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おまけの小話(ヴァルタサール視点)
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+以下、おまけの小話です。
+かなり長くなりました(約5100字)。
オリヴィアの名前を初めて聞いたのは、五カ国王室会議の最中であった。
「今度ドルシナウで開かれる音楽会、クラリス王女も参加するらしいな」
「お、それは楽しみだ」
会議と言っても、近隣国同士の交流が目的の気軽なものだ。重要な議題が無い時は、終始雑談で終わることも多々あった。はっきり言って、会議ではなく茶会と言ってしまっても差し支えないだろう。
ランダードの周辺には、芸術文化と深い関わりのある国が四カ国存在する。規模としてはほぼ同じなので、ことあるごとに国同士協力していた。そして、各国の次期後継者がひと月に一度集まるのが五カ国会議という訳だ。
国の発展を願うもの同士……とは言っても、雑談の際に温度差を感じることも多々あるのだった。
「あの子、可愛いもんな。なあ、ヴァル?」
茶化すように、一人が自分にそう言った。
「別に、彼女にさして興味は無い」
「全く、クラリス王女も何でこんなよく分からん奴が良いんだか」
「知らん。本人に聞いてくれ」
どういう風の吹き回しか、自分はクラリスにいたく気に入られているらしい。顔を合わす度に彼女から猛烈なアプローチをされるため、自分も周りも嫌でも分かる程だった。
しかし、私としては彼女のことはあまり好きでは無かった。とはいえ音楽という共通項がある以上、無下にもできない。正直、早く他の男にターゲットが移るのを願うばかりだった。
「あー、あとさ、あの子も参加するって聞いたぞ。ヴァイオリン狂いの」
「誰だそれは?」
「知らないのか? リブアルの第一王女がヴァイオリン狂いって呼ばれてるの。確か名前は、オリヴィアだったっけか」
「会ったことも聞いたこともないな」
「そりゃそうだろ。年頃になっても夜会や舞踏会に全然参加しないんだから」
聞くに、オリヴィアはヴァイオリンの練習に日夜明け暮れており、出席が必須の場で無い限り殆ど社交の場に姿を表さないのだという。
「だいぶ前、夜会でどこかの王子に気に入られて、デートに誘われたけどヴァイオリンの練習をしたいからと断ったって逸話があるくらいだ。ありゃあ筋金入りだな」
「……ほう」
どうやら、彼女は何よりもヴァイオリンを優先させる生活をしているらしい。それが良いかはさておき、やらねばならぬことで日々が埋めつくされている自分とは対照的であった。
そんな彼女に、私はほんの少し興味を持ち始めていた。
「でもそれが無ければ……中々の上玉だよな」
「ああ、確かにな」
彼女を見かけたことのあるらしい二人が、口々にそう言った。
「なかなかの美人だし……大きくて良い胸してるしな」
「でもさ、あの部類の美人は要注意だろ」
「要注意、とは?」
「ツンケンしたキツい性格が顔に出てる。ヴァルも見たら分かるさ。結婚したら最後、絶対尻に敷かれるぞ……あれは」
「そうだな。妹は大人しくて可愛いのに」
気の強いヴァイオリン狂い……か。
そんな言われようの彼女と自分が深く関わっていくことになるなど、当時の自分は知る由も無かった。
音楽会でのオリヴィアの演奏にすっかり心を射止められた私は、その後の夜会で是非彼女と話してみたいと思った。案の定クラリスに捕まったものの、やんわりと断ってオリヴィアを探したのだった。
そして中々見つからず困っていた矢先、オリヴィアが自分の方に倒れ込んできた訳である。探し求めていた女が自らやってくるなど、まったくの想定外であった。
「申し訳ございません。少し、飲みすぎてしまったようで……」
そう言った彼女は、余程酒を飲んでいたのかやや呂律が回っておらず、顔も肌もすっかり紅潮していた。そんな姿だからか、噂に聞いていたような棘のある雰囲気は感じられなかった。むしろ、隙があり危なっかしい女とすら思えた。
美人……否。
「……可愛い」
「? ふ、え?」
「いや、何でもない」
これが、彼女に対する第一印象であった。
+
「ん……ヴァルタサール様、気持ち良いですか?」
