38 / 63
第38話 街での1日
しおりを挟む
運のいいことに、大都市ゴルトー到着初日に次の情報を得ることができたドミニク一行。
おかげで翌日には次の目的地へ向けて出発できる――はずだったが、
「せっかくこんな大きな都市へ来たのじゃから、街を見ていかんか?」
「賛成♪」
エヴァの提案に対し、真っ先に賛成したのは人間の暮らしに興味を持っている妖精のエニスだった。続いて、
「わ、私も……ちょっと見てみたいです」
「私も」
おずおずと手をあげたシエナに、瞳を輝かせるイリーシャ。
判断を委ねられているドミニクとしては、「イリーシャ自身が街を見たいと言うなら」という気持ちだった。
すでに両親の現在地について最終的な絞り込みは出来ている。
ラドム王国。
これまでの情報から、この国で、イリーシャの両親――ギデオンとヴェロニカは働いているのは間違いないだろう。
ただ、ラドムへの道のりは遠い。
そういったことを考慮すると、ここでラドムへの遠征に向けた物資を購入するというのも手だろう。資金にはまだ余裕もあるし、何よりここは、大陸でも屈指の大都市。ここならば大抵の物は揃う。
「よし! じゃあ今日一日は街を散策してみるか」
ドミニクがそう告げると、シエナたちは大喜び。
早速、周辺の店を見て回ることにした。
「わあ、これ可愛いです♪」
「うん。シエナによく似合う」
「こっちのはイリーシャに似合いそうよ!」
シエナ、イリーシャ、エニスの幼少組は雑貨屋で盛り上がっていた。
一方、ドミニクとアンジェはこれからの旅で必要になりそうな物資を購入。
「携帯食に飲み物、それからランドのご飯だな。……あとは?」
「資金が枯渇しても慌てないように、ダンジョンマップを用意しておきましょう」
「そうだな。この近辺は多いから、ラドムへ向かう前に立ち寄ってもいいけど」
「それがいいかもしれないですね」
難しい顔で話し合うふたり。
時々、三人娘のやりとりにほっこりとしつつ、買い出しを進めていった。
それからも、ドミニク一行は街の散策を満喫した。
いつもはダンジョンなど危険な場所へ向かうことが多いので、今みたいにのんびりと買い物を楽しむという感覚は久しぶりだった。
幼少組は雑貨屋でドミニクに買ってもらった小物を荷台で見せ合い楽しんでいる。
「さて、買い残しはないかな?」
「はい。あとは中継地点に選んだ街でも売っていると思うので」
「よし、なら今日はここらで引きあげるとするか」
事前に作成しておいた購入予定リストへ目を通し、漏れがないことを確認すると、ドミニクたちは宿屋へと戻った。
周りは徐々に暗くなり、発光石の埋め込まれた街灯の淡い光が石造りの道を柔らかく照らしている。
今日の楽しい思い出を振り返りながら歩いていると、
「もうやめてくれ!」
どこからともなく男の叫び声。
見ると、街の一部に人だかりができていた。
「な、なんだ?」
「何があったんでしょう……」
不安そうなアンジェと荷台に乗る子どもたち。
「ドミニクよ」
「えぇ……行ってみましょう。みんなはここにいてくれ」
アンジェたちにそこへとどまるよう指示を出したドミニクは、一般の人の目には映らない霊竜エヴァと共に声のした方を目指す。
人込みをかき分けて、ドミニクが見たものは、
「ハハハハハッ!」
高らかに笑い声をあげるのは、銀狐の現リーダー・ベイツ。
その足元では、
「うぅ……」
ドミニクたちに情報を提供したセルジオが血だらけで倒れていた。遠目からでも分かるほど外傷がひどい。返り血を浴びているところを見ると、ベイツにやられたのだろう。
「なんてことを!」
その惨たらしい光景にたまらずドミニクが叫ぶ。すると、その声を耳にしたベイツの視線が向けられる。
「おっ? いたな」
ドミニクを見つけるなり、ベイツの顔がニヤッと醜くゆがむ。
「わざわざ足を運んでくれるとはなぁ。捜す手間が省けたぜ」
どうやらベイツの狙いはドミニクらしい。
「あんたは証人だ」
「証人……?」
「そうだ。こいつが勝手に俺の情報を売りやがったみたいだなぁ……買ったんだろう? あのふたりの情報を」
ベイツは情報をもらう代わりに、ドミニクがセルジオへ報酬を渡したと思っているようだった。
しかし、セルジオはドミニクから金銭はおろか物品さえもらっていない。
「……そんなことのために」
握った拳が怒りで震える。
「なんだ? 何か文句でもあるのか?」
「大アリだ、このクソ野郎!」
ドミニクの怒りが爆発した。
おかげで翌日には次の目的地へ向けて出発できる――はずだったが、
「せっかくこんな大きな都市へ来たのじゃから、街を見ていかんか?」
「賛成♪」
エヴァの提案に対し、真っ先に賛成したのは人間の暮らしに興味を持っている妖精のエニスだった。続いて、
「わ、私も……ちょっと見てみたいです」
「私も」
おずおずと手をあげたシエナに、瞳を輝かせるイリーシャ。
判断を委ねられているドミニクとしては、「イリーシャ自身が街を見たいと言うなら」という気持ちだった。
すでに両親の現在地について最終的な絞り込みは出来ている。
ラドム王国。
これまでの情報から、この国で、イリーシャの両親――ギデオンとヴェロニカは働いているのは間違いないだろう。
