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2巻
2-3
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†
それからさらに数日後――とうとうその日がやってきた。
『オーリン先生、資材が揃いました』
早朝にグローバーから、いよいよ本格的な村づくりをスタートする準備が整ったと連絡を受ける。
――だが、少し気になることが。
「資材は分かったが、調査団の人材の方はどうなっている? 応募はあったのか?」
国王陛下が、クレールのような調査団の志望者を募っているはずなんだが、まだ音沙汰がないんだよな。
『そ、それが……今のところ志願した者は五人ほどで』
「! そうか」
だが、決して多い人数ではないな。
まあしかし、想定の範囲内である。むしろ五人でも志願してもらえたのはありがたいと思わなくては。
「ちなみに、志願してくれたのはどのような人たちなんだ?」
『騎士団関係者が三人で、一般人がふたりですね』
「一般人からも志願者がいたのか」
一般枠からの参加が、クレール以外にもいるとは思わなかったな……どうやら、思っていた以上にエストラーダの民のこの島への関心は高いらしい。
災いを呼ぶ島と呼ばれても、どこか惹かれるところがあるんだろう。
「それで、到着はいつ頃になる?」
『今日の午後には、そちらへ着けるかと』
思ったより早いな。だが、人手が増えるのは歓迎だ。
「了解だ。それなら、人数分のテントを用意しておかないとな」
しばらくの間はテント生活になるが、我慢してもらわないと。
一応、グローバーからそうなるだろうという注意もしているらしいから、志願者も了承済みのはずだが。
――あと、例の件についても聞いてみるか。
そう思ったら、
『先生がもうひとつ気にしていらっしゃる例の件ですが』
グローバーの方から切り出してきた。
『教えていただいた人物とコンタクトが取れました』
「それは朗報だな。用件は伝えたのか?」
『もちろんです。乗り気でしたよ。……やはり先生の言う通り、思うところがあったみたいですね』
「あの人は根が真面目だからな……よし。近いうちに頼むぞ、グローバー」
とりあえず、そちらの方も順調そうで何よりだ。
グローバーと水晶での連絡を終えると、俺はみんなを集めた。
そして今日の午後に、村づくりのための資材と人材、さらに調査団の志願者がこちらへやってくることを伝える。
「いよいよ本格的に村づくりができますね!」
物づくりを得意とするウェンデルは目を輝かせていた。
彼にはおおいに活躍してもらおう。
「では、諸々準備をしておかなくてはなりませんね」
連絡が来るまでの間、得意の魔法で予定地周辺の土地を整備していたジャクリーヌも、いよいよ始まる村づくりに気合が入っている様子。
なんでも、どこかに薬草を育てるための農場をつくりたかったらしい。ようやくそれが実現できそうだという喜びもあるのだろう。
しかし、相変わらず勉強熱心な子だ。
ちなみに、資材や人材を乗せている船はかなりの大きさが予想されるため、例の無人となった港町へ寄港することになっている。
一応、俺たちだけでも運用できる小規模な港も設ける予定だが、それはもう少し先の話になりそうだ。
「そうと決まったら、今日はいつもより昼食を早めに取って準備するか」
「では、私たちは早速準備に取りかかります!」
パトリシアがイムとクレールを連れて昼食の用意を開始。
残った俺たちは、時間が来るまで村づくりの準備を再開する。
さて、一体どんな人たちが来るのか――楽しみだな。
昼食を終えると、俺たちは港町の跡地へ移動した。
今回は資材など積み荷が多いため、この跡地を利用することとなった。
しかし、長年にわたってろくな整備もされていないため、停泊できたとしても一隻――それも中型の船が精一杯だろう。
いずれ、この島から運び出す物が出てきた場合、大型船が停泊できるようにしておきたいところだ。
ここは村の建設予定地からそれほど離れてはいない。
規模は王都の港町ほどではないが、大きい方に入るだろう。まさに理想的な立地条件だった。
「職人が来たら、いずれここもしっかり整備して再利用できるようにしたいな」
しばらく待っていると沖に船の姿が見え、イムがはしゃいだ声を出す。
「大きい船!」
「荷物が多いですから、当然ですね」
「でもパトリシア、なんであんな大きな物が水の上に浮いているの?」
「…………」
