38 / 246
禁竜教編
第58話 ドラゴンは嫌いですか?
しおりを挟む
「お見苦しいところをお見せしました……」
意識を取り戻したカレンはハンカチで顔を拭きながら謝罪をする。
「い、いや、こちらこそ、うちのマキナが失礼なことを。申し訳ありません」
「……相手はドラゴンのそれも子どもですから、気にはしていませんよ」
――とは言うが、キャロルの腕に抱かれながらも「ガウガウ!」とカレンに飛びかかろうとしているマキナの動きにビクついていた。
「…………」
もしかして――と抱いていた疑念は徐々に確信へと変わっていく。
このカレン・アルデンハークという女性は、
「あの、アルデンハークさん?」
「カレンで結構ですよ、ソータ」
「じゃあ、カレン――単刀直入に聞きますけど……あなたはひょっとしてドラゴンが苦手なんですか?」
「……まさか」
微妙に間があった。そして、露骨に目をそらされる。
「……カレン?」
「な、なんですか、その眼は? 大体、ドラゴンの育成を目的にしている牧場を査察する外交局の人間が大のドラゴン嫌いなんてあるわけ――」
「ガウアッ!」
「ひうっ!?」
くしゃみをしたマキナの声にビビる――その様子はどう見ても苦手にしか思えない。今も顔は青ざめ、手足がちょっと震えていた。
「えっと……あまり無理をしない方が……」
「に、苦手ではないと言っているじゃないでしゅか!」
ついには噛んだ。もう数分前の「デキる女」の姿は微塵もなくなっていた。
しかし、そうなるとさらに読めなくなった。
スウィーニー外交大臣は、なぜドラゴンが苦手なカレンをドラゴン育成牧場に送り込んだのだろう。ジェイクの話では相当なやり手であるのはわかったが、少なくともこの現場は相性が悪過ぎる。
ドラゴン嫌いを克服するため? ――いや、それなら、ジェイクから聞いた、自分に対する批判的な意見を述べた理由を説明できない。愚かでない人間なら、わざわざ敵を増やすようなやり方をせず、素直にこちらへ依頼をすればいいのに。
考えたところで、外交局の狙いは読み取れない。その点については、内情をよく知るブロドリック大臣たちに任せ、こちらはジェイクに言われた通り、いつも通り振る舞おう。
「えっと……カレン? 私はこれから竜舎へ行きますが」
「りゅ、竜舎……」
これでもかってほどに顔から血の気が引いているカレン。まるでこの世の終わりを迎えたかのようだ。
本当に、なぜ彼女が査察担当に選ばれたのだろう。これではまるで仕事にならない。もしかしたら、そこにスウィーニー外交大臣の狙いが隠されているのだろうか。
「……ないな」
すぐにその疑惑を払拭。
いくらなんでも謎過ぎる。
ともかく、もう少し様子を見てから探りを入れよう。
そう決めた颯太はいつものように竜舎へ。
その後ろをせっせとついてくるカレン。
「この竜舎にはどのようなドラゴンが?」
「イリウスという名のドラゴンがいます」
「イリウス……聞いたことがありますね。たしか、ハドリー・リンスウッド分団長の愛竜でしたか」
「そうです」
他愛ない会話を繰り広げながら、竜舎の中に入ると、
「おいおい……また別の女を連れ込みやがったな」
呆れたように口を開くイリウス。
「こちらは今日からこの牧場の査察を担当するカレン・アルデンハークさんだ」
「査察ぅ? おまえ……今度は何をやらかしたんだ?」
「何もしてないし、今度はってどういう意味だよ」
それでは颯太がトラブルばかり起こす問題児のように聞こえる。
「ちょ、ちょっといいですか?」
「はい?」
イリウスに説明をしている途中で、カレンが割って入った。
「あの……今の一通りの会話は、もしかしてこちらのイリウスとしていたのですか?」
「そうですけど」
颯太にとってはドラゴンとの会話が日常茶飯事になっているため、逆に物凄く驚いているカレンの反応が新鮮に映った。キャロルやブリギッテといった近しい者たちもすでに颯太の能力については把握済みなのでここまで驚くことはない。
「……本当にイリウスと会話をしているんですか?」
「ええ、まあ」
「信じられませんねぇ――うん?」
