28 / 30
第28話 戦いの終わり
しおりを挟む
アイゼルが退いたことで、帝国側の指揮系統は大いに乱れた。
その結果、続々と風の里から引き揚げていく。
周りから殺気が完全に消え去ると、ようやく心落ち着けるようになった。
「まさか……ここでも生き残れるなんてな……」
正直、俺は死を覚悟して帝国軍に向かっていった。
五十年前と同じだ。
あの時も、半ばヤケクソ気味だったが……どういう因果か、こうして生き残っている。不思議なこともあるものだ。
「やったな、ヒューゴ」
「ああ……一時はどうなることかと思ったが」
「まったくだ。これからはあんな勝手な行動は慎めよ」
「えっ?」
「ひとりで突っ走るなという意味だ。――私たちはもう仲間だろう?」
「仲間……」
レイチェルがさりげなく発したその言葉に、俺はハッとなる。
失ったと思っていた仲間が、この五十年後の世界で再びできた。同じ志を持ち、強大な敵にも必死で立ち向かおうとする強い心を持った仲間が。
「? どうかしたのか?」
「いや、なんでもないよ」
思わず感情が高ぶって、涙が出そうになった。
――五十年前には果たせなかったこと。
この世界でなら、できるかもしれない。
その時だった。
「デューイ! レイチェル!」
俺たちの名前を叫びながら近づいてくるのは――この場にいるはずのない人物だった。
「!? メイジー!?」
かつて仕えた、シルヴァスト王国王家の血を引き、反乱軍の象徴的な存在となっているメイジーであった。彼女は俺たちが風の里へ侵攻する帝国軍を食い止めるため出撃した際、拠点に残っていたはずだが。
「どうしてここに……?」
「実は、みなさんが風の里に向かった後……なんだかとても嫌な予感がしたので拠点にいたみんなと一緒にこちらへ移動して来ていたんです」
「えっ?」
い、嫌な予感って……いくらなんでも、そんな根拠のないこと――
「そんな根拠のないことで大規模な動きを見せるのはおかしい――とでも思っているのだろう?」
「うっ……」
あっさりとレイチェルに思考を読まれた。……でも、今の流れならそう思わない方がおかしいよなぁ。
「デューイの気持ちは分かる。私がおまえの立場でも、そのような話を聞かされたらそう思うのが自然の流れだ。――しかし、メイジー様の予感は違う。それはもう未来予知と言っても過言ではない力だ」
「そ、そんな力が……」
「あの時はまだあなたに力のことを告げるのは時期尚早と思って黙っていたんです」
それは賢明な判断だし、俺がそちら側にいたとしてもきっと同じことをさせただろう。指示を出したのはハリスさんあたりかな。
「――って、そうだ。ハリスさんたちは?」
「無事ですよ。まもなくこちらに合流するはずです」
よかった。
彼らも無事なようだ。
とりあえず、最悪の事態を回避できたが……これからのことを考えると、反乱軍にはもっとちゃんとした拠点地が必要になるだろう。
そこで、俺はみんなと合流出来たらある提案をしようと考えている。
この先、俺が彼らの「仲間」で居続けるための大事な提案だ。
その準備が整うまでは……束の間の穏やかな時間を満喫するとしよう。
その結果、続々と風の里から引き揚げていく。
周りから殺気が完全に消え去ると、ようやく心落ち着けるようになった。
「まさか……ここでも生き残れるなんてな……」
正直、俺は死を覚悟して帝国軍に向かっていった。
五十年前と同じだ。
あの時も、半ばヤケクソ気味だったが……どういう因果か、こうして生き残っている。不思議なこともあるものだ。
「やったな、ヒューゴ」
「ああ……一時はどうなることかと思ったが」
「まったくだ。これからはあんな勝手な行動は慎めよ」
「えっ?」
「ひとりで突っ走るなという意味だ。――私たちはもう仲間だろう?」
「仲間……」
レイチェルがさりげなく発したその言葉に、俺はハッとなる。
失ったと思っていた仲間が、この五十年後の世界で再びできた。同じ志を持ち、強大な敵にも必死で立ち向かおうとする強い心を持った仲間が。
「? どうかしたのか?」
「いや、なんでもないよ」
思わず感情が高ぶって、涙が出そうになった。
――五十年前には果たせなかったこと。
この世界でなら、できるかもしれない。
その時だった。
「デューイ! レイチェル!」
俺たちの名前を叫びながら近づいてくるのは――この場にいるはずのない人物だった。
「!? メイジー!?」
かつて仕えた、シルヴァスト王国王家の血を引き、反乱軍の象徴的な存在となっているメイジーであった。彼女は俺たちが風の里へ侵攻する帝国軍を食い止めるため出撃した際、拠点に残っていたはずだが。
「どうしてここに……?」
「実は、みなさんが風の里に向かった後……なんだかとても嫌な予感がしたので拠点にいたみんなと一緒にこちらへ移動して来ていたんです」
「えっ?」
い、嫌な予感って……いくらなんでも、そんな根拠のないこと――
「そんな根拠のないことで大規模な動きを見せるのはおかしい――とでも思っているのだろう?」
「うっ……」
あっさりとレイチェルに思考を読まれた。……でも、今の流れならそう思わない方がおかしいよなぁ。
「デューイの気持ちは分かる。私がおまえの立場でも、そのような話を聞かされたらそう思うのが自然の流れだ。――しかし、メイジー様の予感は違う。それはもう未来予知と言っても過言ではない力だ」
「そ、そんな力が……」
「あの時はまだあなたに力のことを告げるのは時期尚早と思って黙っていたんです」
それは賢明な判断だし、俺がそちら側にいたとしてもきっと同じことをさせただろう。指示を出したのはハリスさんあたりかな。
「――って、そうだ。ハリスさんたちは?」
「無事ですよ。まもなくこちらに合流するはずです」
よかった。
彼らも無事なようだ。
とりあえず、最悪の事態を回避できたが……これからのことを考えると、反乱軍にはもっとちゃんとした拠点地が必要になるだろう。
そこで、俺はみんなと合流出来たらある提案をしようと考えている。
この先、俺が彼らの「仲間」で居続けるための大事な提案だ。
その準備が整うまでは……束の間の穏やかな時間を満喫するとしよう。
2
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる