引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい

鈴木竜一

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第214話 すべてが大きく動きだす

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 ラウシュ島へと戻ってきた俺たちは早速みんなを集めて今後に向けての話し合いを行おうとした――が、それよりも先に感動の再会をしておかないとな。

「ママ!」
「ラシェル!」

 レティシアは娘のラシェルと抱き合い、喜びを噛みしめていた。これには厳つい顔をした反乱軍の兵士たちも思わず涙してしまう。
 
 俺としてはもちろん感動もしたが、それと同じくらい新鮮な気持ちでふたりを見つめていた。
 頭の中にあるレティシアのイメージは、どうしても騎士団でともに戦っていた時で止まっている。あの頃の彼女からは想像できないというか……ちゃんと母親をやっているんだなという感想が真っ先に飛び出した。

「おかえりなさい、先生」

 一方、俺たちはパトリシアと島に残っていた黄金世代メンバーたちに出迎えられる。

「随分と大所帯になりましたわね」
「何があったのかは……まっ、言わなくても大体察しがつきますわな」
「そうね。あの方たちはきっと以前お話しされていたレゾンの反乱軍ですね?」
「正解だ。さすがだな、エリーゼ」
「いやいや先生! 俺だって分かってましたよ!」
「…………」
「くっ! エリーゼ……自分だけオーリン先生に褒められたからって無言のドヤ顔はやめろぉ!」
「はいはい。おふざけはその辺にして、船の積み荷をおろしにいきますわよ」
 
 エリーゼとロレッタをジャクリーヌが諭すという珍しい光景が見られたな。
 
 三人からは俺たちが留守の間に何か起きていないかの報告を受けつつ、今後のための話し合いにも参加してもらう。

 あとはオズボーンさんにも同席してもらいたい。

 彼は数少ないレゾン側の人間。
 もしかしたら、俺たちがまだ知らない事実を抱えているかもしれないし。

 これからの段取りを考えていると、誰かが近づいてくる気配を感じた。
 振り返ると、そこには――

「イム!?」

 少し表情が暗いイムが立っていた。

「もう体の方は大丈夫なのか?」
「うん。これから島の一大事だっていうのに、のんびりと休んではいられないよ」

 気丈にも笑顔を見せるイムだが、無理をしているのは明白。
 ……だが、その瞳には並々ならぬ決意の色が浮かんでいた。

「先生……あたし、決めたよ」
「決めた? 何を」
「もう一度あの遺跡に行く。そして、封印されている部屋へ入ろうと思う」

 まったく予期せぬイムの提案に、俺はすぐに言葉を返せなかった。
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