夜。私は軽く脚を開く形でベッドに腰掛けていた。そして、股の間に入るようにしてオリヴィアは床に座っていた。
ナイトドレスのリボンは解けており布を腰までずり下げているため、彼女の乳房からへそに至るまでが私の眼前に晒される形となっていた。
そしてオリヴィアは、豊満な胸を使ってゆるく勃起し始めた肉竿を可愛がっているのだった。
「オリヴィア……っ、は、後はベッドで……っ、床に座ってたら、脚が痛いだろ」
「だって……っ、この体勢じゃないと、根元まで全部、挟めないんですもの」
谷間に挟んだ肉棒を刺激するために胸を寄せ上げながら、オリヴィアは言った。
「……っ、う、」
牡茎が上から下まで胸に抱き入れられているが為に、時折自分の恥毛が柔く白い肌をくすぐる。その度に彼女は、恥ずかしそうに目を細めるのだった。
こうしたいと言ったのは彼女だが、どうやら始めたは良いが照れが出てきたらしい。
「ん、……ここも」
「……っ、う、っ、あ、」
胸からペニスを解放したかと思いきや、オリヴィアは乳首を剥き出しとなった亀頭に擦り付けてきた。いやらしい硬さが敏感な箇所を掠め、快感のあまり射精感が一気に高まっていく。くすんでいない綺麗な色をしてる尖りは、その色に反して容赦無く自分を責め立てているのだった。
世の男を魅了する胸が、ありとあらゆる方法で自分をもてなしてくれている。我ながら信じられない光景だ。
「は……ぁ、んっ」
もう一度肉棒を谷間に挟んでから、オリヴィアは先端に軽く口付けた。小動物を可愛がるような仕草には、彼女の優しい性格が滲んでいた。
愛する女に奉仕される。それだけで興奮を駆り立てるには十分過ぎる。このまま行けば、柔らかな胸を白に汚すことになるだろう。
それも良いかもしれない……が。
「オリヴィア、おいで」
「え、あ!!」
ひょいとオリヴィアの身体を持ち上げ、二人してベッドの上に倒れ込む。そして、すぐさま彼女を後ろ抱きにしたのだった。
「まだ、終わってませんのに……」
「私はお前とベッドの上で仲良く過ごしたいんだが、駄目か?」
「……い、いいえ」
十分に性的な快楽は得られたと伝えるように、私は硬くなった自身を彼女の腰あたりに押し付けた。
それから、私は本題を切り出した。
「オリヴィア。どうしたんだ?」
「……っ、」
「何か不安なことでもあるのか?」
どうにも、彼女の様子がおかしいと思えて仕方が無かったのだ。もっと言えば、先ほどの奉仕も''後ろめたさ''を感じたが故にしたことにも見えた。
少し前、クラリスへの仕返しのために結婚したことを告白された。必死に謝る彼女を当然許したものの、まだそのことを引きずっているのかもしれない。
彼女を褒める時は、当然ながら面と向かって伝える。しかし、何か聞きたい時は今のように後ろから話しかけるのがいつの間にか癖になっていた。なるべく、尋問のように威圧感を与えたく無いのだ。無愛想な顔はこういった場面で邪魔になるから困ったものだ。
応えを待っていると、オリヴィアが口にしたのは意外な一言だった。
「……昨日の夜会で、貴方にご迷惑をおかけしてしまったのが気掛かりで」
それだけ言って、オリヴィアはしょんぼりと俯いてしまったのだった。
昨夜ランダード主催の夜会が行われたのだが、実はそこで少しばかり''事件''が起こったのだ。
他国から客人を招くということもあり、折角なので彼女含む王室女性陣はランダードの伝統的なドレスを着ることになった。早いが話、オリヴィアはそのドレスが似合いすぎていたのである。
ランダードのドレスは蔓草柄の刺繍とあと一つ特徴がある。……デコルテ部分がやけに開いているのだ。
美しい胸元を持つ彼女のことだ。当然ながら、注目の的となった。女性の客人からはとても好評だった。しかし、男からは悪い意味で好評を博してしまったのだ。
露骨に凝視する者、わざとらしく目をそらす者、やたら前屈みになる者、その場を離れる者……夜という時間帯も手伝ってか、やたらと落ち着かない男性客が続出したのだ。そして、オリヴィアだけ途中で別のドレスに着替える羽目になったのである。
「だからせめて……役に立つことをしたくて」
「成程な」
「自分の体型のせいで、貴方だけでなく皆に迷惑をかけてしまって。あのドレスだって折角仕立てていただいたのに。王室の品位を下げたと言われても仕方がありませんわ」