カレンが颯太の能力について怪しんでいると、イリウスがこちらを見つめていることに気がついた。颯太もおかしく思ってたずねてみる。
「どうかしたか、イリウス」
「いや……」
見慣れない鋭い目つきでカレンを睨むイリウス。その迫力に、カレンは思わず後退。何やら不穏な気配を感じ取った颯太が視線を遮るようにイリウスの前に立つ。
「どうしたんだよ。今日のおまえ、何か変だぞ」
「あ、あの……イリウスは私を警戒しているのでしょうか?」
毅然とした態度を保とうしているが、カレンの声は微妙に震えていた。ただ、ドラゴンの好き嫌いをなしにしても、大型のイリウスに睨まれるのはさすがに怖い。
――もしや、外交局からの査察と聞き、颯太が怪しいと疑われていることを怒っているのかもしれない。
「イリウス……俺のことは気にしなくて――」
「あの姉ちゃん、信じられないくらい胸がでかいな」
「……は?」
真顔でとんでもない爆弾をぶっこんできた。
「竜医の姉ちゃんとそれほど変わらない年齢でありながら……まあ、あの姉ちゃんもけして小さい方じゃないが――とんでもねぇな」
「イリウス!」
「! ど、どうかしましたか?」
声を荒げる颯太。ついさっきまで穏やかな感じだった颯太の豹変に、カレンは驚きを隠せないでいた。
「あ、い、いや、えっと……こ、こう見えてイリウスは人見知りなんで、見かけない人が竜舎に来てちょっと警戒したみたいですね」
「そうだったんですか」
敵視されていないことにホッとない胸を撫で下ろすカレンを前にして、
「……嘘ついたな、ソータ」
「あんな暴言教えられるわけないだろ」
「なんだよ、人間の雄は胸のデカい女が好きなんだろ?」
「? なんでそう思うんだ?」
「俺がここへ来る前に住んでいた谷の近くには小さな村があったんだがな、そこの村長がよくこんなことを言っていたんだ――『巨乳最高』って」
「…………」
名前も知らない村の村長の性癖が暴露されたところで、颯太はカレンに向き直る。
「わ、私はこれからここで作業をしますが……カレンはどうします?」
「ここで働きぶりを見させてもらいます。それと、もうひとつ」
「なんでしょう?」
「変に気を遣わなくて結構ですよ。いつも通りの仕事を見せてください」
「は、はい――じゃなくて、わかったよ」
自分では普通にしていたつもりでも、肩に力が入っていたみたいだ。ジェイクにもいつも通りと言われていたのに、すっかり余所行きの態度になってしまっていた。
それに気づかせてくれたのはカレンだ。
颯太とは初対面でありながら、その人間性を見抜く辺りやはりちゃんとしていれば有能な人材なのだろう。
「……なあ、カレン」
「はい?」
「ここへ来たのはスウィーニー大臣からの命令かい?」
「そうですよ」
自分の意思ではない、と。
「そうか……じゃあ――」
続けて質問しようとした颯太の視線が捉えたもの――それは、竜舎の寝床用に積まれた藁の中から顔だけを出してこちらの様子をうかがうメアとノエルだった。
そういえば、アンジェリカが初めてここを訪れた時も、2匹は颯太のそばを離れなかった。その時と同じように、カレンを警戒しているようだ。
「メア、ノエル、この人は――」
「わっ! 可愛い子たち!」
カレンが颯太を押しのけてメアとノエルの前に立つ。
「私子どもと遊ぶの好きなんですよ! あなたの娘ですか!?」
「いや、この子たちは違うよ。ほら、出ておいで」
口で説明するよりも直接見せた方が早い。普通の人間にはない角と尻尾。それを見れば、2匹が竜人族だとわかるだろう。――と、
「ドラゴンは苦手でも竜人族は大丈夫なのかね」
イリウスの一言に、颯太はハッとなる。
実は、とんでもなく軽率な言動だったのではないか。
そう後悔するよりも先に、藁から出てきたメアとノエルの姿を見たカレンは、
「っ!?」
停止。
頭の先からつま先まで、漏れなく動きが止まっている。
また、気絶したみたいだ。
「……マーズナー・ファームに言ったら即死しそうだな」
「言ってやるな」
自分たちが粗相をしてしまったのではないかとソワソワしているメアとノエルの誤解を解きながら、颯太は深いため息をつくのだった。
意識を取り戻したカレンはハンカチで顔を拭きながら謝罪をする。
