救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一

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最終話 愛弟子たちとの旅立ち

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 騎士団にアルゴの身柄を預けると、彼は頑丈な護送用の馬車に入れられた。
 駆けつけた騎士の話によれば、どうも余罪がたんまりあるらしく、牢獄での生活は長くなるだろうとのこと。

 ……だが、あいつならきっと立ち直ってくれるはず。
 
 馬車を見送った後、俺たち四人は今後の旅の目的について決めるため、一旦クラン村へと戻って話し合った。

その中で、トーラからあるお願いが出される。

「もっといろんな世界を見て回りたいよ!」
「いろんな世界、か……」

 彼女の意見に対し、メルファも同意しているらしく激しく首を縦に振った。どちらもずっと行動範囲が限られていたから、もっと視野を広げたいという気持ちがあるのだろう。

 確かに、この世界にはさまざまな出会いや出来事で溢れている。

 まだ若い――というより、幼いトーラやメルファが大きく成長するきっかけがあるかもしれないしな。

そして……いつかきっと、俺のもとから巣立っていくだろう。

 その日が来るまでは、彼女たちの師匠としてたくさんのことを教えてやろうと思う。


 話し合いが終わったのは深夜だった。
 ついつい議論が白熱して長引いてしまったが、結論としてまずは大陸中を旅して回ろうということになった。国をまたいで活躍する冒険者も少なくないし、ミレインにもいい影響がありそうだ。

 ちなみに、トーラとメルファはすでに部屋でお休み中。
 起きているのは俺とミレインだけだ。

 そのミレインだが、どうもご機嫌斜めらしい。

「師匠……最近はあの子たちも構いすぎじゃないですか?」
「えっ? そうかな?」
「そうですよ」

 頬を膨らませてクレームを入れるミレイン。
 だが、これはよくないな。
 弟子たちへの接し方に偏りがあっては正しい指導ができない。

 今後は気をつけるようにしよう。

「すまなかった、ミレイン。今後は気をつけるよ」
「……まあ、いいですけどね。それに、そういう熱心なところが師匠のいいところですから」

 真摯に謝ると、彼女の機嫌が直った。
 ひと安心しつつ、明日はフレディ村長たちにしばらく家を空けると伝えておかなくちゃな。

  ◇◇◇

 夜が明けると、早朝の畑仕事をしている村長を捕まえて事情を説明。

「また随分と急だな!?」
「申し訳ない」
「いやいや、気にしなくていいさ。家は前のように手入れをしておくから、安心して旅をしてこい」
「ありがとうございます」

 心強い言葉を聞き、さらに話を耳にした村人たちから盛大に送りだされた俺たち。

「それで、最初はどこへ行くんだ?」
「静かな場所がいい……」
「まずは南だな。そこから海沿いに北上していく」
「楽しみですね~」

 のどかで平和な田舎道を進みながら、俺たちはこれからの新しい冒険に胸を躍らせるのだった。
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みんなの感想(1件)

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

 15話まで読了
面白いです^^b
 ただ、突っ込み要素が薄い(笑)

解除

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