「あれは……お前は悪くない。笑い話の範疇だろ。ドレス選びを手伝ってた母上や姉上から見て全く問題無かったのだから。あくまで良からぬことを想像した受け手側の問題だ」
実際、家族みんなオリヴィアのことを責める気は無かった。むしろ、今回のことで夜会に対して苦手意識が生じないかと彼女を心配しているのだった。
「ヴァルタサール様……」
「全く下品でも無いし、とっても似合ってた。あのドレスは女性客ばかりの集まりの時に着れば良い」
そこまで言うと、今まで変に強ばっていたオリヴィアの肩の力が抜けているのが分かった。どうやら、ある程度不安は取り除けたようだ。
余談だが、リブアルのドレスは首からデコルテに至るまで薄い布やレースで覆われているデザインが一般的である。そのため肌の露出になれていないのか、オリヴィアはランダードのドレスを着た際に恥ずかしそうにしていた。肌を出すのはともかくその表情にやたら情欲をそそられたというのは、黙っておこう。
「お前は、気にしすぎだ。オリヴィア」
彼女は気位が高いと言うよりも、真面目であるが故に気にしすぎる一面がある。そんな繊細なところが愛しくもあるが、時折心配になるのだった。
ちなみに、オリヴィアがヴァイオリンをこよなく愛しているのは事実だが、好きなことだけをする我儘な女では無いというのが本当のところだ。
結婚前、ヴァイオリンに熱中するオリヴィアを心配した彼女の両親と家庭教師は、毎日彼女に宿題を出した。それが終わり、テストで合格点を取れたらヴァイオリンをして良いルールにしたのだという。どうやら朝から夕方まで課題をさせて、残った時間でヴァイオリンをするよう仕向けたかったようだ。当然ながら、そうなるとヴァイオリンの練習よりも勉強時間の方が増える訳だ。
が、練習時間を何としてでも削りたくないオリヴィアは、夜明け前に起きて朝食前に宿題とテストを全て終わらせ、後は全てヴァイオリン練習に使うという信じられないスケジュールで行動し始めたのだった。無論、学業は文句の付けようのない程に優秀だったという。そんな努力家の彼女を見て、周囲も認めざるを得なかったようだ。
自分もまたそんな彼女が好きで仕方が無いし、大切にしたいと思っている。
そっと肩口に口付けると、オリヴィアはこちらに向き合うように身体を反転させた。そして遠慮がちに抱きついてきたのだった。
「ヴァルタサール様……後ろ向きだとお顔が見えなくて寂しいですわ」
いじらしいと言う他無い態度に、身体が段々と昂っていくのを感じる。彼女はきっとこれを無意識にやっているのだから、恐ろしい。
「本当に、可愛いな」
「またそんな揶揄って」
「全部本音だ。あの夜だって今だって、嘘を言ったことは一度も無い」
柔肌を愛しむように撫でると、オリヴィアは手のひらを重ねてきたのだった。
「ヴァルタサール様……今日は、して下さらないのですか?」
それは、紛れもなく情事への誘いだった。
半脱げとなったナイトドレスとドロワーズを取り払い、生まれたままの姿となったオリヴィアを再度抱き締める。そして濡れた秘花を、咲かせるように開いた。
そして出てきたのは、淫蜜に濡れた花芯であった。
「あ……ん、ぅ、……っ、は、ぁ、」
押し込むように撫でると、オリヴィアは熱い吐息に包まれた喘ぎ声を上げる。そんな彼女を見て、一層興奮は増すばかりだ。
「少し、刺激してみるか」
「あっ、あああっ」
彼女をシーツの上に寝かせ、脚を開かせる。そして私は、猛った牡茎に花芯を擦り付け始めた。それだけで、秘唇は蜜を滴らせて私を濡らしたのだった。
「あ、……ん、ヴァルタサール様、ぁっ、」
口で可愛がったり、尿道口に差し入れたり。ここに対して''楽しみ方''はいくらでもある。
しかし、今の彼女には刺激が強すぎることだ。今宵はここまでとしておこう。
「も……、駄目、ヴァルタサール様……っ、焦らさないで、意地悪しないで……」
涙目でそんなことを言われて、放っておける訳が無い。衣服を脱ぎ捨てて、私は肉刀をゆっくりと胎内へと沈めた。
「ん……っ、オリヴィア……っ、」
「あっ、ああっ、んっ、ヴァルタサール様、ぁ」
「……っ、愛してる」
「私、も、愛してます、……っ」
彼女の一言を聞いて、自然と口元が緩んでいくのが分かる。愛する女の言葉で、どうやら鉄仮面は割れてしまったようだ。
