救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一

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第49話 恐るべき執念

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 暴走するアルゴを追って、俺たちはダンジョンをさらに奥へと進んでいく。
 しかし、あのトーラが負傷しているのには驚いた。

 正直、俺がパーティーを抜ける際の実力だと到底勝てないだろうと踏んでいたからだ。
 ミレインへの執念が、ヤツの中で消えかけていた闘志に火をつけたのか?

 だとしたら皮肉なものだな。

 すでにヤツは救世主としての資格を失っている。
 どれだけ望んでも、二度と手に入ることはないだろう。
 あの称号を得るために、彼がどれほど努力を重ねてきたか……まさかこのような形でそれを思い出すとはな。

 師匠として、俺がヤツを止めなくてはいけない。
 そんな気持ちで進んでいると、ついにアルゴの姿を発見する。

「アルゴ!」

 たまらず叫んでいた。
 彼の視線の先に、負傷したミレインの姿が目に入ったからだ。

「おやおや、誰かと思えば……せっかく邪魔が入らずゆっくり愛を語れると思ったのに」
「愛だと?」

 ミレインを傷つけておいてよく言う。
 彼女はかなりのダメージを負っており、俺の姿を視界に捉えるとニコリと小さく微笑んでから意識を失った。地面に倒れそうになるのをトーラをメルファがギリギリのところで支えて事なきを得る。

「もうあんたは用済みだ。今さらしゃしゃり出てくるなよ」
「ミレインは今俺とパーティーを組んでいる。仲間を傷つけられて黙ってはいられないな」
「けっ! あんたはいつもそうだった! 綺麗ごとばかり並べやがって! 割に合わねぇ報酬でのクエストばかり……うんざりなんだよ!」

 俺はこれまで、アルゴに救世主としての心得も説いてきた。
 しかし、あの様子ではそれが邪魔だったようだな。

「ちょうどいい。ここで決着をつけよう」
「決着?」
「いつまでも師匠面されていたんじゃたまらねぇからな。ここであんたを殺してミレインを手に入れてやる」

 そう言ってアルゴは手にしていた剣に魔力を込める――が、待て。

「な、なんだ、その剣は!?」

 アルゴが手にしていたのは普通の剣ではない。
 禍々しいオーラに包まれたあれは――

「まさか……魔剣?」

 凄まじい力を手に入れる代償として精神を蝕まれるという呪いの武器。
 ヤツめ……とんでもない物に手を出していたな!?
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