救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一

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第13話 畑で野菜を作ろう

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 新たに謎の記憶喪失魔法少女メルファが弟子として加わったが……正直、どう接してよいのやら、ちょっと悩んでいた。
 まあ、思えば初めてミレインを弟子にしたのも今のメルファくらいの年齢だったかな。あの頃はまだ救世主パーティーに所属しておらず、俺もフリーで冒険者の真似事みたいことをしていた……懐かしいな。
 
 そのミレインだが、しばらくは教会で寝泊まりすると決定。
 彼女はなぜか俺の家に居候する気だったが、さすがにそれはまずいと主張し、教会で空いている部屋を使わせてもらう運びとなったのである。

 
 ミレインの寝床が決まった次の日。
 今日はダンジョンへ行かず、農業で汗を流す。
前日にフレディ村長と話して決めていたし、教会からの帰り際にミレインとメルファには伝えてある。言ってみればふたりはお休み。
のんびり過ごしてもらおうと考えていた――のだが、

「それでは農作業をしてまいりましょう」
「おー」

 なぜか俺より先に畑となる予定の土地にミレインとメルファの姿があった。

「なんでいるんだ?」
「なんでって……お手伝いをするためですよ。ねー?」
「ねー」

 すっかり意気投合しているな、このふたり。
 昨日は「私が姉弟子ですので私の言うことは絶対ですよ!」とか先輩風を吹かせていたというのに、今じゃすっかり仲の良い姉妹状態だ。

「今日はしっかり休めと言ったじゃないか」
「これが私にとってお休みになるんです!」
「私も」
「いや、しかし……」
「まあまあ、いいじゃないか、デレク。それに人手はおった方がいい」
「は、はあ」

 ……フレディ村長の言うことにも一理ある。それに、せっかく手伝ってくれるという彼女たちの気持ちを無下にするわけにもいかないか。
 とりあえず、俺とミレイン、そしてメルファの三人にフレディ村長と同じく協力を申し出てくれた村人たち四人を加えたメンツで畑を耕していく。
 とはいえ、耕作面積としてはかなり小さい。
 家庭菜園に毛が生えた程度だ。
 俺の場合は売り物としてよりも自分で消費するのが目的だからこれでいい。リゾムで冒険者登録をし、ライセンスも発行してもらったから、今後はそちらの収入がメインとなってくるだろう。

「どんな野菜を育てるんですか?」
「これから暖かくなってくるから、トマトやピーマン、それにナスってところか。気温が下がってくれば、またそれに合わせて育てる野菜を変えていくつもりだよ」
「ナス……」

 突然ミレインの表情が曇る。
 そういえば、この子は昔から「毒っぽい色をしているから」とナスを苦手にしていたな。おいしいんだけどねぇ。
 そのミレインだが、畑仕事は熱心に手伝ってくれた。
 もともと体を鍛えるのが趣味みたいなところがあるので、筋力トレーニング感覚でやってくれている。大変助かるよ。
 一方、そういった力仕事が明らかに得意そうではないメルファだが、こちらも魔法で農具を器用に操りながら頑張っている。

「操作魔法か。いつ覚えたんだ?」
「さっき」
「えっ?」
「なんとなくできそうだったから」
「そ、そうか」

 それで実際にやれてしまうあたりが凄いな。
 しかし、自分の魔力をうまく制御しきれていないようだ。魔法を覚える才能と同じくらい秘めた魔力量は常人のそれを遥かに凌駕するので仕方がないのだが……これは王立学園に預けても手に余るかもしれないな。

 とにかく、ふたりの協力もあって畑は昼過ぎ頃に完成。
 あとは気長に種が成長してくれるのを待つだけだ。

 それから夜までの時間は鍛錬にあてた。
 ミレインは農作業でかなり汗を流したはずだが、未だにピンピンしている。まさに無尽蔵のスタミナだな。
 メルファには魔力の基本的な扱い方を教えた。
 これは剣術や格闘術にも通じることだが、いかに優れた才能の持ち主であっても、基礎基本をないがしろにしていては劇的な成長は見込めない。地盤がしっかりしているからこそ飛躍的なパワーアップにつながるのだ。

 ふたりは黙々と鍛錬に打ち込んだ。
 さらなる高みを目指し、妥協する気配はない。

 そんな頼もしい弟子たちの成長ぶりを眺めているうちに夕暮れとなった。

「よし。今日の鍛錬はこれくらいにしようか」
「は、はい……」
「分かった」

 汗だくのミレインに消耗しているメルファ。
 ともに充実した時間を過ごせたようだな。

「明日はライソンのもとを訪れた後、ダンジョンを探索しようと思っている」
「「ダンジョン!?」」

 疲れ切っていたふたりの顔に光が宿る。
 ミレインはともかく、メルファがここまで関心を抱くのは意外だったな。

 ともかく、せっかく冒険者として登録し、ライセンスまでもらったんだ。
 明日からそっちの仕事もしっかりこなしていかなくちゃな。
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