「パトリシア?」
「それは……気合です」
「気合かぁ」
イムの質問にめちゃくちゃな解答を口にするパトリシア。
困ったら根性論に移行するからなぁ、パトリシアは。あとでふたりには特別授業をした方がよさそうだ。
それはさておき、船が港へ到着すると、まずひとりの中年男性が降りてきた。
「あなたがオーリン・エドワース様ですね」
「そうです。あなたは?」
「このたび、エストラーダ王国より、ラウシュ島へ送る物資の調達を任されることになりました、商人のバンフォードという者です。これより、必要な物資についてはなんなりとお申しつけください」
そう言うと、バンフォードと名乗った商人は国王直筆の紹介状を提示した。
その紹介状には国王陛下の魔力がしかと練り込まれていた。
疑っていたわけじゃないが、本物の紹介状に間違いないようだ。
「確かに」
そう言って紹介状をバンフォードさんに返す。
「それではオーリン様、早速資材を運び出したいと思います。それから、この島の調査団へ入団を希望している者たちもご紹介します」
「分かりました」
船にある資材の運搬は船乗りに任せて、俺、パトリシア、イム、クレール、ウェンデル、ジャクリーヌの六人は、ともに調査をすることとなる新しい仲間と顔合わせをするため、船内へ入った。
ちなみに、村づくりに必要な家屋などを建築する職人は、完成するまでの間、島へ数日滞在し、月に数回大陸へ戻るという往復生活を送る予定になっている。
これから会う調査団志望者の五人は村に住み、俺たちと行動をともにしながらこの島の謎を解き明かす。
その五人が待機している船室に案内され、中に入る。
「む?」
五人を見た第一印象は――「思っていたよりもずっと若い」だった。
まず、揃いの制服を着た三人はエストラーダ王国の騎士団関係者だろう。
男性ふたりに女性ひとり。
「初めまして。自分はエストラーダ王国騎士団に所属しているカークといいます」
「お、おお、同じく、バリーです」
男の方はともに二十代半ばくらいか。
カークと名乗った茶髪の青年はとても堂々とした振る舞いで、どことなくブリッツを思い出させる。もうひとりのバリーという緑髪の青年はどこかオドオドしており、忙しなく目が動いていた。……あまり騎士っぽくないな。
一方、赤い髪の女性の方は彼らより五、六歳ほど若そうだ。養成所を出たばかりの新人だろうか。
それにこの女性は――
「君は……獣人族か」
「はい。猫の獣人族でリンダといいます!」
話すたびにピコピコと動く猫耳――っと、そちらばかりに気を取られてはいかんな。
この子は、なんとなく雰囲気がイムと似ている。きっと仲良くなれるだろう。
そのイムだが、生まれて初めて見る獣人族に興奮していた。
島の中で生まれ育ち、同じ人間であっても、島民以外では俺たちが初めて会った人間と言っていたし。もうしばらくこの高いテンションは続きそうだな。
次は一般からの志願者だ。
「僕はドネルと申します。商人として、バンフォードさんが運営する商会に所属させてもらっています」
彼は物資補給の補佐をするため、大陸側との連絡係として派遣されたようだ。
とはいえ、島の存在は子どもの頃からずっと気にかかっていたようで、今回こうして上陸できてとても興奮していると鼻息荒く語っていた。
もうひとりは、眼鏡をかけた銀髪の女性。
「私はルチアと申しまして、魔法使いです。地属性の魔法が得意で、きっとお役に立てるかと」
「それは頼もしいな」
魔法使いなら、ジャクリーヌの負担も減るだろう。
こうして、志願者たちの簡単な自己紹介はひと通り終了。
今度はこちらの番だ。
パトリシア、イム、クレールの三人までは滞りなく進んだのだが、ジャクリーヌとウェンデルが名乗ると、雰囲気が一変。
「ギ、ギアディス王国の黄金世代!?」
「それがふたりも!?」
「本物に会えるとは……」
志願者五人は、驚きの表情を浮かべている。
中でも魔法使いであるルチアは、ジャクリーヌへの質問責めを始めた。
なんでも、ずっと憧れていた存在らしい。
「私! ずっと世界的に活躍できる魔法使いを目指していたんです。だから同じくらいの年齢で活躍されているジャクリーヌ様には憧れているんです!」
「こ、光栄ですわ……」
あのジャクリーヌがここまで圧倒されるとは……おとなしめな子だと思っていたが、意外と押しが強いんだな。
さらにウェンデルとジャクリーヌが俺の教え子だと知ると、今度は全員がこちらへ驚きの顔を向けた。
「オ、オーリンさんが黄金世代を育てた……」
