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【最終章①】廃界突入編
第159話 竜騎士団集結
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午後が訪れると、ダステニア王都はいつもの数倍の人で賑わっていた。
ただ、その賑わいの中心にいたのは完全武装の騎士たちというお世辞にも穏やかとは言えない者たちだった。
「なんだ? 戦争でもおっぱじめようってのか?」
「まさか。4大国家を相手にケンカを売る国なんてありゃしねぇだろ」
「じゃあなんでこんな大所帯でダステニア王都へ?」
「知るかよ」
王都の人々は各々が予想を立て合っているが、そのどれもが当たらずも遠からずという答えばかりだった。これだけの人がいて意見に乱れが少ないというのは、なんとなく、人々は良くないことが起こる前触れなのだろう気配を感じ取っているからだろう。
国王会議には参加しない颯太たちは、シャオ・ラフマンの捜索に協力することになった。
見合い相手のシャオを探すというのは変な感じがしないでもないが、この国王会議でダステニアの騎士のほとんどが出払っているという状況になってしまったため、やむなく出張ることになったのだ。
国王会議の議題の中心は、カレンの報告にあった通り魔族討伐作戦の概要についてになる予定だと言う。
その中でも、多く語られるのは廃界へ向かったとされるふたりの男の存在。
ミラルダ・マーズナー。
ランスロー王子。
このふたりが、何を目的として廃界へと足を踏み入れたのか。
特に、ふたりと関わりの深いハルヴァには何かと情報提供が求められるだろう。
その関係からか、カレンのあとに宿屋へとやって来たアイザック・レーンと共にダステニア城へと向かうことになった。アンジェリカは父ミラルダの情報を提供する参考人として会議へと参加するようアルフォン王に求められたのだ。
「父の不始末を娘が拭う……というつもりは毛頭ありませんが、あの人がよそ様に迷惑をかける前に引っ叩いてでも連れ帰らなければいけません。場所が場所だけに」
神妙な面持ちで語ったアンジェリカ。
とはいえ、今やたったひとりの血のつながった家族である父ミラルダのことが気になってはいるようだ。
一方で、颯太は例の三大禁忌魔法のひとつ――次元転移魔法のことでしばらく頭がいっぱいだった。
この世界ではもはや希少となっている魔法の使い手。
その中の貴重な1匹であるシャルルペトラがもしその魔法を使えたのだとしたら――颯太をこの世界に招き入れたのはシャルルペトラである可能性が高い。
だが、もしそうだとしたら、なぜシャルルペトラは颯太を求めたのか。
未だに多くの謎が残されていた。
「まるで舞踏会の日のハルヴァ並みに人がいるわね」
「違うのはそのすべてが各国の竜騎士団という点でしょうか」
遠くから王都中心部を眺めるブリギッテとキャロル。
たしかに、ハルヴァ舞踏会の時は各国の商人や観光目的でやってきた人たちで明るい喧騒であったが、この場合はちょっと状況が異なる。
北方領ペルゼミネ――ルコード・ディクソン騎士団長。
南方領ガドウィン――サリアス・マクスウェル騎士団長。
東方領ハルヴァ――ガブリエル・アーフェルカンプ騎士団長。
そして、彼らを迎え入れる西方領ダステニア竜騎士団長――ヤン・フィッセル。
「こう見ると……壮観だな」
各国の歴戦の勇士たちが集ったダステニア王都。
その迫力――特に、ガブリエルとルコードは間近でその実力を見てきたのでわかるが、ガドウィンのサリアス騎士団長とダステニアのヤン騎士団長も、醸し出すオーラでは他国の騎士団長に引けを取らない。
「あの人たちとドラゴンたちが手を組めば……誰が相手だって負ける気がしないな」
そう確信させられるほど、4国の騎士団長は頼もしく映った。
「さて、私たちは私たちの仕事をしないとね」