指を絡めるように彼女と手を繋いでから、私はもう一度オリヴィアにキスをした。
+かなり長くなりました(約5100字)。
オリヴィアの名前を初めて聞いたのは、五カ国王室会議の最中であった。
「今度ドルシナウで開かれる音楽会、クラリス王女も参加するらしいな」
「お、それは楽しみだ」
会議と言っても、近隣国同士の交流が目的の気軽なものだ。重要な議題が無い時は、終始雑談で終わることも多々あった。はっきり言って、会議ではなく茶会と言ってしまっても差し支えないだろう。
ランダードの周辺には、芸術文化と深い関わりのある国が四カ国存在する。規模としてはほぼ同じなので、ことあるごとに国同士協力していた。そして、各国の次期後継者がひと月に一度集まるのが五カ国会議という訳だ。
国の発展を願うもの同士……とは言っても、雑談の際に温度差を感じることも多々あるのだった。
「あの子、可愛いもんな。なあ、ヴァル?」
茶化すように、一人が自分にそう言った。
「別に、彼女にさして興味は無い」
「全く、クラリス王女も何でこんなよく分からん奴が良いんだか」
「知らん。本人に聞いてくれ」
どういう風の吹き回しか、自分はクラリスにいたく気に入られているらしい。顔を合わす度に彼女から猛烈なアプローチをされるため、自分も周りも嫌でも分かる程だった。
しかし、私としては彼女のことはあまり好きでは無かった。とはいえ音楽という共通項がある以上、無下にもできない。正直、早く他の男にターゲットが移るのを願うばかりだった。
「あー、あとさ、あの子も参加するって聞いたぞ。ヴァイオリン狂いの」
「誰だそれは?」
「知らないのか? リブアルの第一王女がヴァイオリン狂いって呼ばれてるの。確か名前は、オリヴィアだったっけか」
「会ったことも聞いたこともないな」
「そりゃそうだろ。年頃になっても夜会や舞踏会に全然参加しないんだから」
聞くに、オリヴィアはヴァイオリンの練習に日夜明け暮れており、出席が必須の場で無い限り殆ど社交の場に姿を表さないのだという。
「だいぶ前、夜会でどこかの王子に気に入られて、デートに誘われたけどヴァイオリンの練習をしたいからと断ったって逸話があるくらいだ。ありゃあ筋金入りだな」
「……ほう」
どうやら、彼女は何よりもヴァイオリンを優先させる生活をしているらしい。それが良いかはさておき、やらねばならぬことで日々が埋めつくされている自分とは対照的であった。
そんな彼女に、私はほんの少し興味を持ち始めていた。
「でもそれが無ければ……中々の上玉だよな」
「ああ、確かにな」
彼女を見かけたことのあるらしい二人が、口々にそう言った。
「なかなかの美人だし……大きくて良い胸してるしな」
「でもさ、あの部類の美人は要注意だろ」
「要注意、とは?」
「ツンケンしたキツい性格が顔に出てる。ヴァルも見たら分かるさ。結婚したら最後、絶対尻に敷かれるぞ……あれは」
「そうだな。妹は大人しくて可愛いのに」
気の強いヴァイオリン狂い……か。
そんな言われようの彼女と自分が深く関わっていくことになるなど、当時の自分は知る由も無かった。
音楽会でのオリヴィアの演奏にすっかり心を射止められた私は、その後の夜会で是非彼女と話してみたいと思った。案の定クラリスに捕まったものの、やんわりと断ってオリヴィアを探したのだった。
そして中々見つからず困っていた矢先、オリヴィアが自分の方に倒れ込んできた訳である。探し求めていた女が自らやってくるなど、まったくの想定外であった。
「申し訳ございません。少し、飲みすぎてしまったようで……」
そう言った彼女は、余程酒を飲んでいたのかやや呂律が回っておらず、顔も肌もすっかり紅潮していた。そんな姿だからか、噂に聞いていたような棘のある雰囲気は感じられなかった。むしろ、隙があり危なっかしい女とすら思えた。
美人……否。
「……可愛い」
「? ふ、え?」
「いや、何でもない」
これが、彼女に対する第一印象であった。
+
「ん……ヴァルタサール様、気持ち良いですか?」
夜。私は軽く脚を開く形でベッドに腰掛けていた。そして、股の間に入るようにしてオリヴィアは床に座っていた。
ナイトドレスのリボンは解けており布を腰までずり下げているため、彼女の乳房からへそに至るまでが私の眼前に晒される形となっていた。