「ということは……あなたが有名な大国ギアディスの賢者殿!?」
「い、いや、俺は彼らの先生というだけであって……」
「そうです! オーリン先生は凄いんです!」
俺が話し終える前に、パトリシアが力強く言いきる。
「オーリン先生は最高です! 私もそんな先生のもとで学べて本当に幸せです!」
「パトリシアちゃん、どうどう」
興奮しているパトリシアをなだめるクレール。
……彼女がいてくれて本当によかったよ。俺ではあんな風にできないからな。
気を取り直して――次の話題へ。
「じゃあ、ここまで分かっている情報を教えておくよ」
俺は持ってきた地図を船室内にあったテーブルの上に広げた。そして、難破船や放棄された港町など、ここまでで判明している情報を伝える。
「これは……なかなかに厄介ですな」
「まったく全貌が掴めないです」
カークとバリーはともに腕を組んで首を傾げる。
「ただ、この難破船が商船だとすれば、この島から何かを運び出そうとしていたのではないでしょうか?」
「む? なるほど……その発想はなかったな」
商人らしいドネルの意見に感心する。俺ではなかなか思いつきそうにない、彼ならではの視点だ。
「実際にこの目で見ることができれば、もう少し情報が引き出せるかもしれません」
「そうだな。……よし。それでは実際にあの船を見てみるとするか」
「それは楽しみです!」
リンダは嬉しそうに目を輝かせる。この辺の無邪気さも、なんとなくイムに似ているように思える。
「って、先生。これから職人さんたちとの打ち合わせがあるのでは?」
「おっと、そうだったな」
危ない……うっかりしていた。クレールが教えてくれなければ、そのままみんなで出かけるところだった。
「すまない。助かったよ、クレール」
「いえいえ。これでも私は先生の秘書のつもりですから」
「ははは、確かにクレールの働きは秘書っぽいな」
俺が気づかないことを気づかせてくれるし、スケジュール管理もうまい。案外、天職なんじゃないか?
「先生! 私も毎日早寝早起きをしてスケジュール管理は完璧です!」
突然パトリシアが割って入ってきた。
「そうだな。パトリシアも偉いぞ」
「えへへ~……って、何か違う!?」
褒めたつもりだったが、パトリシアとしては不満だったらしい。
うーむ……年頃の女の子は難しいな。学園にいた頃のエリーゼやジャクリーヌはそんな風に感じなかったけど。
ともかく、俺たちは職人に村の構想を話すため、一度この船を出ることにした。
船を出ると、職人をまとめる責任者が俺を待っていた。
「初めまして。今回こちらの村づくりを担当します、ターナーと申します」
「調査団のリーダーを務めるオーリン・エドワースです」
「大国ギアディスの賢者殿……お噂はかねがね伺っております」
差し出された手を握りながら、簡単に自己紹介を終える。
……こう言ってはなんだが、この手の職人はもっとこう、武骨な感じがするイメージがあったが、このターナーという人物は俺と同じくらいの年齢で、非常に物腰が丁寧で理知的な印象を受ける。
ただ、彼の部下である職人たちは、概ね最初に抱いたイメージ通りだった。
現場で鍛えられた屈強な肉体。そして資材を運んだり、準備を整えたりしている手際のよさは、熟練の職人であることを感じさせた。
なるほど。ターナーはこんな職人たちを束ねているのか。
彼らにならば、村づくりを託せそうだな。
グローバーもいい人材を見つけてくれたものだ。
ちなみにそのグローバーは、先日俺が依頼した案件を果たすため、国外への遠征を準備しているはずだ。
グローバーがうまくやってくれたら……まあ、最終的にどうなるのか、それは俺でもまったく予想できないが。
今はただ、やれるべきことをやり、吉報を待つとしよう。
†
しばらく歩き、俺はターナーと職人たちを連れて村の建設予定地へ移動。
そこへ到着すると、彼らはすぐに辺りの様子をくまなくチェックしていく。そして少し協議したのち、代表してターナー自身が土地の評価を口にした。
「素晴らしいです! 村をつくるにはこれ以上ない場所と言っても過言じゃない! よく見つけましたね!」
「それはよかった。安心したよ」
正直、俺としても、ここ以上に適した場所はないだろうと思っていたので、専門家にも太鼓判を押され、ホッとひと安心。
それから、俺たちでつくった建設予定図を見てもらった。そこには、現調査団のメンバーの希望が反映されている。
むろん、それらがすべて通るとは思っていない。
あくまでも希望という形で描いたのだが、
