53 / 54
第51話 師弟の絆
しおりを挟む
魔力を制御できず、暴走状態に陥っているアルゴ。
ヤツをこれ以上野放しにしておくと何をしでかすか分からない。ここは元仲間として、やれるだけのことはやってやるか。
ミレインとともにアルゴと対峙する――が、ヤツはすでに意識を失っており、本能のままに襲いかかってくる。
最初に標的として選んだのはミレインの方だった。
意識はなくなっていても、未練があるのか?
「があああああああああああああっ!」
雄叫びを上げながら突っ込んでいくアルゴ。
だが、ミレインは冷静だった。
「はあっ!」
真正面から飛びかかってくるアルゴに対し、ミレインは得意のスピードでかく乱する戦法を取った。これにより目標を見失ったアルゴの動きは停止。首を忙しなく左右に振って行方を探しているようだが、それでは絶対に見つからないだろう。
なぜなら――ミレインはアルゴの頭上にいるのだから。
「やあっ!」
想定外の場所から放たれた一撃を頭部に受け、アルゴは悶え苦しむ。相手によってはそのまま首を切り落としているところだが、そうしなかったのは彼女の優しさか。
とはいえ、手加減をしている以上、ヤツは何度でも立ち上がってくる。
理性のある状態であれば、敵わないと悟って交渉のしようもあるのだが……今のアルゴにそれを求めるのは無理か。
しかし、ミレインの攻撃が効いているのは間違いない。
あとはこのまま連携して畳みかけていければ。
「ミレイン! トドメを刺すぞ!」
「し、師匠!? トドメって!?」
「大丈夫だ。ヤツには気を失ってもらって、それから魔剣を片付ける」
「っ! 了解!」
まあ、アルゴだけを倒して問題解決とはいかない。
問題はあの魔剣だ。
魔剣はうまく制御できれば心強い味方となるが、アルゴのように中途半端な実力者では逆に心を乗っ取られて暴走状態になってしまう。
その暴走状態となったアルゴの倒し方だが、まずはミレインが先行してヤツの手元を狙う。
これによって魔剣をはヤツの手を離れて宙を舞った。
「諸悪の根源を断たせてもらおう!」
そこへ俺が先回りをし、自分の剣で魔剣を叩き折った。
ガシャン、という金属音がダンジョン内に響き渡り、魔剣から魔力が消え去っていく。
同時に、アルゴの全身を覆っていた禍々しいほどの魔力をなくなり、顔色もよくなっていった。
「とりあえずひと安心ですね」
「ああ。それにしても……疲れたな」
「ですね」
互いに笑い合って、事件解決を喜ぶ。
さて……俺はこれからアルゴの身柄を騎士団へ引き渡すつもりだ。
彼のやってきたことは立派な犯罪。
牢の中で深く反省し、どうにか更生してもらいたいものだ。
「さあ、メルファとトーラを呼んでこようか」
「はい!」
アルゴの体をロープで頑丈で縛り上げたあと、俺はミレインにそう告げる。
これにて一件落着。
今後は安心して旅を続けられそうだ。
※次回最終回!
ヤツをこれ以上野放しにしておくと何をしでかすか分からない。ここは元仲間として、やれるだけのことはやってやるか。
ミレインとともにアルゴと対峙する――が、ヤツはすでに意識を失っており、本能のままに襲いかかってくる。
最初に標的として選んだのはミレインの方だった。
意識はなくなっていても、未練があるのか?