そしてオリヴィアは、豊満な胸を使ってゆるく勃起し始めた肉竿を可愛がっているのだった。
「オリヴィア……っ、は、後はベッドで……っ、床に座ってたら、脚が痛いだろ」
「だって……っ、この体勢じゃないと、根元まで全部、挟めないんですもの」
谷間に挟んだ肉棒を刺激するために胸を寄せ上げながら、オリヴィアは言った。
「……っ、う、」
牡茎が上から下まで胸に抱き入れられているが為に、時折自分の恥毛が柔く白い肌をくすぐる。その度に彼女は、恥ずかしそうに目を細めるのだった。
こうしたいと言ったのは彼女だが、どうやら始めたは良いが照れが出てきたらしい。
「ん、……ここも」
「……っ、う、っ、あ、」
胸からペニスを解放したかと思いきや、オリヴィアは乳首を剥き出しとなった亀頭に擦り付けてきた。いやらしい硬さが敏感な箇所を掠め、快感のあまり射精感が一気に高まっていく。くすんでいない綺麗な色をしてる尖りは、その色に反して容赦無く自分を責め立てているのだった。
世の男を魅了する胸が、ありとあらゆる方法で自分をもてなしてくれている。我ながら信じられない光景だ。
「は……ぁ、んっ」
もう一度肉棒を谷間に挟んでから、オリヴィアは先端に軽く口付けた。小動物を可愛がるような仕草には、彼女の優しい性格が滲んでいた。
愛する女に奉仕される。それだけで興奮を駆り立てるには十分過ぎる。このまま行けば、柔らかな胸を白に汚すことになるだろう。
それも良いかもしれない……が。
「オリヴィア、おいで」
「え、あ!!」
ひょいとオリヴィアの身体を持ち上げ、二人してベッドの上に倒れ込む。そして、すぐさま彼女を後ろ抱きにしたのだった。
「まだ、終わってませんのに……」
「私はお前とベッドの上で仲良く過ごしたいんだが、駄目か?」
「……い、いいえ」
十分に性的な快楽は得られたと伝えるように、私は硬くなった自身を彼女の腰あたりに押し付けた。
それから、私は本題を切り出した。
「オリヴィア。どうしたんだ?」
「……っ、」
「何か不安なことでもあるのか?」
どうにも、彼女の様子がおかしいと思えて仕方が無かったのだ。もっと言えば、先ほどの奉仕も''後ろめたさ''を感じたが故にしたことにも見えた。
少し前、クラリスへの仕返しのために結婚したことを告白された。必死に謝る彼女を当然許したものの、まだそのことを引きずっているのかもしれない。
彼女を褒める時は、当然ながら面と向かって伝える。しかし、何か聞きたい時は今のように後ろから話しかけるのがいつの間にか癖になっていた。なるべく、尋問のように威圧感を与えたく無いのだ。無愛想な顔はこういった場面で邪魔になるから困ったものだ。
応えを待っていると、オリヴィアが口にしたのは意外な一言だった。
「……昨日の夜会で、貴方にご迷惑をおかけしてしまったのが気掛かりで」
それだけ言って、オリヴィアはしょんぼりと俯いてしまったのだった。
昨夜ランダード主催の夜会が行われたのだが、実はそこで少しばかり''事件''が起こったのだ。
他国から客人を招くということもあり、折角なので彼女含む王室女性陣はランダードの伝統的なドレスを着ることになった。早いが話、オリヴィアはそのドレスが似合いすぎていたのである。
ランダードのドレスは蔓草柄の刺繍とあと一つ特徴がある。……デコルテ部分がやけに開いているのだ。
美しい胸元を持つ彼女のことだ。当然ながら、注目の的となった。女性の客人からはとても好評だった。しかし、男からは悪い意味で好評を博してしまったのだ。
露骨に凝視する者、わざとらしく目をそらす者、やたら前屈みになる者、その場を離れる者……夜という時間帯も手伝ってか、やたらと落ち着かない男性客が続出したのだ。そして、オリヴィアだけ途中で別のドレスに着替える羽目になったのである。
「だからせめて……役に立つことをしたくて」
「成程な」
「自分の体型のせいで、貴方だけでなく皆に迷惑をかけてしまって。あのドレスだって折角仕立てていただいたのに。王室の品位を下げたと言われても仕方がありませんわ」
「あれは……お前は悪くない。笑い話の範疇だろ。ドレス選びを手伝ってた母上や姉上から見て全く問題無かったのだから。あくまで良からぬことを想像した受け手側の問題だ」
