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第202話 迫る決戦の時
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夜が明けた。
しかし、まだイムは昨日の衝撃を整理しきれていないようだ。
これについては何も言及しない。
難しいが、イム自身の足で立ち上がらなくてはならないだろうからな。俺たちは静かに見守るしかない。
だが、そうも言ってられない事態が迫りつつある。
ついにギアディスとレゾンの連合軍が標的をこのエストラーダ王国に絞り込んできた。
ギアディスはともかく、レゾンの狙いはこのラウシュ島に眠る魔法兵器。恐らく、ギアディス側はうまく乗せられているだけだろう。前線の指揮官にカイルを置くくらい現実が見えていない様子から察するに、ローズ学園長の影響力は騎士団や魔法兵団にまで及んでいるようだ。
一方、レゾン側は政治を裏から支配する元老院を中心に、この島に眠る魔法兵器を手に入れて世界のすべてを手に入れようと画策している。
これはオズボーンさんからの情報であり、そのために魔法兵器の封印を解く鍵となり得るイムを――いや、行方不明となっていたフィオーナ姫を捜しているのだという。
グローバーからの情報で、すでにエストラーダ周辺に各国の軍勢が集結しつつあるというが……まあ、直接戦ったところでこちらに勝てるとも思えない。
なぜなら――エストラーダには黄金世代がいる。
正直、ブリッツかジャクリーヌのどちからひとりがいればそれだけで事足りてしまうほど戦力差はある。それにエリーゼが治癒魔法と同じくらい得意とする防御魔法でこの島全体を守れば上陸も困難になるだろう。それに加えて魔道具師のウェンデルと凄腕冒険者であるロレッタも加われば敵なしだ。
さらに、ロレッタを慕って集まった冒険者たちも島の防衛に協力をしてくれることになった。
まさに盤石の布陣。
ただ、島の防衛はここから少し戦力を割いて大陸側にあるエストラーダ王都の防衛にも力を注がなくてはいけない。
こちらはあくまでも海上決戦がメインになるだろう。
そこで、俺は臨機応変に対応できる魔法使いのジャクリーヌを島の防衛の最高指揮官に命じた。
「柄ではありませんが、先生にそう言われてはやるしかありませんわね」
口ではそういうものの、彼女の咄嗟の判断力は非常に優秀だし、勘も働く。ひとりでワイバーンを倒せるだけの力もあるし、これ以上の適任者はいなかった。
他に防御魔法で島を守っているエリーゼと、冒険者たちのまとめ役としてロレッタが島に残ることに。それと、パトリシアも島組として残り、ジャクリーヌの右腕として働いてもらう。
俺とブリッツとウェンデルは、大陸へと渡ってグローバーと合流。
それからもっとも戦力が集中しているという東部国境付近へと移動する予定だ。
というわけで、俺たち三人は島を出ようと準備を進めていたが――その時、通信用の水晶からグローバーの声が。
『先生、少しよろしいでしょうか。緊急の用件がありまして』
「緊急の用件? どうしたんだ?」
『実は、城にどうしても先生に会いたいという人物が来ているんです』
「何っ?」
この状況で俺に会いたいという人物……一体何者なんだ?
しかし、まだイムは昨日の衝撃を整理しきれていないようだ。
これについては何も言及しない。
難しいが、イム自身の足で立ち上がらなくてはならないだろうからな。俺たちは静かに見守るしかない。
だが、そうも言ってられない事態が迫りつつある。
ついにギアディスとレゾンの連合軍が標的をこのエストラーダ王国に絞り込んできた。
ギアディスはともかく、レゾンの狙いはこのラウシュ島に眠る魔法兵器。恐らく、ギアディス側はうまく乗せられているだけだろう。前線の指揮官にカイルを置くくらい現実が見えていない様子から察するに、ローズ学園長の影響力は騎士団や魔法兵団にまで及んでいるようだ。
一方、レゾン側は政治を裏から支配する元老院を中心に、この島に眠る魔法兵器を手に入れて世界のすべてを手に入れようと画策している。
これはオズボーンさんからの情報であり、そのために魔法兵器の封印を解く鍵となり得るイムを――いや、行方不明となっていたフィオーナ姫を捜しているのだという。
グローバーからの情報で、すでにエストラーダ周辺に各国の軍勢が集結しつつあるというが……まあ、直接戦ったところでこちらに勝てるとも思えない。
なぜなら――エストラーダには黄金世代がいる。
正直、ブリッツかジャクリーヌのどちからひとりがいればそれだけで事足りてしまうほど戦力差はある。それにエリーゼが治癒魔法と同じくらい得意とする防御魔法でこの島全体を守れば上陸も困難になるだろう。それに加えて魔道具師のウェンデルと凄腕冒険者であるロレッタも加われば敵なしだ。
さらに、ロレッタを慕って集まった冒険者たちも島の防衛に協力をしてくれることになった。
まさに盤石の布陣。
ただ、島の防衛はここから少し戦力を割いて大陸側にあるエストラーダ王都の防衛にも力を注がなくてはいけない。
こちらはあくまでも海上決戦がメインになるだろう。
そこで、俺は臨機応変に対応できる魔法使いのジャクリーヌを島の防衛の最高指揮官に命じた。
「柄ではありませんが、先生にそう言われてはやるしかありませんわね」
口ではそういうものの、彼女の咄嗟の判断力は非常に優秀だし、勘も働く。ひとりでワイバーンを倒せるだけの力もあるし、これ以上の適任者はいなかった。
他に防御魔法で島を守っているエリーゼと、冒険者たちのまとめ役としてロレッタが島に残ることに。それと、パトリシアも島組として残り、ジャクリーヌの右腕として働いてもらう。
俺とブリッツとウェンデルは、大陸へと渡ってグローバーと合流。
それからもっとも戦力が集中しているという東部国境付近へと移動する予定だ。
というわけで、俺たち三人は島を出ようと準備を進めていたが――その時、通信用の水晶からグローバーの声が。
『先生、少しよろしいでしょうか。緊急の用件がありまして』
「緊急の用件? どうしたんだ?」
『実は、城にどうしても先生に会いたいという人物が来ているんです』
「何っ?」
この状況で俺に会いたいという人物……一体何者なんだ?
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