転生悪役令嬢、溺愛計画~今世では地味に生きていくつもりが、王太子の蜜愛から逃げられなくなりました~

二階堂まや

文字の大きさ
上 下
30 / 41

♡令嬢、想いを伝える

しおりを挟む
「ん、メイベル様」

「……っ、ん、」

 肌にキスを落とされる度、私は小さな悲鳴を上げる。がさつきのない唇が肌に触れるのは心地よいものの、擽ったくもあるのだ。

「は、エドヴァルド様、ぁ」

「もっと聞かせてください、その可愛らしいお声を」

 口付けを落としながら、エドヴァルドは言う。そして酒を飲んだ訳でもないのに、私の身体はすっかり熱っぽくなっていた。

 肌寒さはどこかへ行ってしまい、ナイトドレスの中はじわりと汗ばみ始めていた。すると彼は、耳たぶを甘く齧ってから静かに口を開いたのだった。

「メイベル様、……よろしいですか?」

「……ん」

 何をどうするかとはっきり言われていないのに、私は直ぐさま彼の言葉の意味を理解した。そして、小さく頷いたのである。

 私が頷いたのを見て、エドヴァルドはナイトドレスの胸元のリボンへと手をかけた。蝶々結びは解かれて襟ぐりが広がったことにより、衣服はあっさり肩から落ちていったのだった。

「……っ」

 ナイトドレスと下着が取り払われ、私は全てをさらけ出す形となった。そんな私の姿を、彼は愛おしげに見つめていた。

「……っ、そんな見ないでくださいな」

 胸元を手で隠しながら、私はせめてもの抵抗として身体を捩らせた。

 アルビナの時よりも、今の方がやけに胸も尻も肉付きが良くなっていた。だから、華奢な身体を期待していたならば期待外れになってしまう。それが怖かったのだ。

「……ハリーストのご飯、どれも美味しいんですもの」

 気付けば、そんな言い訳が口をついていた。

「貴女が誰よりも魅力的なのは、今も昔も変わらぬことです」

 私の肌を一撫でして、エドヴァルドは優しく囁いた。そして自らのシャツのボタンを外し始めたのだった。

「……っ」

 一糸まとわぬ姿となった彼を見て、私はつい息を呑む。肌荒れも引っ掻き傷も見当たらない色白な肌と均整のとれた身体つきは、彫像のように美しく、見蕩れてしまう程であったのだ。

 そして私を軽く抱きしめてから、エドヴァルドはぽつりと呟いた。

「汚れていない身体で貴女と睦み合えるだなんて、過去の自分には想像も出来なかったことです」

「……っ、エドヴァルド様」

「こうしているだけで、私はたまらなく幸せです。メイベル様」

 幸せという言葉に反して、その口調は切なげな色のものであった。生まれ変わっても私がアルビナであったことが消えないように、彼もまたイヴァンの時の記憶に縛られているのだろう。

 しかし。

「……貴方は汚れてなんかいませんわ。イヴァンの時からずっと」

 それは口先だけの慰めではなく、私の本心であった。

 過ちを重ねたアルビナとは異なり、血筋は彼の責任ではない。だから、イヴァンのことを汚らわしいと嫌悪したことは一度も無かった。どうかそれを、分かって欲しかったのだ。

 私の一言に、エドヴァルドは驚いたように目を見開いた。そして段々と、泣きそうな顔になっていったのだった。

「……っ、メイベル様!!」

「あ、んんっ」

 何かが切れたように、エドヴァルドは私と激しく唇を重ねてきた。それは結婚式の誓いのキスとは大きく異なり、男が女を‘‘食べる’’時のものであった。

 口内が蹂躙される度、秘唇にじわりと蜜が滲んでいく。脚を擦り合わせていると、エドヴァルドは下腹部に手を伸ばしたのだった。

「あっ、ああっ」

 淫らな蜜を暴くように中へと指が差し入れられ、それだけで私は声を上げた。

 はしたないと分かっていても、声が抑えられない。胎内が彼の指を締め付けるのが堪らなく恥ずかしい。逞しい腕の中で嫌だ嫌だと首を振るけれども、快楽からは少しも逃げられなかった。

 掻き混ぜるだけ、差し入れるだけの単調な動きならば耐えられただろう。しかし、刺激に慣れ始めた頃合いで責め方を変えられるため、どうにもならない。私とエドヴァルドの力関係は、明らかなものとなっていた。

 この場で私は、彼に勝てないのだ。

「エドヴァルド様、ひ、ぁ、……っ、ああっ!!」

 私はそう叫びながら、呆気なく果てた。

「……っ、は、ぁ」

「っ、メイベル様」

 荒い息をしながら視線を下に向けると、牡茎は既に硬くなり天を仰いでいた。彼が呼吸する度にヒクヒクと震える様子は、まるで生き物のようにも見える。そしてその切っ先には、透明な蜜が滲んでいた。