ただ、ラドムへの道のりは遠い。
そういったことを考慮すると、ここでラドムへの遠征に向けた物資を購入するというのも手だろう。資金にはまだ余裕もあるし、何よりここは、大陸でも屈指の大都市。ここならば大抵の物は揃う。
「よし! じゃあ今日一日は街を散策してみるか」
ドミニクがそう告げると、シエナたちは大喜び。
早速、周辺の店を見て回ることにした。
「わあ、これ可愛いです♪」
「うん。シエナによく似合う」
「こっちのはイリーシャに似合いそうよ!」
シエナ、イリーシャ、エニスの幼少組は雑貨屋で盛り上がっていた。
一方、ドミニクとアンジェはこれからの旅で必要になりそうな物資を購入。
「携帯食に飲み物、それからランドのご飯だな。……あとは?」
「資金が枯渇しても慌てないように、ダンジョンマップを用意しておきましょう」
「そうだな。この近辺は多いから、ラドムへ向かう前に立ち寄ってもいいけど」
「それがいいかもしれないですね」
難しい顔で話し合うふたり。
時々、三人娘のやりとりにほっこりとしつつ、買い出しを進めていった。
それからも、ドミニク一行は街の散策を満喫した。
いつもはダンジョンなど危険な場所へ向かうことが多いので、今みたいにのんびりと買い物を楽しむという感覚は久しぶりだった。
幼少組は雑貨屋でドミニクに買ってもらった小物を荷台で見せ合い楽しんでいる。
「さて、買い残しはないかな?」
「はい。あとは中継地点に選んだ街でも売っていると思うので」
「よし、なら今日はここらで引きあげるとするか」
事前に作成しておいた購入予定リストへ目を通し、漏れがないことを確認すると、ドミニクたちは宿屋へと戻った。
周りは徐々に暗くなり、発光石の埋め込まれた街灯の淡い光が石造りの道を柔らかく照らしている。
今日の楽しい思い出を振り返りながら歩いていると、
「もうやめてくれ!」
どこからともなく男の叫び声。
見ると、街の一部に人だかりができていた。
「な、なんだ?」
「何があったんでしょう……」
不安そうなアンジェと荷台に乗る子どもたち。
「ドミニクよ」
「えぇ……行ってみましょう。みんなはここにいてくれ」
アンジェたちにそこへとどまるよう指示を出したドミニクは、一般の人の目には映らない霊竜エヴァと共に声のした方を目指す。
人込みをかき分けて、ドミニクが見たものは、
「ハハハハハッ!」
高らかに笑い声をあげるのは、銀狐の現リーダー・ベイツ。
その足元では、
「うぅ……」
ドミニクたちに情報を提供したセルジオが血だらけで倒れていた。遠目からでも分かるほど外傷がひどい。返り血を浴びているところを見ると、ベイツにやられたのだろう。
「なんてことを!」
その惨たらしい光景にたまらずドミニクが叫ぶ。すると、その声を耳にしたベイツの視線が向けられる。
「おっ? いたな」
ドミニクを見つけるなり、ベイツの顔がニヤッと醜くゆがむ。
「わざわざ足を運んでくれるとはなぁ。捜す手間が省けたぜ」
どうやらベイツの狙いはドミニクらしい。
「あんたは証人だ」
「証人……?」
「そうだ。こいつが勝手に俺の情報を売りやがったみたいだなぁ……買ったんだろう? あのふたりの情報を」
ベイツは情報をもらう代わりに、ドミニクがセルジオへ報酬を渡したと思っているようだった。
しかし、セルジオはドミニクから金銭はおろか物品さえもらっていない。
「……そんなことのために」
握った拳が怒りで震える。
「なんだ? 何か文句でもあるのか?」
「大アリだ、このクソ野郎!」
ドミニクの怒りが爆発した。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。
ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。
木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。
何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。
そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。
なんか、まぁ、ダラダラと。
で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……?
「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」
「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」
「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」
あ、あのー…?
その場所には何故か特別な事が起こり続けて…?
これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。
※HOT男性向けランキング1位達成
※ファンタジーランキング 24h 3位達成
※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる