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連載
第163話 その名はマーサ
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思いもよらぬ事態であった。
嵐の日にこのラウシュ島へ流れ着いた記憶を失った女性――そんな彼女を騎士団時代の同僚の娘であるラシェルは知っているという。
「ラシェル……君は彼女と会ったことがあるのか?」
「う、うん」
「ここにいる女性がそのマーサで間違いないと?」
「そうだよ。だってマーサさんはママのお友だちで、うちにも何度か遊びに来たことがあるから。私ともよく遊んでくれていたし」
「レティシアの?」
それを聞いた直後、全員の視線は自然と記憶を失った女性――いや、マーサの方へと向けられる。
「私の名前……マーサ……」
彼女はひどく混乱している様子だった。
顔は青ざめ、頭を抱えてしまっている。
エリーゼが優しく肩に手を添え、「大丈夫よ」と声をかけたことで落ち着きを取り戻したようだが……あれではこれ以上の情報を聞きだすのは難しそうだ。
とりあえず、マーサには俺たちの屋敷へと戻ってもらうことにして、より詳しい話をラシェルから聞くことにした。
「マーサとはいつ頃会ったのか覚えているかい?」
「うーんと……私が今よりも小さい頃からよくうちに来ていたよ。そういえば、ママと働いていた場所が同じだって言っていたような」
「レティシアと同じ仕事――騎士団関係者か」
確かに、彼女は相当体を鍛えていたようだし、何か武術に精通しているとは思っていたが……騎士団だったとは。
――そういえば、まだ聞いていないことがあった。
「さっきマーサがよく家へ遊びに来たと言っていたけど……ラシェルの家はどこにあるんだい? 住んでいた国の名前とかでもいいんだけど」
「私が住んでいたのはレゾンっていう王国だよ」
「っ!?」
その場に居合わせた全員に緊張が走る。
レゾン王国といえば……真っ先に思い出されるのは副騎士団長のオズボーン・リデアという人物だ。このラウシュ島には、彼が存在していた痕跡があちらこちらに見られる。もしかしたら……マーサはそのオズボーン副騎士団長を捜すためにここまでやってきたのだろうか。
しかし、それなら彼女がひとりというのが解せない。
副騎士団長の捜索となったら、もっと大規模なものになってもおかしくはない。
……というか、待てよ。
確か、レゾン王国はギアディスと同盟を結んで侵略戦争を始めていたんだったな。おまけにお姫様が行方不明だったり、何かと謎が多い国だ。
「どう見ますか、オーリン先生」
静かにそう尋ねてきたのはブリッツだった。
「俺としては、彼女の話す内容に嘘はないと思っている」
「それについては俺も同じです。――ただ、あのマーサという女性がなぜこの島を目指していたのか……その理由が不透明という点に少々不安を感じます」
「だよなぁ」
ブリッツは俺とまったく同じ考えだった。
すべての謎を解くためには……やはりレティシア本人を見つけださなくてはいけないようだ。
なんとかして彼女の足取りをつかまないと。
こういう時に頼りとなるのは――
「あの人に相談してみるか」
少し危険な賭けになるが、この島の謎を解くためにも勝負に出てみるとするか。
…………………………………………………………………………………………………
新作をはじめました!
ハーレム要素薄めのお仕事もの(?)
基本のんびりな感じ+学園要素ありです!
「魔剣学園寮の管理人は【育成スキル】持ち ~仲間たちからの裏切りにあって追いだされた俺は、再就職先で未来の英雄たちからめちゃくちゃ頼られる~」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/559352328/339753842
是非、読んでみてください!
嵐の日にこのラウシュ島へ流れ着いた記憶を失った女性――そんな彼女を騎士団時代の同僚の娘であるラシェルは知っているという。
「ラシェル……君は彼女と会ったことがあるのか?」
「う、うん」
「ここにいる女性がそのマーサで間違いないと?」
「そうだよ。だってマーサさんはママのお友だちで、うちにも何度か遊びに来たことがあるから。私ともよく遊んでくれていたし」
「レティシアの?」
それを聞いた直後、全員の視線は自然と記憶を失った女性――いや、マーサの方へと向けられる。
「私の名前……マーサ……」
彼女はひどく混乱している様子だった。
顔は青ざめ、頭を抱えてしまっている。
エリーゼが優しく肩に手を添え、「大丈夫よ」と声をかけたことで落ち着きを取り戻したようだが……あれではこれ以上の情報を聞きだすのは難しそうだ。
とりあえず、マーサには俺たちの屋敷へと戻ってもらうことにして、より詳しい話をラシェルから聞くことにした。
「マーサとはいつ頃会ったのか覚えているかい?」
「うーんと……私が今よりも小さい頃からよくうちに来ていたよ。そういえば、ママと働いていた場所が同じだって言っていたような」
「レティシアと同じ仕事――騎士団関係者か」
確かに、彼女は相当体を鍛えていたようだし、何か武術に精通しているとは思っていたが……騎士団だったとは。
――そういえば、まだ聞いていないことがあった。
「さっきマーサがよく家へ遊びに来たと言っていたけど……ラシェルの家はどこにあるんだい? 住んでいた国の名前とかでもいいんだけど」
「私が住んでいたのはレゾンっていう王国だよ」
「っ!?」
その場に居合わせた全員に緊張が走る。
レゾン王国といえば……真っ先に思い出されるのは副騎士団長のオズボーン・リデアという人物だ。このラウシュ島には、彼が存在していた痕跡があちらこちらに見られる。もしかしたら……マーサはそのオズボーン副騎士団長を捜すためにここまでやってきたのだろうか。
しかし、それなら彼女がひとりというのが解せない。
副騎士団長の捜索となったら、もっと大規模なものになってもおかしくはない。
……というか、待てよ。
確か、レゾン王国はギアディスと同盟を結んで侵略戦争を始めていたんだったな。おまけにお姫様が行方不明だったり、何かと謎が多い国だ。
「どう見ますか、オーリン先生」
静かにそう尋ねてきたのはブリッツだった。
「俺としては、彼女の話す内容に嘘はないと思っている」
「それについては俺も同じです。――ただ、あのマーサという女性がなぜこの島を目指していたのか……その理由が不透明という点に少々不安を感じます」
「だよなぁ」
ブリッツは俺とまったく同じ考えだった。
すべての謎を解くためには……やはりレティシア本人を見つけださなくてはいけないようだ。
なんとかして彼女の足取りをつかまないと。
こういう時に頼りとなるのは――
「あの人に相談してみるか」
少し危険な賭けになるが、この島の謎を解くためにも勝負に出てみるとするか。
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ハーレム要素薄めのお仕事もの(?)
基本のんびりな感じ+学園要素ありです!
「魔剣学園寮の管理人は【育成スキル】持ち ~仲間たちからの裏切りにあって追いだされた俺は、再就職先で未来の英雄たちからめちゃくちゃ頼られる~」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/559352328/339753842
是非、読んでみてください!
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