「ジェイクさんたちのいる捜索隊と合流するんでしたよね」
キャロルとブリギッテも捜索に加わることになった。
最初はお見合い話に反対(主にブリギッテだが)していたので、こちらにも協力はしてもらえないかと思ったが、さすがに誘拐となると話は別なようで、
「さすがにこのままってわけにはいかないわよね」
「そうですよ!」
ノリ気になっていた。
ともかく、強力な協力者を得た颯太は捜索隊へと合流。
ちなみに、会議の内容はあとでカレンとアイザックから報告を受けることになっていた。
「ソータ」
颯太たちを迎えに来たジェイクと合流し、王都の中心地から外れた位置にある騎士団の詰所へとやってきていた。
「捜索ということでしたけど、どこを回りますか?」
「その件なんだが……おまえの能力を借りたいんだ」
「え?」
颯太の能力といえば、竜の言霊により、ドラゴンと会話ができるというもの。
だが、それと捜索になんの関係があるのか――と、
「今回は私の出番のようですね」
颯太たちの前に姿を見せたのは香竜レプレンタスであった。
「レプレ? どうしたんだ?」
「私なら、シャオ様の匂いをたどって居場所を特定することが可能です」
「そ、そんなことができるのか!?」
「はい。ですから、あなたには私の示した場所を正確に騎士のみなさんに伝えてください」
「任せてくれ!」
香竜レプレンタスをナビゲーション役として、シャオの行方をすぐさま特定しようというものだった。颯太の能力をもってすれば、より正確な位置情報を伝えることができる。
「国王会議の進展具合は気になるが、今はこっちに集中しないとな。まあ、おまえとしちゃ変な気分だろうが、シャオ・ラフマンを探し出すには正確にレプレンタスの言葉を通訳できるおまえがいないと始まらないんだ」
建物の隙間からわずかにのぞくダステニア城を眺めていた颯太へ、ジェイクが声をかける。
「わかっていますよ」
颯太は短く答える。
こうして、レプレンタスと颯太を中心とする捜索隊は未だ冷めぬ賑わいを見せるダステニア王都を発った。
ただ、その賑わいの中心にいたのは完全武装の騎士たちというお世辞にも穏やかとは言えない者たちだった。
「なんだ? 戦争でもおっぱじめようってのか?」
「まさか。4大国家を相手にケンカを売る国なんてありゃしねぇだろ」
「じゃあなんでこんな大所帯でダステニア王都へ?」
「知るかよ」
王都の人々は各々が予想を立て合っているが、そのどれもが当たらずも遠からずという答えばかりだった。これだけの人がいて意見に乱れが少ないというのは、なんとなく、人々は良くないことが起こる前触れなのだろう気配を感じ取っているからだろう。
国王会議には参加しない颯太たちは、シャオ・ラフマンの捜索に協力することになった。
見合い相手のシャオを探すというのは変な感じがしないでもないが、この国王会議でダステニアの騎士のほとんどが出払っているという状況になってしまったため、やむなく出張ることになったのだ。
国王会議の議題の中心は、カレンの報告にあった通り魔族討伐作戦の概要についてになる予定だと言う。
その中でも、多く語られるのは廃界へ向かったとされるふたりの男の存在。
ミラルダ・マーズナー。
ランスロー王子。
このふたりが、何を目的として廃界へと足を踏み入れたのか。
特に、ふたりと関わりの深いハルヴァには何かと情報提供が求められるだろう。
その関係からか、カレンのあとに宿屋へとやって来たアイザック・レーンと共にダステニア城へと向かうことになった。アンジェリカは父ミラルダの情報を提供する参考人として会議へと参加するようアルフォン王に求められたのだ。
「父の不始末を娘が拭う……というつもりは毛頭ありませんが、あの人がよそ様に迷惑をかける前に引っ叩いてでも連れ帰らなければいけません。場所が場所だけに」
神妙な面持ちで語ったアンジェリカ。
