19 / 30
第19話 決別
しおりを挟む
火喰いの力は相当なものだ。
同じ聖竜のひとつである風竜の力を宿す俺には、それがよく分かる。
それに……互いの竜が出会いを求めているような気がしてならない。
俺たちは導かれる運命にある。
ハリスさんたちには俺の目的――火喰いへ会いに行くという意志を告げた。
「あ、会いに行くだって?」
「ダメだ! 危険すぎる!」
真っ先に反対のしたのはレイチェルだった。
「ヤツは敵の最大戦力だ! 周りには配下の者も大勢いる! そんな中にひとりで突っ込んでいくなんて自殺行為だ!」
「どのみち本来なら失っていたはずの命だ。それに……これ以上、連中にこの里を壊されたくない」
「!? デュ、デューイ……」
それは本心だ。
本当ならあの時……俺は帝国の手練れたちに殺されていたはず。それがたまたま運よく生き残っただけだ。
右腕に宿る風竜の力。
この力を使って、風の里が破壊されるのを防ぐ。
たとえもうその存在が消滅していたとしても、ここは俺にとって大切な場所だ。めちゃくちゃにされてたまるか。
「では、俺が時間を稼いでいる間に拠点へ戻ってください」
「ま、待て!」
俺はハリスさんの制止を振り切って走りだす。
そういえば、メイジーにはお別れの挨拶ができなかったな。
シルヴァスト王家の血を引く彼女は、俺たちの時代の国王陛下の子孫――五十年前に守れなかった忠義を果たすためにも、俺が帝国の目を引いておかなくては。
燃え盛る炎が、森の木々を焼いていく。
連中は、風竜の魂が眠る場所を探し当てるために、随分と乱暴な手を打ってきた。
それにしても……相手は炎使いか。
こちらが水竜の力だったなら、圧倒的に優位だったかもしれないのに。
そんなことを考えていると、帝国兵を発見。
しかもかなりの数だ。
どうやら、炎上する森の様子を離れた位置から見張っているらしい。
「むっ!? 貴様、何者だ!?」
俺がヤツらの前に姿を見せると、ひと際体格の良い男がこちらを指さして叫ぶ。
「あんたたちが探し求めている存在だ」
それだけ告げると、俺は風竜の力を解放させる。
直後、暴風が巻き起こり、多くの帝国兵たちを吹き飛ばしていった。
「こ、こいつ!? まさか本当に――風竜の力を宿しているのか!?」
「このタトゥーが証明になるだろ?」
俺は右腕に刻まれたタトゥーを兵士たちに見せる。
すると、全員の顔色がガラリと変わった。
「バ、バカな……アイゼル様と同じタトゥーが……」
アイゼル?
……そうか。
それが火喰いの本当の名前か。
「あんたらのリーダーはどこにいる? この場にいないならすぐに伝えて呼んで来い。――風竜の魂を宿した者が来た、と」
「な、なめやがって!」
かなりの数を吹き飛ばしたつもりでいたが、まだ帝国兵は少なく見積もっても百人以上はこの場にいる。数の勝負ではこちらが圧倒的に不利だ。
「いくら風竜の魂を宿そうとも、これだけの数を同時に相手できるか?」
「試してみるさ」
右腕のタトゥーは、さらにその輝きを増していく。
ここでより派手な騒動を起こせば――嫌でもヤツは顔を出すはず。
俺と同じ聖竜の力を持つ男。
火喰いのアイゼルが。
同じ聖竜のひとつである風竜の力を宿す俺には、それがよく分かる。
それに……互いの竜が出会いを求めているような気がしてならない。
俺たちは導かれる運命にある。
ハリスさんたちには俺の目的――火喰いへ会いに行くという意志を告げた。
「あ、会いに行くだって?」
「ダメだ! 危険すぎる!」
真っ先に反対のしたのはレイチェルだった。
「ヤツは敵の最大戦力だ! 周りには配下の者も大勢いる! そんな中にひとりで突っ込んでいくなんて自殺行為だ!」
「どのみち本来なら失っていたはずの命だ。それに……これ以上、連中にこの里を壊されたくない」
「!? デュ、デューイ……」
それは本心だ。
本当ならあの時……俺は帝国の手練れたちに殺されていたはず。それがたまたま運よく生き残っただけだ。
右腕に宿る風竜の力。
この力を使って、風の里が破壊されるのを防ぐ。
たとえもうその存在が消滅していたとしても、ここは俺にとって大切な場所だ。めちゃくちゃにされてたまるか。
「では、俺が時間を稼いでいる間に拠点へ戻ってください」
「ま、待て!」
俺はハリスさんの制止を振り切って走りだす。
そういえば、メイジーにはお別れの挨拶ができなかったな。
シルヴァスト王家の血を引く彼女は、俺たちの時代の国王陛下の子孫――五十年前に守れなかった忠義を果たすためにも、俺が帝国の目を引いておかなくては。
燃え盛る炎が、森の木々を焼いていく。
連中は、風竜の魂が眠る場所を探し当てるために、随分と乱暴な手を打ってきた。
それにしても……相手は炎使いか。
こちらが水竜の力だったなら、圧倒的に優位だったかもしれないのに。
そんなことを考えていると、帝国兵を発見。
しかもかなりの数だ。
どうやら、炎上する森の様子を離れた位置から見張っているらしい。
「むっ!? 貴様、何者だ!?」
俺がヤツらの前に姿を見せると、ひと際体格の良い男がこちらを指さして叫ぶ。
「あんたたちが探し求めている存在だ」
それだけ告げると、俺は風竜の力を解放させる。
直後、暴風が巻き起こり、多くの帝国兵たちを吹き飛ばしていった。
「こ、こいつ!? まさか本当に――風竜の力を宿しているのか!?」
「このタトゥーが証明になるだろ?」
俺は右腕に刻まれたタトゥーを兵士たちに見せる。
すると、全員の顔色がガラリと変わった。
「バ、バカな……アイゼル様と同じタトゥーが……」
アイゼル?
……そうか。
それが火喰いの本当の名前か。
「あんたらのリーダーはどこにいる? この場にいないならすぐに伝えて呼んで来い。――風竜の魂を宿した者が来た、と」
「な、なめやがって!」
かなりの数を吹き飛ばしたつもりでいたが、まだ帝国兵は少なく見積もっても百人以上はこの場にいる。数の勝負ではこちらが圧倒的に不利だ。
「いくら風竜の魂を宿そうとも、これだけの数を同時に相手できるか?」
「試してみるさ」
右腕のタトゥーは、さらにその輝きを増していく。
ここでより派手な騒動を起こせば――嫌でもヤツは顔を出すはず。
俺と同じ聖竜の力を持つ男。
火喰いのアイゼルが。
2
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)


調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる