救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一

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第37話 落ちぶれた理由

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 温泉で聞いたアルゴたちの噂。
 調子が悪いというのは聞いていたが、救世主パーティーとしての資格を失うほどまで沈んでいるとは思わなかった。

「それは少し理解できないな……あいつらなら俺やミレインがいなくても資格をキープできるだけの力はあった。それに、パーティーメンバーもかなり多かったはずだ」
「だが、実際ヤツらは連戦連敗を繰り返していたらしい。パーティーを抜けたヤツからも話を聞いたんだけど、どうもリーダーのアルゴが原因のようだ」
「アルゴが?」

 俺の中ではもっともあり得ない可能性だった。

 あいつは誰よりもプライドが高く、救世主パーティーという名にこだわりを持っていた。
 そんなアルゴが、称号を失うようなドジを踏むとは思えない。

 そもそも、一度や二度の失敗で失ってしまうほど、救世主パーティーとはいい加減な基準では決められない。

「クエストを失敗している原因について、具体的な理由は明らかになっているのか?」
「詳細は不明だが、そもそも指揮を放棄して何かにこだわり続けていたという話だ」
「何かにこだわり続けていた、か」

 どうやら、【ヴェガリス】が落ちていった原因はそれで間違いなさそうだな。

 しかし、一体何にこだわっていたんだ?

「まさか……」

 真っ先に浮かんだのは――俺とミレインだった。

 しかし、ミレインは誰でもない、アルゴ自身が追放したのだ。
 一度追放したメンバーを連れ戻そうとしたのか?

 あまり考えられないが、失敗続きになった原因を考えた時、いなくなった俺やミレインの存在にたどり着くというのはあり得るか。

 ……待てよ。
 
 だとしたら、ヤツは今も俺やミレインを探している可能性があるな。
 それはアランも同じ考えだったらしい。

「おまえら……気をつけろよ。アルゴはきっと今もふたりを探しているはずだ」
「アランもそう思うか」
「俺はおまえほどアルゴってヤツを知らねぇが、同じ状況に追い込まれた冒険者なら何度も見てきた。ヤツらは決まって他責観念にかられ、正常な判断力を失う傾向にある」
「それは俺も心配しているんだよなぁ」
 
 アルゴがミレインか俺にこだわりを持って追っているとするなら、見つかった際に取る行動として挙げられるのは再スカウトではなく――復讐だ。

「厄介なことにならなければいいのだが」
「まあ、あいつひとりならおまえの足元にも及ばないだろうから安心しろよ」
「うーん……どうかな」

 負けるつもりはないが、何もかもをかなぐり捨てて襲ってくる捨て身の人間は何をするか危険だ。

 うちにはまだ小さい子もいるし、今後は気をつけていかないとな。
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