「これならばすべて叶えられると思いますよ」
まさかの全部OKという返事に、イムとパトリシアから歓声があがる。
「よかったね、パトリシア。これで一緒の家に住めるよ」
「えぇ。……って、それはつまり先生とは暮らせないと!?」
「あたしと一緒じゃ……嫌?」
「そ、そういう意味じゃないですよ!」
「ならよかった!」
「くっ……謀られた……」
何やら盛り上がっているパトリシアとイムを横目に、俺は建設予定図に改めて目を通す。
村でもっとも大きな建物は中央に建て、そこを調査団の詰め所として利用する予定だ。俺やカークたちといった、王国の騎士団関係者の住まいとしても活用していくつもりでいる。
村の未来を想像しながら建設予定図を眺めていた俺は、ある事実に気づいた。
「うーん……」
「どうかしましたか、先生」
唸っていると、クレールがやってくる。
「いや、こうして村の建設予定図を見ていると……島全体の地図と比べたら、狭い範囲だと思ってな。まだまだ調査できてない場所が多いなぁと思ったんだ」
「そうですねぇ……日帰りでの調査が基本ですから、あまり遠方には行けませんものね」
その指摘はもっともだ。
村の建設もだが、島の中に拠点を増やすことも考えた方がいいかもな。
しばらくして、周辺の環境を調査し終えると、村づくりに関してターナーから共同浴場や小川近くに水車を設置するなど、いくつか提案がなされた。
それを聞いていると、「やはりプロは違うなぁ」と感心させられる。
ターナーは周りの環境とこれまでの経験を照らし合わせ、今後、俺たちの村に必要となる施設などを次々に示していった――非常に的確で、俺たちだけでは気づけなかった点もいくつかある。
「ふぅむ……いや、なかなか面白そうな試みだな」
「ではオーリン先生、この通りに進めても?」
「ぜひ頼むよ」
「お任せください」
若きリーダーであるターナーはそう言って、早速職人たちのもとへ、決定した村の建設予定図を見せに走っていった。
俺はというと、決定した内容を伝えるためにみんなを集める。
「ターナーと協議した結果、まずは調査団の詰め所から始めていくと決まった」
「あそこにはたくさんの人が集まるでしょうから、当然ですね」
クレールがちゃんと意図を汲んで説明してくれたため、イムやパトリシアたちにも詰め所からつくる理由はきちんと伝わったようだ。
それから可能な限り、俺たちも作業の手伝いをした。
特に力を発揮したのがジャクリーヌとルチアの魔法だ。
この場にいる職人は誰ひとりとして魔法を扱えない。そのため、重たい物でも軽く浮かせてしまうジャクリーヌの重力魔法や、土の質を変えることができるルチアの地属性魔法に、職人たちはとても驚いていた。
さらに、魔道具技師であるウェンデルは自身が持ち込んだアイテムを職人たちに提供し、それが大活躍。
「こんなに使い心地のいい道具は初めてだ!」
「それに頑丈ときている!」
「信じられない!」
「君は本当に天才だな!」
「いやぁ、それほどでもぉ」
製作したアイテムの数々を絶賛され、照れるウェンデル。
本人は「褒めすぎですよ」と謙遜しているが、そのセンスのよさは学園に入学した頃から片鱗を見せていた。ただ、剣術や魔法は苦手だったため、あまり周りからの評価は高くなく、俺が自分のクラスへ引っ張ると言った時は周囲から「正気か?」って反応をされたな。
だから、優れた魔道具技師となったウェンデルの姿を見ていると嬉しいな。
こうして、村づくりの作業は順調に進んでいった。
夕暮れになり、ターナーが終了を宣言したあとで進捗状況を確認したところ、「めちゃくちゃ驚きですよ! 当初の想定よりずっと速いです!」と興奮気味に語ってくれた。
一応、明日は村づくりのための人材が到着したとパジル村へ報告に行くため、午前中は手伝えないが、戻ってきてからは今日のように全員での作業が可能だろう。
詰め所が完成して諸々管理できる体制が整ったら――長期的なラウシュ島の調査へ乗り出すとしよう。
ちなみに、今日はこのあとで職人たちの歓迎会を兼ねた宴会を開く予定だ。
実は、パジル村の人から「よかったらみんなで食べてくれ」といろいろ食材をもらっていたんだよな。
人も増えることだし、いずれ改めて、村の人との交流会も開きたいものだ。
「さて、残る問題は……」
賑やかに宴会の準備を始めるみんなを眺めつつ、俺の脳裏に心配の種が浮かび上がった。
ギアディスに残されたあのふたりは……大丈夫だろうか。
「頼むぞ、グローバー」
