救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一

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第6話 ミレインの実力

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 こいつらの醸しだす雰囲気は、彼女を追いだした救世主パーティーと似ているからな。アルゴから追放を言い渡された時はショックを受けていたが、今はもう吹っ切れて逆にそれを力に変えている。

「よく見たらそっちの女もなかなかイケてるじゃねぇか」
「ついでにそいつも連れて帰ればリーダーの株も上がるってもんだな」
「そいつはいい。そういうわけだから――おっさんは引っ込んでな!」

 ひとりの男が突然殴りかかってくる。
 だが、あまりにも大振りだったので難なくかわすことができた。
 
「こいつ!」

 男は避けられたのが癪に障ったのか、むきになってなおも攻撃を仕掛けてくる。だが、一発一発がかなり遅く、逆にタイミングを取るのが難しい。とりあえず、最後は軽く足払いをしてコケさせた。

「や、野郎!」

 これに他の男たちが激高。
 それぞれ武器を持って襲いかかってくる。
これ以上教会に近づけさせるわけにはいかないと迎え撃つつもりでいたが、

「はあああああああああああああっ!」

 俺よりも先にミレインが男たちの前へと立ちふさがり、あっという間に蹴散らしていく。

「な、なんだと!?」

 俺がコケさせた男は唯一その攻撃から免れたわけだが、ミレインの圧倒的な実力を目の当たりにして腰が抜けたらしく、なかなか立ち上がれないでいた。
 そんな男へ、俺は静かに語りかける。

「おまえたちはリゾムの町の冒険者か?」
「っ! へ、へへ、そうだ。そこには俺たちの仲間がザッと百人はいる。おまえたちはそいつら全員に今後一生狙われることになるぞ!」
 
 一生とはまた大きく出たな。
 この場合、ただ強がっているだけという見方もできるが……どうにもリゾムの町の現状が気になる。

「覚えていろよ!」

 男たちはちょっと前にも聞いたような捨て台詞を吐いて帰っていった。
 実害がない分、騎士団に差し出してもすぐに解放されるだろうからな。
 いっそ、その巨大冒険者パーティーを一網打尽にした際に巻き込まれてくれた方が確実に牢獄へ送れるだろう。
 それと、今回は被害を未然に防ぐことができたが、今後も他の連中が狙ってくるかもしれない。最悪の場合、この村にも大きな悪影響を及ぼすかもな。
 そうなると、このまま黙っておくわけにはいかなかった。

「行ってみるか……冒険者の町へ」
「えっ? 冒険者になるんですか? それなら私もお供します! 前々からちょっとやってみたいって思っていたんですよ!」
「うーん、冒険者への転職というわけじゃないんだが、選択肢のひとつとして考えておくか」

 とりあえず、次の目的地は決まった。

「明日の早朝から冒険者都市のリゾムを目指す」
「分かりました!」

 ミレインは元気よく返事をする。
 どうやら過去のことは完全に吹っ切れたようだな。
 久々に思いっきり体を動かせてスッキリできたのもよかったみたいだし。

 ……そういえば、俺とミレインが抜けたアルゴたちのパーティーはうまくやっているだろうか。
 今さら気にする必要もないのだけど、実績不足で救世主パーティーの称号を剥奪されそうになったらどんな手を打ってくるのか……そこだけがちょっと気がかりだな。
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