救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一

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第26話 もったいない

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 自分よりも遥かに大柄でかつ人相の悪い悪漢を蹴散らした謎の少女。
 さすがにこのまま帰すわけにもいかないので事情を聞こうと声をかけたのだが、

「はあ? なんであたしがあんたに素性を話さなくちゃいけないのさ」

 あっさりと拒絶される。
 さらにそれだけにとどまらず、

「どうしても聞きたいっていうなら力づくでやってみなよ。あんたならさっきの連中より楽しませてくれそうだし」
「いや、俺は――」
「せいっ!」
 
 少女はこちらの答えを待たずに飛び蹴りを繰りだす。
 完全な不意打ちたが、攻撃に移る際の動きが大きすぎてかわすのは簡単だった。
 さっきもそうなんだよな。
 大男が自分の攻撃を防がれたと動揺したことで隙が生じ、そこに蹴りを叩き込んだが、あれはもっと実力ある者が相手だった場合、あっさりとかわされるかカウンターを食らっていただろう。とにかくモーションが大きすぎるのだ。

「へぇ、やるじゃん」

 少女はニヤッと余裕の笑みを浮かべる。
 こちらに戦う意思はないのだが、それを伝えるより先に彼女の猛攻が始まる。

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

 次々と繰りださせる蹴りやパンチ。
 威力もスピードもまずますだが、やはり動作が大きいので次の動きも予測しやすい。

「な、なかなかの腕だね」

 徐々に少女の息があがってきた。
 まあ、年齢も考慮したら、ここまでよくもった方か。
 そろそろ説得にも応じてくれそうかな。
 
「まずは落ち着いて俺の話を聞いてくれ」
「まだまだぁ!」

 ダメだった。
 血の気が多いというべきかなんというか……しかし、個人的には彼女のような根性ある子は嫌いではない。ミレインやメルファも俺の鍛錬にしっかり食らいついていってくれているし、この子も鍛え上げればかなり強くなりそうだ。

「くそっ! なんで当たんないんだよ!」

 だんだん苛立ってきて攻撃も雑になってきたな。
 疲労もあるせいでスピードもガタ落ち。
 さすがにこれ以上はよろしくないと、俺は彼女の放った拳を片手で受け止める。

「なっ!?」

 目を見開いて驚く少女。
 今まで自分の拳を止められたことなどなかったのだろう。
 せっかくの才能がもったいないな。

「君は……もっと強くなりたくはないか?」

 気がつくと、俺は彼女を勧誘していた。
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