……そろそろ到着している頃か。
なんとか、うまくいってほしいものだな。
それからさらに数日後――とうとうその日がやってきた。
『オーリン先生、資材が揃いました』
早朝にグローバーから、いよいよ本格的な村づくりをスタートする準備が整ったと連絡を受ける。
――だが、少し気になることが。
「資材は分かったが、調査団の人材の方はどうなっている? 応募はあったのか?」
国王陛下が、クレールのような調査団の志望者を募っているはずなんだが、まだ音沙汰がないんだよな。
『そ、それが……今のところ志願した者は五人ほどで』
「! そうか」
だが、決して多い人数ではないな。
まあしかし、想定の範囲内である。むしろ五人でも志願してもらえたのはありがたいと思わなくては。
「ちなみに、志願してくれたのはどのような人たちなんだ?」
『騎士団関係者が三人で、一般人がふたりですね』
「一般人からも志願者がいたのか」
一般枠からの参加が、クレール以外にもいるとは思わなかったな……どうやら、思っていた以上にエストラーダの民のこの島への関心は高いらしい。
災いを呼ぶ島と呼ばれても、どこか惹かれるところがあるんだろう。
「それで、到着はいつ頃になる?」
『今日の午後には、そちらへ着けるかと』
思ったより早いな。だが、人手が増えるのは歓迎だ。
「了解だ。それなら、人数分のテントを用意しておかないとな」
しばらくの間はテント生活になるが、我慢してもらわないと。
一応、グローバーからそうなるだろうという注意もしているらしいから、志願者も了承済みのはずだが。
――あと、例の件についても聞いてみるか。
そう思ったら、
『先生がもうひとつ気にしていらっしゃる例の件ですが』
グローバーの方から切り出してきた。
『教えていただいた人物とコンタクトが取れました』
「それは朗報だな。用件は伝えたのか?」
『もちろんです。乗り気でしたよ。……やはり先生の言う通り、思うところがあったみたいですね』
「あの人は根が真面目だからな……よし。近いうちに頼むぞ、グローバー」
とりあえず、そちらの方も順調そうで何よりだ。
グローバーと水晶での連絡を終えると、俺はみんなを集めた。
そして今日の午後に、村づくりのための資材と人材、さらに調査団の志願者がこちらへやってくることを伝える。
「いよいよ本格的に村づくりができますね!」
物づくりを得意とするウェンデルは目を輝かせていた。
彼にはおおいに活躍してもらおう。
「では、諸々準備をしておかなくてはなりませんね」
連絡が来るまでの間、得意の魔法で予定地周辺の土地を整備していたジャクリーヌも、いよいよ始まる村づくりに気合が入っている様子。
なんでも、どこかに薬草を育てるための農場をつくりたかったらしい。ようやくそれが実現できそうだという喜びもあるのだろう。
しかし、相変わらず勉強熱心な子だ。
ちなみに、資材や人材を乗せている船はかなりの大きさが予想されるため、例の無人となった港町へ寄港することになっている。
一応、俺たちだけでも運用できる小規模な港も設ける予定だが、それはもう少し先の話になりそうだ。
「そうと決まったら、今日はいつもより昼食を早めに取って準備するか」
「では、私たちは早速準備に取りかかります!」
パトリシアがイムとクレールを連れて昼食の用意を開始。
残った俺たちは、時間が来るまで村づくりの準備を再開する。
さて、一体どんな人たちが来るのか――楽しみだな。
昼食を終えると、俺たちは港町の跡地へ移動した。
今回は資材など積み荷が多いため、この跡地を利用することとなった。
しかし、長年にわたってろくな整備もされていないため、停泊できたとしても一隻――それも中型の船が精一杯だろう。
いずれ、この島から運び出す物が出てきた場合、大型船が停泊できるようにしておきたいところだ。
ここは村の建設予定地からそれほど離れてはいない。
規模は王都の港町ほどではないが、大きい方に入るだろう。まさに理想的な立地条件だった。
「職人が来たら、いずれここもしっかり整備して再利用できるようにしたいな」
しばらく待っていると沖に船の姿が見え、イムがはしゃいだ声を出す。
「大きい船!」
「荷物が多いですから、当然ですね」
「でもパトリシア、なんであんな大きな物が水の上に浮いているの?」
「…………」
「パトリシア?」
「それは……気合です」
「気合かぁ」
イムの質問にめちゃくちゃな解答を口にするパトリシア。
困ったら根性論に移行するからなぁ、パトリシアは。あとでふたりには特別授業をした方がよさそうだ。