 肉竿が血管を浮き立たせる姿は恐ろしくもあるが、魅力的でもある。身体はそれを求めているのだから、本能とは不思議なものだ。

「……っ」

 彼がしてくれたのだから、私もお返しをすべきだろう。「施されるばかりではいけない」という閨の授業で習った言葉を思い出し、私は彼自身にそっと手を伸ばした。

 けれどもそれがペニスを握るより前に、エドヴァルドは指を絡めるように手を繋いで、私のゆく手を阻んだのだった。

「ごめんなさい、嫌でしたか?」

「……っ、いえ。ただ、貴女に触れられただけで、きっと暴発してしまいますので」

 馬車での一件を思い出し、私は顔が熱くなるのを感じる。どうやらここは、私が想像していたよりも繊細な場所らしい。

「今宵は……貴女の手ではなく、もっと深い場所で……っ、駄目ですか?」

 私の下腹部に先端を押し付けながら、エドヴァルドは許しを乞うた。

「……っ、いえ」

 二人を阻む者は、もう何も無い。

 エドヴァルドは私の脚を開き、ゆっくりと肉刀を中へと埋め始めたのだった。

「……っ、あ、ああ」

「……っ、は、少し、休憩しますか?」

「ううん、続けてくださいな」

「分かりました、じゃあ……止めたくなったら、いつでも言ってください」

 そう言って、エドヴァルドはグッ、と深く中へと入り込んだ。すると直ぐさま、処女が奪われた感覚が襲ってきたのだった。

 それは痛みではあるものの、幸せな痛みであった。

 初めは彼を締め付けるばかりであったが、少しずつ無駄な力が抜けていく。そして頃合を見計らって、エドヴァルドは抽挿を始めたのだった。

「ひ、あっ……、ああっ、エドヴァルド様っ、あ」

 一度目の行為は、快楽よりも苦痛が強いものだ。確かに私も、身体的な痛みと違和感はある。けれどもやはり、苦しさよりも幸福感が勝っていた。

 それはきっと、心から愛する人と繋がれたからだろう。

「……っ、メイベル様っ、」

 腰を打ち付けながら、エドヴァルドは何度も私の名前を呼ぶ。深緑色の瞳は、切なげに細められていた。

「……っ、メイベル様、あの日、廊下で助けていただいたあの日からずっと、お慕いしておりました……っ」

「は、ぁ、ん……っ、私も、愛してる、っ、んっ」

 どちらからともなく唇を重ね、互いへの愛を囁き合う。いつしか処女を散らした痛みは、甘い感覚へと変わっていた。

 しかし、初夜というものは長く楽しめないものらしい。私の限界はすぐそこにまでやって来ていた。

「エドヴァルド様、私、もうっ……」

「は、私もです、メイベル様、一緒に……っ、!!」

「あっ、あああっ!!」

 最奥を突かれた瞬間、私は達した。それに呼応するように、エドヴァルドは胎内に白濁を吐き出したのだった。

「は……ぁ、」

「ん……う」

 身体の奥に幸せな熱を感じながら、私はゆっくりと目を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない

かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」 婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。 もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。 ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。 想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。 記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…? 不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。 12/11追記 書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。 たくさんお読みいただきありがとうございました!

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる

西野歌夏
恋愛
 ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー  私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。

婚約破棄された令嬢は騎士団長に溺愛される

狭山雪菜
恋愛
マリアは学園卒業後の社交場で、王太子から婚約破棄を言い渡されるがそもそも婚約者候補であり、まだ正式な婚約者じゃなかった 公の場で婚約破棄されたマリアは縁談の話が来なくなり、このままじゃ一生独身と落ち込む すると、友人のエリカが気分転換に騎士団員への慰労会へ誘ってくれて… 全編甘々を目指しています。 この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

ヤンデレ、始められました。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
ごくごく平凡な女性と、彼女に執着する騎士団副隊長の恋愛話。Rシーンは超あっさりです。

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

筋書きどおりに婚約破棄したのですが、想定外の事態に巻き込まれています。

一花カナウ
恋愛
第二王子のヨハネスと婚約が決まったとき、私はこの世界が前世で愛読していた物語の世界であることに気づく。 そして、この婚約がのちに解消されることも思い出していた。 ヨハネスは優しくていい人であるが、私にはもったいない人物。 慕ってはいても恋には至らなかった。 やがて、婚約破棄のシーンが訪れる。 私はヨハネスと別れを告げて、新たな人生を歩みだす ――はずだったのに、ちょっと待って、ここはどこですかっ⁉︎ しかも、ベッドに鎖で繋がれているんですけどっ⁉︎ 困惑する私の前に現れたのは、意外な人物で…… えっと、あなたは助けにきたわけじゃなくて、犯人ってことですよね? ※ムーンライトノベルズで公開中の同名の作品に加筆修正(微調整?)したものをこちらで掲載しています。 ※pixivにも掲載。 8/29 15時台HOTランキング 5位、恋愛カテゴリー3位ありがとうございます( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)

隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響
恋愛
平和だったカヴァニス王国が、隣国イザイアの突然の侵攻により一夜にして滅亡した。 カヴァニスの王女アリーチェは、逃げ遅れたところを何者かに助けられるが、意識を失ってしまう。 目覚めたアリーチェの前に現れたのは、祖国を滅ぼしたイザイアの『隻眼の騎士王』ルドヴィクだった。 憎しみと侮蔑を感情のままにルドヴィクを罵倒するが、ルドヴィクは何も言わずにアリーチェに治療を施し、傷が癒えた後も城に留まらせる。 ルドヴィクに対して憎しみを募らせるアリーチェだが、時折彼の見せる悲しげな表情に別の感情が芽生え始めるのに気がついたアリーチェの心は揺れるが………。 ※内容の一部に残酷描写が含まれます。

処理中です...