「があああああああああああああっ!」
雄叫びを上げながら突っ込んでいくアルゴ。
だが、ミレインは冷静だった。
「はあっ!」
真正面から飛びかかってくるアルゴに対し、ミレインは得意のスピードでかく乱する戦法を取った。これにより目標を見失ったアルゴの動きは停止。首を忙しなく左右に振って行方を探しているようだが、それでは絶対に見つからないだろう。
なぜなら――ミレインはアルゴの頭上にいるのだから。
「やあっ!」
想定外の場所から放たれた一撃を頭部に受け、アルゴは悶え苦しむ。相手によってはそのまま首を切り落としているところだが、そうしなかったのは彼女の優しさか。
とはいえ、手加減をしている以上、ヤツは何度でも立ち上がってくる。
理性のある状態であれば、敵わないと悟って交渉のしようもあるのだが……今のアルゴにそれを求めるのは無理か。
しかし、ミレインの攻撃が効いているのは間違いない。
あとはこのまま連携して畳みかけていければ。
「ミレイン! トドメを刺すぞ!」
「し、師匠!? トドメって!?」
「大丈夫だ。ヤツには気を失ってもらって、それから魔剣を片付ける」
「っ! 了解!」
まあ、アルゴだけを倒して問題解決とはいかない。
問題はあの魔剣だ。
魔剣はうまく制御できれば心強い味方となるが、アルゴのように中途半端な実力者では逆に心を乗っ取られて暴走状態になってしまう。
その暴走状態となったアルゴの倒し方だが、まずはミレインが先行してヤツの手元を狙う。
これによって魔剣をはヤツの手を離れて宙を舞った。
「諸悪の根源を断たせてもらおう!」
そこへ俺が先回りをし、自分の剣で魔剣を叩き折った。
ガシャン、という金属音がダンジョン内に響き渡り、魔剣から魔力が消え去っていく。
同時に、アルゴの全身を覆っていた禍々しいほどの魔力をなくなり、顔色もよくなっていった。
「とりあえずひと安心ですね」
「ああ。それにしても……疲れたな」
「ですね」
互いに笑い合って、事件解決を喜ぶ。
さて……俺はこれからアルゴの身柄を騎士団へ引き渡すつもりだ。
彼のやってきたことは立派な犯罪。
牢の中で深く反省し、どうにか更生してもらいたいものだ。
「さあ、メルファとトーラを呼んでこようか」
「はい!」
アルゴの体をロープで頑丈で縛り上げたあと、俺はミレインにそう告げる。
これにて一件落着。
今後は安心して旅を続けられそうだ。
※次回最終回!
41
お気に入りに追加
522
あなたにおすすめの小説
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
付与効果スキル職人の離島生活 ~超ブラックな職場環境から解放された俺は小さな島でドラゴン少女&もふもふ妖狐と一緒に工房を開く~
鈴木竜一
ファンタジー
傭兵を派遣する商会で十年以上武器づくりを担当するジャック。貴重な付与効果スキルを持つ彼は逃げ場のない環境で強制労働させられていたが、新しく商会の代表に就任した無能な二代目に難癖をつけられ、解雇を言い渡される。
だが、それは彼にとってまさに天使の囁きに等しかった。
実はジャックには前世の記憶がよみがえっており、自分の持つ付与効果スキルを存分に発揮してアイテムづくりに没頭しつつ、夢の異世界のんびり生活を叶えようとしていたからだ。
思わぬ形で念願叶い、自由の身となったジャックはひょんなことから小さな離島へと移住し、そこで工房を開くことに。ドラゴン少女やもふもふ妖狐や病弱令嬢やらと出会いつつ、夢だった平穏な物づくりライフを満喫していくのであった。
一方、ジャックの去った商会は経営が大きく傾き、その原因がジャックの持つ優秀な付与効果スキルにあると気づくのだった。
俺がいなくなったら商会の経営が傾いた?
……そう(無関心)
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
田舎暮らしの魔草薬師
鈴木竜一
ファンタジー
治癒魔法使いたちが集まり、怪我や病に苦しむ人たちを助けるために創設されたレイナード聖院で働くハリスは拝金主義を掲げる新院長の方針に逆らってクビを宣告される。
しかし、パワハラにうんざりしていたハリスは落ち込むことなく、これをいいきっかけと考えて治癒魔法と魔草薬を広めるべく独立して診療所を開業。
一方、ハリスを信頼する各分野の超一流たちはその理不尽さとあからさまな金儲け運用に激怒し、独立したハリスをサポートすべく、彼が移り住んだ辺境領地へと集結するのだった。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
地方勤務の聖騎士 ~王都勤務から農村に飛ばされたので畑を耕したり動物の世話をしながらのんびり仕事します~
鈴木竜一
ファンタジー
王都育ちのエリート騎士は左遷先(田舎町の駐在所)での生活を満喫する!
ランドバル王国騎士団に所属するジャスティンは若くして聖騎士の称号を得た有望株。だが、同期のライバルによって運営費横領の濡れ衣を着せられ、地方へと左遷させられてしまう。
王都勤務への復帰を目指すも、左遷先の穏やかでのんびりした田舎暮らしにすっかりハマってしまい、このままでもいいかと思い始めた――その矢先、なぜか同期のハンクが狙っている名家出身の後輩女騎士エリナがジャスティンを追って同じく田舎町勤務に!?
一方、騎士団内ではジャスティンの事件が何者かに仕掛けられたものではないかと疑惑が浮上していて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる