、いや、俺の方こそ、ちょっといろいろあって……」
「いろいろ?」
まずい、とドミニクは思った。
下手に追及されると言い訳が苦しくなってくる。
なので、ここは強行突破をすることに。
「ほ、ほら、貸し切り温泉につながる鍵を借りてきたぞ」
「やっぱりあったんですね」
「う、うん。これでイリーシャたちも気兼ねなく温泉に入れるよ」
「あっ、そのことなんですが……」
頬をポリポリとかきながら、バツが悪そうにアンジェは現状を語る。
部屋に戻って来たドミニクは思わず苦笑いを浮かべた。
「疲れていたのは俺だけじゃなかったか」
見ると、子どもたちは部屋のすみっこで肩を寄せ合いながら寝息を立てていた。
「さっきまで、絶対にドミニクと一緒にお風呂へ入ると意気込んでいたんですが……ご覧の通りです」
「ははは、まあ、しょうがないか」
ホッとしたような、ちょっと残念なような、複雑な心境のドミニクであった。
「子どもたちは私があとで一緒に入りますから、先にどうぞ」
「い、いいのか?」
「えぇ。一番の功労者はドミニクですから」
正直、嬉しい申し出だった。
「悪い。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「えぇ。存分に疲れを癒してきてください」
アンジェの厚意に甘える形となったドミニクは、着替えなどを持って貸し切り浴場へ向かうため部屋を出た。
◇◇◇
「えっとぉ……ああ、ここだ」
案内看板に従って訪れたのは宿屋の最奥部にあるお風呂。
人目につきにくい場所になり、まさに隠れた名所という雰囲気を醸し出している。
話では露天風呂ということだったので、ドミニクの期待も一層高まった。
はやる気持ちを抑えつつ、さっさと服を脱いで浴場へ。
「おぉっ! これはいいな!」
共同浴場に比べたら狭いが、小数で入るという条件付きならば申し分ない広さだ。
「む? あっちの扉が露天風呂へ通じているのか」
露天風呂を楽しみにしていたドミニクは、早速そっちへ入ろうと近づく。
――と、その時、突如露天風呂へ通じる扉が開いた。
それは即ち、この場にドミニク以外の人間がいるということになる。
「えっ?」
ドミニクが声をあげた瞬間――裸の少女が目に入った。
次はいよいよメインの温泉へと向かう。
――が、ここで問題発生。
公共浴場であるため、ドミニクたち以外の客も温泉を利用する。エルフと竜人のハーフであるイリーシャや、妖精のエニスは入りづらいのではないかと思ったドミニクは、宿屋の老婆に相談する。もちろん、ふたりの存在は隠し、人の目に触れない、貸し切りの風呂はないかと告げた。
すると、
「ほぉ~……」
老婆は意味深な笑みを浮かべながら、貸し切り風呂はあると教えてくれ、そこへ入る鍵も出してくれた。
「ひとつ、注意点があるんじゃ」
「注意点? 使用上のですか?」
「うむ」
老婆は何やら思いつめた表情で語り始めた。
「その風呂には、あなた方のようなお客さんがよく利用するんじゃ」
「ふむ」
「じゃが、時折気分が盛り上がりすぎてしまい、ふたり揃ってのぼせてダウンしていることもあるんじゃ」
「? なぜ気分が盛り上がるとダウンするんですか?」
「風呂場でおっぱじめるからに決まっておるじゃろ」
「おっぱじめ――っ!?」
そこで、ドミニクはすべてを察した。
「し、しませんよ!」
「なんじゃ。つまらん」
老婆は一気に興味を失い、冷めた目つきへと変わる。とても接客業に従事する人間とは思えない態度だった。
とりあえず、これでイリーシャやエニスたちもゆったりと温泉を楽しめる。
それだけで十分だ。
ただ、あの子たちの性格上、「一緒に入ろう!」と誘ってくる可能性もある。そしてそのままアンジェも一緒に――
「……って、何を考えているんだ、俺は」
「何を考えていたんですか?」
「うおうっ!?」
不意を突かれたドミニクは思わず飛び退いた。
「ご、ごめんなさい。そんなに驚くとは思っていなくて」
「い、いや、俺の方こそ、ちょっといろいろあって……」
「いろいろ?」
まずい、とドミニクは思った。
下手に追及されると言い訳が苦しくなってくる。
なので、ここは強行突破をすることに。
「ほ、ほら、貸し切り温泉につながる鍵を借りてきたぞ」
「やっぱりあったんですね」
「う、うん。これでイリーシャたちも気兼ねなく温泉に入れるよ」
「あっ、そのことなんですが……」
頬をポリポリとかきながら、バツが悪そうにアンジェは現状を語る。
部屋に戻って来たドミニクは思わず苦笑いを浮かべた。
「疲れていたのは俺だけじゃなかったか」
見ると、子どもたちは部屋のすみっこで肩を寄せ合いながら寝息を立てていた。
「さっきまで、絶対にドミニクと一緒にお風呂へ入ると意気込んでいたんですが……ご覧の通りです」
「ははは、まあ、しょうがないか」
ホッとしたような、ちょっと残念なような、複雑な心境のドミニクであった。
「子どもたちは私があとで一緒に入りますから、先にどうぞ」
「い、いいのか?」
「えぇ。一番の功労者はドミニクですから」
正直、嬉しい申し出だった。
「悪い。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「えぇ。存分に疲れを癒してきてください」
アンジェの厚意に甘える形となったドミニクは、着替えなどを持って貸し切り浴場へ向かうため部屋を出た。
◇◇◇
「えっとぉ……ああ、ここだ」
案内看板に従って訪れたのは宿屋の最奥部にあるお風呂。
人目につきにくい場所になり、まさに隠れた名所という雰囲気を醸し出している。
話では露天風呂ということだったので、ドミニクの期待も一層高まった。
はやる気持ちを抑えつつ、さっさと服を脱いで浴場へ。
「おぉっ! これはいいな!」
共同浴場に比べたら狭いが、小数で入るという条件付きならば申し分ない広さだ。
「む? あっちの扉が露天風呂へ通じているのか」
露天風呂を楽しみにしていたドミニクは、早速そっちへ入ろうと近づく。
――と、その時、突如露天風呂へ通じる扉が開いた。
それは即ち、この場にドミニク以外の人間がいるということになる。
「えっ?」
ドミニクが声をあげた瞬間――裸の少女が目に入った。
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