それはさておき、船が港へ到着すると、まずひとりの中年男性が降りてきた。
「あなたがオーリン・エドワース様ですね」
「そうです。あなたは?」
「このたび、エストラーダ王国より、ラウシュ島へ送る物資の調達を任されることになりました、商人のバンフォードという者です。これより、必要な物資についてはなんなりとお申しつけください」
そう言うと、バンフォードと名乗った商人は国王直筆の紹介状を提示した。
その紹介状には国王陛下の魔力がしかと練り込まれていた。
疑っていたわけじゃないが、本物の紹介状に間違いないようだ。
「確かに」
そう言って紹介状をバンフォードさんに返す。
「それではオーリン様、早速資材を運び出したいと思います。それから、この島の調査団へ入団を希望している者たちもご紹介します」
「分かりました」
船にある資材の運搬は船乗りに任せて、俺、パトリシア、イム、クレール、ウェンデル、ジャクリーヌの六人は、ともに調査をすることとなる新しい仲間と顔合わせをするため、船内へ入った。
ちなみに、村づくりに必要な家屋などを建築する職人は、完成するまでの間、島へ数日滞在し、月に数回大陸へ戻るという往復生活を送る予定になっている。
これから会う調査団志望者の五人は村に住み、俺たちと行動をともにしながらこの島の謎を解き明かす。
その五人が待機している船室に案内され、中に入る。
「む?」
五人を見た第一印象は――「思っていたよりもずっと若い」だった。
まず、揃いの制服を着た三人はエストラーダ王国の騎士団関係者だろう。
男性ふたりに女性ひとり。
「初めまして。自分はエストラーダ王国騎士団に所属しているカークといいます」
「お、おお、同じく、バリーです」
男の方はともに二十代半ばくらいか。
カークと名乗った茶髪の青年はとても堂々とした振る舞いで、どことなくブリッツを思い出させる。もうひとりのバリーという緑髪の青年はどこかオドオドしており、忙しなく目が動いていた。……あまり騎士っぽくないな。
一方、赤い髪の女性の方は彼らより五、六歳ほど若そうだ。養成所を出たばかりの新人だろうか。
それにこの女性は――
「君は……獣人族か」
「はい。猫の獣人族でリンダといいます!」
話すたびにピコピコと動く猫耳――っと、そちらばかりに気を取られてはいかんな。
この子は、なんとなく雰囲気がイムと似ている。きっと仲良くなれるだろう。
そのイムだが、生まれて初めて見る獣人族に興奮していた。
島の中で生まれ育ち、同じ人間であっても、島民以外では俺たちが初めて会った人間と言っていたし。もうしばらくこの高いテンションは続きそうだな。
次は一般からの志願者だ。
「僕はドネルと申します。商人として、バンフォードさんが運営する商会に所属させてもらっています」
彼は物資補給の補佐をするため、大陸側との連絡係として派遣されたようだ。
とはいえ、島の存在は子どもの頃からずっと気にかかっていたようで、今回こうして上陸できてとても興奮していると鼻息荒く語っていた。
もうひとりは、眼鏡をかけた銀髪の女性。
「私はルチアと申しまして、魔法使いです。地属性の魔法が得意で、きっとお役に立てるかと」
「それは頼もしいな」
魔法使いなら、ジャクリーヌの負担も減るだろう。
こうして、志願者たちの簡単な自己紹介はひと通り終了。
今度はこちらの番だ。
パトリシア、イム、クレールの三人までは滞りなく進んだのだが、ジャクリーヌとウェンデルが名乗ると、雰囲気が一変。
「ギ、ギアディス王国の黄金世代!?」
「それがふたりも!?」
「本物に会えるとは……」
志願者五人は、驚きの表情を浮かべている。
中でも魔法使いであるルチアは、ジャクリーヌへの質問責めを始めた。
なんでも、ずっと憧れていた存在らしい。
「私! ずっと世界的に活躍できる魔法使いを目指していたんです。だから同じくらいの年齢で活躍されているジャクリーヌ様には憧れているんです!」
「こ、光栄ですわ……」
あのジャクリーヌがここまで圧倒されるとは……おとなしめな子だと思っていたが、意外と押しが強いんだな。
さらにウェンデルとジャクリーヌが俺の教え子だと知ると、今度は全員がこちらへ驚きの顔を向けた。
「オ、オーリンさんが黄金世代を育てた……」
「ということは……あなたが有名な大国ギアディスの賢者殿!?」
「い、いや、俺は彼らの先生というだけであって……」
「そうです! オーリン先生は凄いんです!」
