67 / 96
連載
第201話 来訪者
しおりを挟む
イムにはまだ落ち着くだけの時間が必要だ。
静かに見守るとして――問題はこの島に上陸してきた者の存在。これがもしレゾンやギアディスの先遣隊とかなら……あまり考えたくはないが、可能性としてはまったくのゼロではない。
俺は念のため、ジャクリーヌとウェンデルのふたりを拠点に待機させておく。
こちらがおとりで、本命は別から攻め込んでくる可能性も考慮しての判断だった。
俺とブリッツとエリーゼ、そしてロレッタの四人で港へと向かう。
月明かりだけが照らすその場所には、ふたつの人影が。
細心の注意を払って近づいていくが……どうやらこちらの不安は杞憂に終わったようだ。
「っ! グローバー!? それにマリン所長も!?」
夜の港にいたのは、エストラーダ王国騎士団に所属する元教え子のグローバーと、そのエストラーダ王都で造船所を営むマリン所長だった。
「どうしてこんな時間に島へ?」
「今回の件は……どうしても先生に直接お話をしなくてはいけないと思いまして」
「仕事終わりに呼びだされた時は何事かと思ったけど、かなり状況はよくないみたいだからあたい自らが船を操縦して連れてきたのさ」
「よくない状況?」
レゾンやギアディスの兵士ではないことに安堵したが、どうもそれはまだ早計だったようだな。
とりあえず、俺たちは話し合いの場所を拠点の会議室へと移すことにした。
すでに時間は深夜となったが、それでもグローバーがこの島へ足を運んだ理由――それは想像もしていなかった事態についての説明だった。
「実は……エストラーダと隣国の国境近くにギアディスとレゾンの連合軍が集結しつつあります。おまけに海上にも戦闘用の船を何隻がこちらへ向けて出航させたとの情報を入手しました」
「なんだって!?」
どうやら、向こうはもうヤル気満々って感じだな。
エストラーダも対策を講じているようだが、さすがに人員不足は否めないらしい。
ならば、せめて――
「海の方の守りはこちらで何とかしよう。ヤツらの狙いはラウシュ島に眠る魔法兵器だろうからな」
もうなりふり構ってはいられないと、総力戦を仕掛けるつもりか。
それなら、こちらも守るモノのために抵抗する。
「ならば我ら騎士団は国境付近に戦力を集中させます!」
「うちの漁業関係者も海を荒らされたとなったら黙っちゃいないからね。今のうちにいろいろと準備しておいた方がよさそうね」
グローバーもマリン所長もヤル気十分だな。
「先生、この島でダンジョン探索をしている冒険者にも声をかけておきますよ。あいつらすっかりこの島が気に入ったみたいですし、ギアディスの冒険者を軽視する政策には前々から鬱憤がたまっていたみたいなので、協力をしてくれるかと」
「頼めるか、ロレッタ」
「任せてください!」
たくさんの人の協力で、ラウシュ島を守る。
この戦いが終わった時が……本当の意味で俺の引退生活がスタートするのかもしれないな。
静かに見守るとして――問題はこの島に上陸してきた者の存在。これがもしレゾンやギアディスの先遣隊とかなら……あまり考えたくはないが、可能性としてはまったくのゼロではない。
俺は念のため、ジャクリーヌとウェンデルのふたりを拠点に待機させておく。
こちらがおとりで、本命は別から攻め込んでくる可能性も考慮しての判断だった。
俺とブリッツとエリーゼ、そしてロレッタの四人で港へと向かう。
月明かりだけが照らすその場所には、ふたつの人影が。
細心の注意を払って近づいていくが……どうやらこちらの不安は杞憂に終わったようだ。
「っ! グローバー!? それにマリン所長も!?」
夜の港にいたのは、エストラーダ王国騎士団に所属する元教え子のグローバーと、そのエストラーダ王都で造船所を営むマリン所長だった。
「どうしてこんな時間に島へ?」
「今回の件は……どうしても先生に直接お話をしなくてはいけないと思いまして」
「仕事終わりに呼びだされた時は何事かと思ったけど、かなり状況はよくないみたいだからあたい自らが船を操縦して連れてきたのさ」
「よくない状況?」
レゾンやギアディスの兵士ではないことに安堵したが、どうもそれはまだ早計だったようだな。
とりあえず、俺たちは話し合いの場所を拠点の会議室へと移すことにした。
すでに時間は深夜となったが、それでもグローバーがこの島へ足を運んだ理由――それは想像もしていなかった事態についての説明だった。
「実は……エストラーダと隣国の国境近くにギアディスとレゾンの連合軍が集結しつつあります。おまけに海上にも戦闘用の船を何隻がこちらへ向けて出航させたとの情報を入手しました」
「なんだって!?」
どうやら、向こうはもうヤル気満々って感じだな。
エストラーダも対策を講じているようだが、さすがに人員不足は否めないらしい。
ならば、せめて――
「海の方の守りはこちらで何とかしよう。ヤツらの狙いはラウシュ島に眠る魔法兵器だろうからな」
もうなりふり構ってはいられないと、総力戦を仕掛けるつもりか。
それなら、こちらも守るモノのために抵抗する。
「ならば我ら騎士団は国境付近に戦力を集中させます!」
「うちの漁業関係者も海を荒らされたとなったら黙っちゃいないからね。今のうちにいろいろと準備しておいた方がよさそうね」
グローバーもマリン所長もヤル気十分だな。
「先生、この島でダンジョン探索をしている冒険者にも声をかけておきますよ。あいつらすっかりこの島が気に入ったみたいですし、ギアディスの冒険者を軽視する政策には前々から鬱憤がたまっていたみたいなので、協力をしてくれるかと」
「頼めるか、ロレッタ」
「任せてください!」
たくさんの人の協力で、ラウシュ島を守る。
この戦いが終わった時が……本当の意味で俺の引退生活がスタートするのかもしれないな。
227
お気に入りに追加
6,060
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。