実際、家族みんなオリヴィアのことを責める気は無かった。むしろ、今回のことで夜会に対して苦手意識が生じないかと彼女を心配しているのだった。
「ヴァルタサール様……」
「全く下品でも無いし、とっても似合ってた。あのドレスは女性客ばかりの集まりの時に着れば良い」
そこまで言うと、今まで変に強ばっていたオリヴィアの肩の力が抜けているのが分かった。どうやら、ある程度不安は取り除けたようだ。
余談だが、リブアルのドレスは首からデコルテに至るまで薄い布やレースで覆われているデザインが一般的である。そのため肌の露出になれていないのか、オリヴィアはランダードのドレスを着た際に恥ずかしそうにしていた。肌を出すのはともかくその表情にやたら情欲をそそられたというのは、黙っておこう。
「お前は、気にしすぎだ。オリヴィア」
彼女は気位が高いと言うよりも、真面目であるが故に気にしすぎる一面がある。そんな繊細なところが愛しくもあるが、時折心配になるのだった。
ちなみに、オリヴィアがヴァイオリンをこよなく愛しているのは事実だが、好きなことだけをする我儘な女では無いというのが本当のところだ。
結婚前、ヴァイオリンに熱中するオリヴィアを心配した彼女の両親と家庭教師は、毎日彼女に宿題を出した。それが終わり、テストで合格点を取れたらヴァイオリンをして良いルールにしたのだという。どうやら朝から夕方まで課題をさせて、残った時間でヴァイオリンをするよう仕向けたかったようだ。当然ながら、そうなるとヴァイオリンの練習よりも勉強時間の方が増える訳だ。
が、練習時間を何としてでも削りたくないオリヴィアは、夜明け前に起きて朝食前に宿題とテストを全て終わらせ、後は全てヴァイオリン練習に使うという信じられないスケジュールで行動し始めたのだった。無論、学業は文句の付けようのない程に優秀だったという。そんな努力家の彼女を見て、周囲も認めざるを得なかったようだ。
自分もまたそんな彼女が好きで仕方が無いし、大切にしたいと思っている。
そっと肩口に口付けると、オリヴィアはこちらに向き合うように身体を反転させた。そして遠慮がちに抱きついてきたのだった。
「ヴァルタサール様……後ろ向きだとお顔が見えなくて寂しいですわ」
いじらしいと言う他無い態度に、身体が段々と昂っていくのを感じる。彼女はきっとこれを無意識にやっているのだから、恐ろしい。
「本当に、可愛いな」
「またそんな揶揄って」
「全部本音だ。あの夜だって今だって、嘘を言ったことは一度も無い」
柔肌を愛しむように撫でると、オリヴィアは手のひらを重ねてきたのだった。
「ヴァルタサール様……今日は、して下さらないのですか?」
それは、紛れもなく情事への誘いだった。
半脱げとなったナイトドレスとドロワーズを取り払い、生まれたままの姿となったオリヴィアを再度抱き締める。そして濡れた秘花を、咲かせるように開いた。
そして出てきたのは、淫蜜に濡れた花芯であった。
「あ……ん、ぅ、……っ、は、ぁ、」
押し込むように撫でると、オリヴィアは熱い吐息に包まれた喘ぎ声を上げる。そんな彼女を見て、一層興奮は増すばかりだ。
「少し、刺激してみるか」
「あっ、あああっ」
彼女をシーツの上に寝かせ、脚を開かせる。そして私は、猛った牡茎に花芯を擦り付け始めた。それだけで、秘唇は蜜を滴らせて私を濡らしたのだった。
「あ、……ん、ヴァルタサール様、ぁっ、」
口で可愛がったり、尿道口に差し入れたり。ここに対して''楽しみ方''はいくらでもある。
しかし、今の彼女には刺激が強すぎることだ。今宵はここまでとしておこう。
「も……、駄目、ヴァルタサール様……っ、焦らさないで、意地悪しないで……」
涙目でそんなことを言われて、放っておける訳が無い。衣服を脱ぎ捨てて、私は肉刀をゆっくりと胎内へと沈めた。
「ん……っ、オリヴィア……っ、」
「あっ、ああっ、んっ、ヴァルタサール様、ぁ」
「……っ、愛してる」
「私、も、愛してます、……っ」
彼女の一言を聞いて、自然と口元が緩んでいくのが分かる。愛する女の言葉で、どうやら鉄仮面は割れてしまったようだ。
指を絡めるように彼女と手を繋いでから、私はもう一度オリヴィアにキスをした。
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