俺が話し終える前に、パトリシアが力強く言いきる。
「オーリン先生は最高です! 私もそんな先生のもとで学べて本当に幸せです!」
「パトリシアちゃん、どうどう」
興奮しているパトリシアをなだめるクレール。
……彼女がいてくれて本当によかったよ。俺ではあんな風にできないからな。
気を取り直して――次の話題へ。
「じゃあ、ここまで分かっている情報を教えておくよ」
俺は持ってきた地図を船室内にあったテーブルの上に広げた。そして、難破船や放棄された港町など、ここまでで判明している情報を伝える。
「これは……なかなかに厄介ですな」
「まったく全貌が掴めないです」
カークとバリーはともに腕を組んで首を傾げる。
「ただ、この難破船が商船だとすれば、この島から何かを運び出そうとしていたのではないでしょうか?」
「む? なるほど……その発想はなかったな」
商人らしいドネルの意見に感心する。俺ではなかなか思いつきそうにない、彼ならではの視点だ。
「実際にこの目で見ることができれば、もう少し情報が引き出せるかもしれません」
「そうだな。……よし。それでは実際にあの船を見てみるとするか」
「それは楽しみです!」
リンダは嬉しそうに目を輝かせる。この辺の無邪気さも、なんとなくイムに似ているように思える。
「って、先生。これから職人さんたちとの打ち合わせがあるのでは?」
「おっと、そうだったな」
危ない……うっかりしていた。クレールが教えてくれなければ、そのままみんなで出かけるところだった。
「すまない。助かったよ、クレール」
「いえいえ。これでも私は先生の秘書のつもりですから」
「ははは、確かにクレールの働きは秘書っぽいな」
俺が気づかないことを気づかせてくれるし、スケジュール管理もうまい。案外、天職なんじゃないか?
「先生! 私も毎日早寝早起きをしてスケジュール管理は完璧です!」
突然パトリシアが割って入ってきた。
「そうだな。パトリシアも偉いぞ」
「えへへ~……って、何か違う!?」
褒めたつもりだったが、パトリシアとしては不満だったらしい。
うーむ……年頃の女の子は難しいな。学園にいた頃のエリーゼやジャクリーヌはそんな風に感じなかったけど。
ともかく、俺たちは職人に村の構想を話すため、一度この船を出ることにした。
船を出ると、職人をまとめる責任者が俺を待っていた。
「初めまして。今回こちらの村づくりを担当します、ターナーと申します」
「調査団のリーダーを務めるオーリン・エドワースです」
「大国ギアディスの賢者殿……お噂はかねがね伺っております」
差し出された手を握りながら、簡単に自己紹介を終える。
……こう言ってはなんだが、この手の職人はもっとこう、武骨な感じがするイメージがあったが、このターナーという人物は俺と同じくらいの年齢で、非常に物腰が丁寧で理知的な印象を受ける。
ただ、彼の部下である職人たちは、概ね最初に抱いたイメージ通りだった。
現場で鍛えられた屈強な肉体。そして資材を運んだり、準備を整えたりしている手際のよさは、熟練の職人であることを感じさせた。
なるほど。ターナーはこんな職人たちを束ねているのか。
彼らにならば、村づくりを託せそうだな。
グローバーもいい人材を見つけてくれたものだ。
ちなみにそのグローバーは、先日俺が依頼した案件を果たすため、国外への遠征を準備しているはずだ。
グローバーがうまくやってくれたら……まあ、最終的にどうなるのか、それは俺でもまったく予想できないが。
今はただ、やれるべきことをやり、吉報を待つとしよう。
†
しばらく歩き、俺はターナーと職人たちを連れて村の建設予定地へ移動。
そこへ到着すると、彼らはすぐに辺りの様子をくまなくチェックしていく。そして少し協議したのち、代表してターナー自身が土地の評価を口にした。
「素晴らしいです! 村をつくるにはこれ以上ない場所と言っても過言じゃない! よく見つけましたね!」
「それはよかった。安心したよ」
正直、俺としても、ここ以上に適した場所はないだろうと思っていたので、専門家にも太鼓判を押され、ホッとひと安心。
それから、俺たちでつくった建設予定図を見てもらった。そこには、現調査団のメンバーの希望が反映されている。
むろん、それらがすべて通るとは思っていない。
あくまでも希望という形で描いたのだが、
「これならばすべて叶えられると思いますよ」
まさかの全部OKという返事に、イムとパトリシアから歓声があがる。
「よかったね、パトリシア。これで一緒の家に住めるよ」
