引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい

鈴木竜一

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第207話 第三勢力

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 ブリッツとウェンデルの活躍により、連合軍は大混乱に陥った。
 数万を超える軍勢がたったふたりの若者に翻弄されるとは……まあ、どちらもたったひとりで高い戦闘力を有しているため今さら驚きはしないし、これは容易に予想できた結果だ。

 そして、ふたりの快進撃は後方で控えているエストラーダ王国騎士団にも大きな勇気を与える。

「若者ふたりが道を切り拓いてくれたぞ! 我らもおくれを取るな!」
「「「「「おおおおおおおおおお!!!!」」」」」

 勇ましい雄叫びをあげながら、グローバーを先頭に突撃していく騎士たち。

 一方の連合軍は士気が大幅に下がっていた。

 何せ、たったひとりの若い騎士に数万の軍勢が軽々とあしらわれているのだ。向こうからすればブリッツが強大な力を秘めた魔王のように感じられるだろう。

 そこへさらに味方であるブリッツの戦いぶりに触発されたエストラーダ騎士団が雪崩れ込んできて一気に形勢が俺たちの方へと傾く。

 圧倒的な兵力差がありながら、質自体は俺たちの方が数段上。
 それが如実に表れた。

 ――とはいえ、まだ楽観視はできない。

 数の差から、早期決着は望めないだろう。
 それに敵としてもこのまま引き下がるわけにはいかない。

 自軍を鼓舞してこのまま押し切ろうとするはず。

 理想としてはこのまま怖気づいて退却をしてもらいたいところだが……さすがにそううまくはいかないか。

 となれば、ここからは俺も加勢しなくては。
 そう思って魔力を高め始めた時、どこからともなくこちらのものとはまったく別の雄叫びが聞こえてきた。

「な、なんだ?」

 まさか敵の別動隊か?
 事前の調査ではそのような動きを捉えられなかったが、もしかしたら巧妙に隠していたのかもしれない。

 そちらも相手にしなくてはならないと苦戦を覚悟した時、迫りくる新たな軍勢が明らかとなる。

「えっ?」

 彼らを見た第一印象は戸惑いだった。
 なぜなら、馬に乗ってこちらへやってくる兵たちはみんな不揃いの格好をしており、正規の組織による集団ではなさそうだからだ。

 一体……彼らの正体は何なんだ?

 困惑していると、こちらへ接近してくるひとりの兵士が。
 赤く長い髪を風になびかせながらやってきたその女性には見覚えがあった。

「久しぶりね、オーリン。元気そうで何よりだわ」

 ニコッと微笑んだ彼女は――

「レティシア!?」

ラシェルの母親で、今は反乱軍を率いているレティシアであった。

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