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第25話 激突
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風竜の力がうずいている。
全身を駆け巡り、目の前の敵を倒せと鼓舞している。
炎が燃え広がる森の中で、俺は風竜の魂が持つ力――その本質に触れることができたような気がした。
「はっ! 遅ぇんだよ! 今さら何をしようが変わりっこねぇ!」
こちらの変化に一瞬動揺の色を見せたアイゼルであったが、すぐに調子を取り戻す。
――ヤツの言うことも一理ある。
確かに俺は強大な風の魔力を手に入れた。
しかし、それを使いこなせるかは別問題だ。
風竜の魂があえて解放しなかったという可能性もある。
もしそうなら……この力は宝の持ち腐れ。
現状を打破する手段とはならない。
「……やってやる」
静かに決意を口にする。
本当に、これが俺にとって切り札なのだ。
頼む。
風竜よ――俺に力を貸してくれ。
「はああああああああああ!」
俺は語りかけるように魔力を練る。
すると、体中から溢れ出た魔力は強風となって吹き荒れた。
「きゃっ!?」
その風に足元を取られそうになったレイチェルを抱き寄せる。最初は俺の行動が予想外だったらしく、「えっ!? えっ!?」とひどく取り乱していたが、俺としてはこっちの方が気兼ねなく風の力を扱える。
「少しの間、我慢してくれ」
「あ、ああ」
それだけ告げて、俺は右腕からありったけの風を巻き起こす。
やがて、風はその威力を強めていき、辺りに広がりつつある炎さえも飲み込んでいった。
「なんだと!?」
アイゼルが叫ぶ。
さっきまで、遥か格下と見下していた俺に、自慢の炎が消されていくのだから無理もない。
「な、なんでそんなことができる!? まともに力を操れなかったはずが!?」
「たぶん、操るって感覚が間違いなんじゃないかと思う」
「!? ど、どういう意味だ!?」
「教えてやる義理はないね」
帝国に味方し、この風の里の名残さえも消滅させようとしていた連中だ。そんなヤツらに強くなるヒントを与えるはずがない。
「今度は――防げるか?」
勢いのまま、俺は先ほどと同じ風の刃を放つ。
――が、威力に関しては段違いだ。
風竜の力を解放させつつある今では、さすがのヤツでも完璧に防ぎきることはできない。
「ちっ!?」
それを察したアイゼルは炎でかき消すマネはせず、普通に回避行動を取る。
――その動きは予測済みだ。
「何っ!?」
風の刃を放つと同時に、俺はヤツがかわしてくると想定した場所へ先回りしていた。まったく想定していなかった俺の行動に、アイゼルは無防備な姿勢をさらしている。
「うおおおおおおおおおっ!」
その隙をつき、俺はアイゼルの顔面をぶん殴った。
「ぐはっ!?」
初めて与えることができたダメージ。
とはいえ、ただ殴っただけなので、アイゼルはすぐに持ち直して構え直す。口の端を切ったらしく、そこからわずかに出血していた。
ダメージとしては軽微――けど、里の人たちの想いを込めた一撃は、確実に届けられた。
さあ、ここからが本番だ。
全身を駆け巡り、目の前の敵を倒せと鼓舞している。
炎が燃え広がる森の中で、俺は風竜の魂が持つ力――その本質に触れることができたような気がした。
「はっ! 遅ぇんだよ! 今さら何をしようが変わりっこねぇ!」
こちらの変化に一瞬動揺の色を見せたアイゼルであったが、すぐに調子を取り戻す。
――ヤツの言うことも一理ある。
確かに俺は強大な風の魔力を手に入れた。
しかし、それを使いこなせるかは別問題だ。
風竜の魂があえて解放しなかったという可能性もある。
もしそうなら……この力は宝の持ち腐れ。
現状を打破する手段とはならない。
「……やってやる」
静かに決意を口にする。
本当に、これが俺にとって切り札なのだ。
頼む。
風竜よ――俺に力を貸してくれ。
「はああああああああああ!」
俺は語りかけるように魔力を練る。
すると、体中から溢れ出た魔力は強風となって吹き荒れた。
「きゃっ!?」
その風に足元を取られそうになったレイチェルを抱き寄せる。最初は俺の行動が予想外だったらしく、「えっ!? えっ!?」とひどく取り乱していたが、俺としてはこっちの方が気兼ねなく風の力を扱える。
「少しの間、我慢してくれ」
「あ、ああ」
それだけ告げて、俺は右腕からありったけの風を巻き起こす。
やがて、風はその威力を強めていき、辺りに広がりつつある炎さえも飲み込んでいった。
「なんだと!?」
アイゼルが叫ぶ。
さっきまで、遥か格下と見下していた俺に、自慢の炎が消されていくのだから無理もない。
「な、なんでそんなことができる!? まともに力を操れなかったはずが!?」
「たぶん、操るって感覚が間違いなんじゃないかと思う」
「!? ど、どういう意味だ!?」
「教えてやる義理はないね」
帝国に味方し、この風の里の名残さえも消滅させようとしていた連中だ。そんなヤツらに強くなるヒントを与えるはずがない。
「今度は――防げるか?」
勢いのまま、俺は先ほどと同じ風の刃を放つ。
――が、威力に関しては段違いだ。
風竜の力を解放させつつある今では、さすがのヤツでも完璧に防ぎきることはできない。
「ちっ!?」
それを察したアイゼルは炎でかき消すマネはせず、普通に回避行動を取る。
――その動きは予測済みだ。
「何っ!?」
風の刃を放つと同時に、俺はヤツがかわしてくると想定した場所へ先回りしていた。まったく想定していなかった俺の行動に、アイゼルは無防備な姿勢をさらしている。
「うおおおおおおおおおっ!」
その隙をつき、俺はアイゼルの顔面をぶん殴った。
「ぐはっ!?」
初めて与えることができたダメージ。
とはいえ、ただ殴っただけなので、アイゼルはすぐに持ち直して構え直す。口の端を切ったらしく、そこからわずかに出血していた。
ダメージとしては軽微――けど、里の人たちの想いを込めた一撃は、確実に届けられた。
さあ、ここからが本番だ。
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