「えぇ。……って、それはつまり先生とは暮らせないと!?」
「あたしと一緒じゃ……嫌?」
「そ、そういう意味じゃないですよ!」
「ならよかった!」
「くっ……謀られた……」
何やら盛り上がっているパトリシアとイムを横目に、俺は建設予定図に改めて目を通す。
村でもっとも大きな建物は中央に建て、そこを調査団の詰め所として利用する予定だ。俺やカークたちといった、王国の騎士団関係者の住まいとしても活用していくつもりでいる。
村の未来を想像しながら建設予定図を眺めていた俺は、ある事実に気づいた。
「うーん……」
「どうかしましたか、先生」
唸っていると、クレールがやってくる。
「いや、こうして村の建設予定図を見ていると……島全体の地図と比べたら、狭い範囲だと思ってな。まだまだ調査できてない場所が多いなぁと思ったんだ」
「そうですねぇ……日帰りでの調査が基本ですから、あまり遠方には行けませんものね」
その指摘はもっともだ。
村の建設もだが、島の中に拠点を増やすことも考えた方がいいかもな。
しばらくして、周辺の環境を調査し終えると、村づくりに関してターナーから共同浴場や小川近くに水車を設置するなど、いくつか提案がなされた。
それを聞いていると、「やはりプロは違うなぁ」と感心させられる。
ターナーは周りの環境とこれまでの経験を照らし合わせ、今後、俺たちの村に必要となる施設などを次々に示していった――非常に的確で、俺たちだけでは気づけなかった点もいくつかある。
「ふぅむ……いや、なかなか面白そうな試みだな」
「ではオーリン先生、この通りに進めても?」
「ぜひ頼むよ」
「お任せください」
若きリーダーであるターナーはそう言って、早速職人たちのもとへ、決定した村の建設予定図を見せに走っていった。
俺はというと、決定した内容を伝えるためにみんなを集める。
「ターナーと協議した結果、まずは調査団の詰め所から始めていくと決まった」
「あそこにはたくさんの人が集まるでしょうから、当然ですね」
クレールがちゃんと意図を汲んで説明してくれたため、イムやパトリシアたちにも詰め所からつくる理由はきちんと伝わったようだ。
それから可能な限り、俺たちも作業の手伝いをした。
特に力を発揮したのがジャクリーヌとルチアの魔法だ。
この場にいる職人は誰ひとりとして魔法を扱えない。そのため、重たい物でも軽く浮かせてしまうジャクリーヌの重力魔法や、土の質を変えることができるルチアの地属性魔法に、職人たちはとても驚いていた。
さらに、魔道具技師であるウェンデルは自身が持ち込んだアイテムを職人たちに提供し、それが大活躍。
「こんなに使い心地のいい道具は初めてだ!」
「それに頑丈ときている!」
「信じられない!」
「君は本当に天才だな!」
「いやぁ、それほどでもぉ」
製作したアイテムの数々を絶賛され、照れるウェンデル。
本人は「褒めすぎですよ」と謙遜しているが、そのセンスのよさは学園に入学した頃から片鱗を見せていた。ただ、剣術や魔法は苦手だったため、あまり周りからの評価は高くなく、俺が自分のクラスへ引っ張ると言った時は周囲から「正気か?」って反応をされたな。
だから、優れた魔道具技師となったウェンデルの姿を見ていると嬉しいな。
こうして、村づくりの作業は順調に進んでいった。
夕暮れになり、ターナーが終了を宣言したあとで進捗状況を確認したところ、「めちゃくちゃ驚きですよ! 当初の想定よりずっと速いです!」と興奮気味に語ってくれた。
一応、明日は村づくりのための人材が到着したとパジル村へ報告に行くため、午前中は手伝えないが、戻ってきてからは今日のように全員での作業が可能だろう。
詰め所が完成して諸々管理できる体制が整ったら――長期的なラウシュ島の調査へ乗り出すとしよう。
ちなみに、今日はこのあとで職人たちの歓迎会を兼ねた宴会を開く予定だ。
実は、パジル村の人から「よかったらみんなで食べてくれ」といろいろ食材をもらっていたんだよな。
人も増えることだし、いずれ改めて、村の人との交流会も開きたいものだ。
「さて、残る問題は……」
賑やかに宴会の準備を始めるみんなを眺めつつ、俺の脳裏に心配の種が浮かび上がった。
ギアディスに残されたあのふたりは……大丈夫だろうか。
「頼むぞ、グローバー」
……そろそろ到着している頃か。
なんとか、うまくいってほしいものだな。
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