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第50話 魔剣
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「アルゴ……おまえ……」
ヤツが手にしている魔剣。
曰くつきの剣として世界にその名が広まっている。
だが、中にはこいつを使いこなす魔剣使いの商人だったり、嫌われ勇者と呼ばれたある貴族の護衛騎士だったり、ちゃんとした実力を持つ者が持てば頼れる武器となる。
そもそも魔剣使いの商人も嫌われ勇者の護衛騎士も、互いに守るべきものがハッキリしていたからこそ、苦労しながらも魔剣の力を制御できていた。
だが、アルゴは彼らと比較すれば実力も想いも大きく劣る。
完全に使いこなせるとは到底思えなかった。
「やめろ、アルゴ! そいつに手を出すな!」
「お説教はもうたくさんだ! 俺はこの剣であんたを超える!」
もはやアルゴに俺の言葉は届かない。
魔剣に魔力を注ぎ、その強大な力を得ようとする――が、
「ぐはっ!?」
突然苦しみだすアルゴ。
やはり魔剣の持つ禍々しいまでの力を制御できないか。あれでは力を使いこなす前に死んでしまうぞ。
「死に急ぐな! 今からでも遅くはない! 手を放すんだ、アルゴ!」
「だまれぇぇぇぇぇ!!」
凄まじい量の魔力がアルゴの全身から噴き出してくる。
「くっ!」
間に合わなかったか。
けど、まだあきらめるには早い。
俺は魔剣を強制的に手放せるよう攻撃を仕掛けた。すぐに対処できれば、命まで失わずに済むかもしれない。
だが、
「があああああああああああっ!!」
魔剣の力に思考を呑み込まれたアルゴは獣のような雄叫びをあげながら突っ込んでくる。
その勢いに一瞬怯んだが、向こうから来てくれるなら好都合。
剣を構え、ヤツを迎え撃つ体制を整える。
すると、すぐ横に気配を感じて視線を向ける。
そこには負傷したはずのミレインが同じように臨戦態勢を取っていた。
「ミ、ミレイン!?」
「ともに戦いましょう、師匠」
「し、しかし――」
「心配ご無用。私なら平気ですから」
そう言って、いつもの笑顔を見せてくれるミレイン。
……強くなったな。
最初に剣を教えた時に比べると、信じられないくらいの成長だ。昔は何かと泣いていたというのに、一体いつの間にこれほど成長したのか。師匠というより親のような気持ちになってしまっているな。
そんなミレインと一緒に、魔剣に心を奪われたアルゴと対峙する。
――勝負は一瞬でつける。
長引く前に決着をつけなければいけない。
ミレインも同じことを考えているようで最初から全力で挑む気だ。
「遅れるなよ、ミレイン」
「はい!」
そう言葉を交わしてから、俺たちはまったく同じタイミングで駆け出したのだった。
ヤツが手にしている魔剣。
曰くつきの剣として世界にその名が広まっている。
だが、中にはこいつを使いこなす魔剣使いの商人だったり、嫌われ勇者と呼ばれたある貴族の護衛騎士だったり、ちゃんとした実力を持つ者が持てば頼れる武器となる。
そもそも魔剣使いの商人も嫌われ勇者の護衛騎士も、互いに守るべきものがハッキリしていたからこそ、苦労しながらも魔剣の力を制御できていた。
だが、アルゴは彼らと比較すれば実力も想いも大きく劣る。
完全に使いこなせるとは到底思えなかった。
「やめろ、アルゴ! そいつに手を出すな!」
「お説教はもうたくさんだ! 俺はこの剣であんたを超える!」
もはやアルゴに俺の言葉は届かない。
魔剣に魔力を注ぎ、その強大な力を得ようとする――が、
「ぐはっ!?」
突然苦しみだすアルゴ。
やはり魔剣の持つ禍々しいまでの力を制御できないか。あれでは力を使いこなす前に死んでしまうぞ。
「死に急ぐな! 今からでも遅くはない! 手を放すんだ、アルゴ!」
「だまれぇぇぇぇぇ!!」
凄まじい量の魔力がアルゴの全身から噴き出してくる。
「くっ!」
間に合わなかったか。
けど、まだあきらめるには早い。
俺は魔剣を強制的に手放せるよう攻撃を仕掛けた。すぐに対処できれば、命まで失わずに済むかもしれない。
だが、
「があああああああああああっ!!」
魔剣の力に思考を呑み込まれたアルゴは獣のような雄叫びをあげながら突っ込んでくる。
その勢いに一瞬怯んだが、向こうから来てくれるなら好都合。
剣を構え、ヤツを迎え撃つ体制を整える。
すると、すぐ横に気配を感じて視線を向ける。
そこには負傷したはずのミレインが同じように臨戦態勢を取っていた。
「ミ、ミレイン!?」
「ともに戦いましょう、師匠」
「し、しかし――」
「心配ご無用。私なら平気ですから」
そう言って、いつもの笑顔を見せてくれるミレイン。
……強くなったな。
最初に剣を教えた時に比べると、信じられないくらいの成長だ。昔は何かと泣いていたというのに、一体いつの間にこれほど成長したのか。師匠というより親のような気持ちになってしまっているな。
そんなミレインと一緒に、魔剣に心を奪われたアルゴと対峙する。
――勝負は一瞬でつける。
長引く前に決着をつけなければいけない。
ミレインも同じことを考えているようで最初から全力で挑む気だ。
「遅れるなよ、ミレイン」
「はい!」
そう言葉を交わしてから、俺たちはまったく同じタイミングで駆け出したのだった。
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