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第17話 次の行動は?
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師匠に裏切られたレイチェルの気持ち……俺には痛いほど分かる。
もし、五十年前に起きた風の里の奇襲に師匠がかかわっていたとするなら……正直、立ち直れないかもしれない。
そんな事態に、レイチェルは直面している。
心境は手に取るように分かる――が、だからといってここに長居するわけにはいかない。さっき逃げだした連中が、仲間を連れて戻ってくるかもしれないからな。
「立てるか、レイチェル」
「…………」
ダメ、か。
さっきはなんとか返事をしてくれていたが、とうとう無言になってしまった。
状況は悪い方向へ進んでいる。
反乱軍の中心人物でもあったギリアムが裏切り者だとしたら、こちらの情報は細部まで筒抜けになっているだろう。もしかしたら、拠点地まで特定されていて、下手をしたら向こうも総攻撃を受けているなんて……
「なんとかしないと……」
とにかく、まずはハリスさんとの合流を最優先させよう。
レイチェルは動けそうにないから――仕方ない。
「少し我慢してくれよ」
俺はそう呟いて、レイチェルを抱き上げた。
これで行くしかないか。
と、その時、
「!? な、なんだ!? どういう状況なんだ!?」
レイチェルが突然正気に戻った。
「わっ!? ど、どうしたんだ!?」
「それはこっちのセリフだ! どうしておまえが私をだ、だだ……」
それっきり、レイチェルは話さなくなってしまった。耳まで真っ赤になっているけど……やっぱり恥ずかしかったのか。
でもまあ、正気になったのなら好都合。
これで逃亡に専念できる。
「レイチェル、ここは一旦退くぞ。こちらの動きが向こうに筒抜けになっていることをハリスさんたちに伝えないと」
「ああ、そうだな」
レイチェルの瞳は使命感に燃えていた。
少し時間が経ったことで気持ちが落ち着いたのか、完全とはいかないまでも、現状を把握して気持ちを切り替えることができたようだ。
反乱軍の中に裏切り者がいたことを知るのは俺たちのみ。
いち早くこの情報を持って帰ることが、これからの反乱軍を大きく左右する。
「ヤツらに気づかれないよう、なるべく音を立てないように行こう」
「そうだな」
調子を取り戻したレイチェルとともに、ハリスさんたちのもとへと急いだ。
道中、帝国の魔の手はすぐそこまで迫っていた。
「思った以上に包囲網が狭まっているな」
レイチェルの声から焦りの色がうかがえる。
だが、俺はそれを逆手に取る作戦を考えていた。
「ヤツらが俺たちの行動を先読みしているというなら、それと逆の行動を取ればいいんじゃないか?」
「! な、なるほど……それならヤツらの裏をかける」
俺たちは情報が漏れていることを逆に利用し、この窮地から抜け出す策を思いつく。――ただ、俺としてはヤツらをこのまま放置しておくわけにはいかなかった。
特に注意をすべきは、未だに姿の見えない火喰いの存在。
そいつが俺と同じ聖竜の力を宿しているなら、このまま素直に終わるわけがない。
もしかしたら、もうすぐそこまで迫っているかもしれないのだ。
ここからは、さらに気を引き締めて行動しなければ。
もし、五十年前に起きた風の里の奇襲に師匠がかかわっていたとするなら……正直、立ち直れないかもしれない。
そんな事態に、レイチェルは直面している。
心境は手に取るように分かる――が、だからといってここに長居するわけにはいかない。さっき逃げだした連中が、仲間を連れて戻ってくるかもしれないからな。
「立てるか、レイチェル」
「…………」
ダメ、か。
さっきはなんとか返事をしてくれていたが、とうとう無言になってしまった。
状況は悪い方向へ進んでいる。
反乱軍の中心人物でもあったギリアムが裏切り者だとしたら、こちらの情報は細部まで筒抜けになっているだろう。もしかしたら、拠点地まで特定されていて、下手をしたら向こうも総攻撃を受けているなんて……
「なんとかしないと……」
とにかく、まずはハリスさんとの合流を最優先させよう。
レイチェルは動けそうにないから――仕方ない。
「少し我慢してくれよ」
俺はそう呟いて、レイチェルを抱き上げた。
これで行くしかないか。
と、その時、
「!? な、なんだ!? どういう状況なんだ!?」
レイチェルが突然正気に戻った。
「わっ!? ど、どうしたんだ!?」
「それはこっちのセリフだ! どうしておまえが私をだ、だだ……」
それっきり、レイチェルは話さなくなってしまった。耳まで真っ赤になっているけど……やっぱり恥ずかしかったのか。
でもまあ、正気になったのなら好都合。
これで逃亡に専念できる。
「レイチェル、ここは一旦退くぞ。こちらの動きが向こうに筒抜けになっていることをハリスさんたちに伝えないと」
「ああ、そうだな」
レイチェルの瞳は使命感に燃えていた。
少し時間が経ったことで気持ちが落ち着いたのか、完全とはいかないまでも、現状を把握して気持ちを切り替えることができたようだ。
反乱軍の中に裏切り者がいたことを知るのは俺たちのみ。
いち早くこの情報を持って帰ることが、これからの反乱軍を大きく左右する。
「ヤツらに気づかれないよう、なるべく音を立てないように行こう」
「そうだな」
調子を取り戻したレイチェルとともに、ハリスさんたちのもとへと急いだ。
道中、帝国の魔の手はすぐそこまで迫っていた。
「思った以上に包囲網が狭まっているな」
レイチェルの声から焦りの色がうかがえる。
だが、俺はそれを逆手に取る作戦を考えていた。
「ヤツらが俺たちの行動を先読みしているというなら、それと逆の行動を取ればいいんじゃないか?」
「! な、なるほど……それならヤツらの裏をかける」
俺たちは情報が漏れていることを逆に利用し、この窮地から抜け出す策を思いつく。――ただ、俺としてはヤツらをこのまま放置しておくわけにはいかなかった。
特に注意をすべきは、未だに姿の見えない火喰いの存在。
そいつが俺と同じ聖竜の力を宿しているなら、このまま素直に終わるわけがない。
もしかしたら、もうすぐそこまで迫っているかもしれないのだ。
ここからは、さらに気を引き締めて行動しなければ。
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