「い、いや、こちらこそ、うちのマキナが失礼なことを。申し訳ありません」
「……相手はドラゴンのそれも子どもですから、気にはしていませんよ」
――とは言うが、キャロルの腕に抱かれながらも「ガウガウ!」とカレンに飛びかかろうとしているマキナの動きにビクついていた。
「…………」
もしかして――と抱いていた疑念は徐々に確信へと変わっていく。
このカレン・アルデンハークという女性は、
「あの、アルデンハークさん?」
「カレンで結構ですよ、ソータ」
「じゃあ、カレン――単刀直入に聞きますけど……あなたはひょっとしてドラゴンが苦手なんですか?」
「……まさか」
微妙に間があった。そして、露骨に目をそらされる。
「……カレン?」
「な、なんですか、その眼は? 大体、ドラゴンの育成を目的にしている牧場を査察する外交局の人間が大のドラゴン嫌いなんてあるわけ――」
「ガウアッ!」
「ひうっ!?」
くしゃみをしたマキナの声にビビる――その様子はどう見ても苦手にしか思えない。今も顔は青ざめ、手足がちょっと震えていた。
「えっと……あまり無理をしない方が……」
「に、苦手ではないと言っているじゃないでしゅか!」
ついには噛んだ。もう数分前の「デキる女」の姿は微塵もなくなっていた。
しかし、そうなるとさらに読めなくなった。
スウィーニー外交大臣は、なぜドラゴンが苦手なカレンをドラゴン育成牧場に送り込んだのだろう。ジェイクの話では相当なやり手であるのはわかったが、少なくともこの現場は相性が悪過ぎる。
ドラゴン嫌いを克服するため? ――いや、それなら、ジェイクから聞いた、自分に対する批判的な意見を述べた理由を説明できない。愚かでない人間なら、わざわざ敵を増やすようなやり方をせず、素直にこちらへ依頼をすればいいのに。
考えたところで、外交局の狙いは読み取れない。その点については、内情をよく知るブロドリック大臣たちに任せ、こちらはジェイクに言われた通り、いつも通り振る舞おう。
「えっと……カレン? 私はこれから竜舎へ行きますが」
「りゅ、竜舎……」
これでもかってほどに顔から血の気が引いているカレン。まるでこの世の終わりを迎えたかのようだ。
本当に、なぜ彼女が査察担当に選ばれたのだろう。これではまるで仕事にならない。もしかしたら、そこにスウィーニー外交大臣の狙いが隠されているのだろうか。
「……ないな」
すぐにその疑惑を払拭。
いくらなんでも謎過ぎる。
ともかく、もう少し様子を見てから探りを入れよう。
そう決めた颯太はいつものように竜舎へ。
その後ろをせっせとついてくるカレン。
「この竜舎にはどのようなドラゴンが?」
「イリウスという名のドラゴンがいます」
「イリウス……聞いたことがありますね。たしか、ハドリー・リンスウッド分団長の愛竜でしたか」
「そうです」
他愛ない会話を繰り広げながら、竜舎の中に入ると、
「おいおい……また別の女を連れ込みやがったな」
呆れたように口を開くイリウス。
「こちらは今日からこの牧場の査察を担当するカレン・アルデンハークさんだ」
「査察ぅ? おまえ……今度は何をやらかしたんだ?」
「何もしてないし、今度はってどういう意味だよ」
それでは颯太がトラブルばかり起こす問題児のように聞こえる。
「ちょ、ちょっといいですか?」
「はい?」
イリウスに説明をしている途中で、カレンが割って入った。
「あの……今の一通りの会話は、もしかしてこちらのイリウスとしていたのですか?」
「そうですけど」
颯太にとってはドラゴンとの会話が日常茶飯事になっているため、逆に物凄く驚いているカレンの反応が新鮮に映った。キャロルやブリギッテといった近しい者たちもすでに颯太の能力については把握済みなのでここまで驚くことはない。
「……本当にイリウスと会話をしているんですか?」
「ええ、まあ」
「信じられませんねぇ――うん?」
カレンが颯太の能力について怪しんでいると、イリウスがこちらを見つめていることに気がついた。颯太もおかしく思ってたずねてみる。
「どうかしたか、イリウス」
「いや……」
見慣れない鋭い目つきでカレンを睨むイリウス。その迫力に、カレンは思わず後退。何やら不穏な気配を感じ取った颯太が視線を遮るようにイリウスの前に立つ。
