救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一

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第4話 シスターと謎の少女

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「えっ!? ミ、ミレインさん!?」
「はい! 戻ってきました!」
「まあ、そういうわけですよ」
「デレクさんまで!?」

 突然の来訪に驚きまくるシスター・グレイス。事前連絡とかまったくなしだったからな。そういうリアクションにもなるか。村人たちも似たような感じだったしね。

 それから俺たちは教会内にある応接室へと場所を移し、救世主パーティーを抜けてクラン村へと帰ってきた経緯をサラッと話していく。

「アルゴという人は……本当に救世主なのでしょうか」
「どうだろうな。救世主パーティーとはいえ、国が指定する条件をクリアし、それから面談を受けて合格すれば称号が与えられるってくらいだからそこそこ数はいるんだよ。だから、中には本当に人々のために戦おうという正義感の強いパーティーもあるのだろうが……少なくともヤツらは常に私腹を肥やすことと性欲を発散させることにのみ頭を使っていたからな」

 魔族による被害が深刻だからとはいえ、いくらなんでも救世主って言葉を安売りしすぎだよなぁ、この国。

 そんなことを考えながらシスター・グレイスの淹れてくれたコーヒーを飲んでいると、突然ガチャと部屋のドアが開く。

 何事かと思って振り返ると、そこには十歳前後の幼い女の子が目をこすりながらドアを開けて立っていた。

「メルファ? お昼寝から起きたのね」

 シスター・グレイスは少女をメルファと呼び、慌てて駆け寄る。顔立ちや髪の色など似ていない部分が多いから親子ってわけじゃないんだろうけど……一応聞いてみるか。

「その子……まさか、君の娘か?」
「っ!? ち、違います! 私はまだ男性と子どもができるような行為は――あっ」
「む?」

 いかん。
 聞き方がまずかった。
 余計なことを喋って顔を真っ赤にしているシスター・グレイスになんて声をかけたらいいのやらと悩んでいたら、

「っ!?」
 
 教会の外に気配を感じた。

「師匠……近いですね」
「ああ。モンスターではなさそうだが、お祈りに来たってわけでもなさそうだ」
「えっ? えっ?」

 俺たちの言葉の意味が理解できずに慌てふためいているシスター・グレイスに対し、俺はただこれだけを告げた。

 間違いなく、教会に何者かが近づいてきている。

 おまけにひとりではなく複数だし、ヤツらは教会内にいても感じ取れるほど強烈な悪意に満ちていた。神に祈りを捧げるためにやってきたというにはあまりにも殺伐としすぎている連中だ。

「メルファと一緒にこの部屋で待機していてくれ。……どうにも厄介な連中に目をつけられたらしい」
「私たちがいる時でよかったですね」
「ああ。不幸中の幸いってヤツだな」
「それに、ちょうど長い移動生活で体がなまっていたところです。いいウォーミングアップになりますよ」

 ミレインも、迫ってくる者たちの悪意を感じ取ったらしい。
 どこの連中かは知らんが、まずは話を聞いてみることにしよう。
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