とはいえ、今やたったひとりの血のつながった家族である父ミラルダのことが気になってはいるようだ。
一方で、颯太は例の三大禁忌魔法のひとつ――次元転移魔法のことでしばらく頭がいっぱいだった。
この世界ではもはや希少となっている魔法の使い手。
その中の貴重な1匹であるシャルルペトラがもしその魔法を使えたのだとしたら――颯太をこの世界に招き入れたのはシャルルペトラである可能性が高い。
だが、もしそうだとしたら、なぜシャルルペトラは颯太を求めたのか。
未だに多くの謎が残されていた。
「まるで舞踏会の日のハルヴァ並みに人がいるわね」
「違うのはそのすべてが各国の竜騎士団という点でしょうか」
遠くから王都中心部を眺めるブリギッテとキャロル。
たしかに、ハルヴァ舞踏会の時は各国の商人や観光目的でやってきた人たちで明るい喧騒であったが、この場合はちょっと状況が異なる。
北方領ペルゼミネ――ルコード・ディクソン騎士団長。
南方領ガドウィン――サリアス・マクスウェル騎士団長。
東方領ハルヴァ――ガブリエル・アーフェルカンプ騎士団長。
そして、彼らを迎え入れる西方領ダステニア竜騎士団長――ヤン・フィッセル。
「こう見ると……壮観だな」
各国の歴戦の勇士たちが集ったダステニア王都。
その迫力――特に、ガブリエルとルコードは間近でその実力を見てきたのでわかるが、ガドウィンのサリアス騎士団長とダステニアのヤン騎士団長も、醸し出すオーラでは他国の騎士団長に引けを取らない。
「あの人たちとドラゴンたちが手を組めば……誰が相手だって負ける気がしないな」
そう確信させられるほど、4国の騎士団長は頼もしく映った。
「さて、私たちは私たちの仕事をしないとね」
「ジェイクさんたちのいる捜索隊と合流するんでしたよね」
キャロルとブリギッテも捜索に加わることになった。
最初はお見合い話に反対(主にブリギッテだが)していたので、こちらにも協力はしてもらえないかと思ったが、さすがに誘拐となると話は別なようで、
「さすがにこのままってわけにはいかないわよね」
「そうですよ!」
ノリ気になっていた。
ともかく、強力な協力者を得た颯太は捜索隊へと合流。
ちなみに、会議の内容はあとでカレンとアイザックから報告を受けることになっていた。
「ソータ」
颯太たちを迎えに来たジェイクと合流し、王都の中心地から外れた位置にある騎士団の詰所へとやってきていた。
「捜索ということでしたけど、どこを回りますか?」
「その件なんだが……おまえの能力を借りたいんだ」
「え?」
颯太の能力といえば、竜の言霊により、ドラゴンと会話ができるというもの。
だが、それと捜索になんの関係があるのか――と、
「今回は私の出番のようですね」
颯太たちの前に姿を見せたのは香竜レプレンタスであった。
「レプレ? どうしたんだ?」
「私なら、シャオ様の匂いをたどって居場所を特定することが可能です」
「そ、そんなことができるのか!?」
「はい。ですから、あなたには私の示した場所を正確に騎士のみなさんに伝えてください」
「任せてくれ!」
香竜レプレンタスをナビゲーション役として、シャオの行方をすぐさま特定しようというものだった。颯太の能力をもってすれば、より正確な位置情報を伝えることができる。
「国王会議の進展具合は気になるが、今はこっちに集中しないとな。まあ、おまえとしちゃ変な気分だろうが、シャオ・ラフマンを探し出すには正確にレプレンタスの言葉を通訳できるおまえがいないと始まらないんだ」
建物の隙間からわずかにのぞくダステニア城を眺めていた颯太へ、ジェイクが声をかける。
「わかっていますよ」
颯太は短く答える。
こうして、レプレンタスと颯太を中心とする捜索隊は未だ冷めぬ賑わいを見せるダステニア王都を発った。
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