「どうしたんだよ。今日のおまえ、何か変だぞ」
「あ、あの……イリウスは私を警戒しているのでしょうか?」
毅然とした態度を保とうしているが、カレンの声は微妙に震えていた。ただ、ドラゴンの好き嫌いをなしにしても、大型のイリウスに睨まれるのはさすがに怖い。
――もしや、外交局からの査察と聞き、颯太が怪しいと疑われていることを怒っているのかもしれない。
「イリウス……俺のことは気にしなくて――」
「あの姉ちゃん、信じられないくらい胸がでかいな」
「……は?」
真顔でとんでもない爆弾をぶっこんできた。
「竜医の姉ちゃんとそれほど変わらない年齢でありながら……まあ、あの姉ちゃんもけして小さい方じゃないが――とんでもねぇな」
「イリウス!」
「! ど、どうかしましたか?」
声を荒げる颯太。ついさっきまで穏やかな感じだった颯太の豹変に、カレンは驚きを隠せないでいた。
「あ、い、いや、えっと……こ、こう見えてイリウスは人見知りなんで、見かけない人が竜舎に来てちょっと警戒したみたいですね」
「そうだったんですか」
敵視されていないことにホッとない胸を撫で下ろすカレンを前にして、
「……嘘ついたな、ソータ」
「あんな暴言教えられるわけないだろ」
「なんだよ、人間の雄は胸のデカい女が好きなんだろ?」
「? なんでそう思うんだ?」
「俺がここへ来る前に住んでいた谷の近くには小さな村があったんだがな、そこの村長がよくこんなことを言っていたんだ――『巨乳最高』って」
「…………」
名前も知らない村の村長の性癖が暴露されたところで、颯太はカレンに向き直る。
「わ、私はこれからここで作業をしますが……カレンはどうします?」
「ここで働きぶりを見させてもらいます。それと、もうひとつ」
「なんでしょう?」
「変に気を遣わなくて結構ですよ。いつも通りの仕事を見せてください」
「は、はい――じゃなくて、わかったよ」
自分では普通にしていたつもりでも、肩に力が入っていたみたいだ。ジェイクにもいつも通りと言われていたのに、すっかり余所行きの態度になってしまっていた。
それに気づかせてくれたのはカレンだ。
颯太とは初対面でありながら、その人間性を見抜く辺りやはりちゃんとしていれば有能な人材なのだろう。
「……なあ、カレン」
「はい?」
「ここへ来たのはスウィーニー大臣からの命令かい?」
「そうですよ」
自分の意思ではない、と。
「そうか……じゃあ――」
続けて質問しようとした颯太の視線が捉えたもの――それは、竜舎の寝床用に積まれた藁の中から顔だけを出してこちらの様子をうかがうメアとノエルだった。
そういえば、アンジェリカが初めてここを訪れた時も、2匹は颯太のそばを離れなかった。その時と同じように、カレンを警戒しているようだ。
「メア、ノエル、この人は――」
「わっ! 可愛い子たち!」
カレンが颯太を押しのけてメアとノエルの前に立つ。
「私子どもと遊ぶの好きなんですよ! あなたの娘ですか!?」
「いや、この子たちは違うよ。ほら、出ておいで」
口で説明するよりも直接見せた方が早い。普通の人間にはない角と尻尾。それを見れば、2匹が竜人族だとわかるだろう。――と、
「ドラゴンは苦手でも竜人族は大丈夫なのかね」
イリウスの一言に、颯太はハッとなる。
実は、とんでもなく軽率な言動だったのではないか。
そう後悔するよりも先に、藁から出てきたメアとノエルの姿を見たカレンは、
「っ!?」
停止。
頭の先からつま先まで、漏れなく動きが止まっている。
また、気絶したみたいだ。
「……マーズナー・ファームに言ったら即死しそうだな」
「言ってやるな」
自分たちが粗相をしてしまったのではないかとソワソワしているメアとノエルの誤解を解きながら、颯太は深いため息をつくのだった。
0
お気に入りに追加
4,469
あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…



【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。