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欲を解き放つため浴室へ

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「……っ、申し訳ございません」

 何よりも性的欲求と異性への興味を優先した自分が浅ましく思えて、罪悪感でどうにかなってしまいそうだった。子作りの時だけ許される感覚を既に感じてしまった自分が、情けなくて堪らない。どうしようもなくなり、目尻から涙が零れてきたのだった。

「……っ、げほ、っ、ううっ」

 浴巾で私の身体を拭ってから、ウェンデは何も言わず私を抱きかかえた。そして、赤子をあやすように背中を軽く叩いたのである。

「一体どうしたんだ? ルイーセ。済まないが泣いてるだけじゃ分からん」

「……っ、こんなはしたないこと、貴方に嫌われてしまうから言えませんわ」

「何を言っても嫌わないと約束する。だから、教えてくれ」

 そう言った彼の声色は穏やかで、私の混乱した気持ちを落ち着けていった。暫く泣きじゃくりながらかぶりを振っていたものの、とうとう私は白状したのだった。

 今朝の一件以降、性的な意味で彼への興味と欲が湧いてしまって抑えられないのだと私はウェンデに告げた。まさか、自分の妻がこんなふしだらな女だとは彼も思っていなかったに違いない。そして私も、ここまで自分がどうしようも無い女だとは、つい今朝まで思っていなかった。

 恥ずかしさのあまり、私は顔を合わせられずにいた。

「それは別に、悪いことではないと思うが」

「ふ……え?」

「何はともあれ、興味を持たれるというのは悪い気はしない」

 驚いてウェンデの顔を見たが、彼は嘘を言っているようにも見えなかった。

「ところで、さっきまでのでその湧き上がった欲は満たされたのか?」

「……」

 正直、まだ身体の芯は熱いままで肉体的には''不満足''であった。けれどもそうとは言い出せず、私は無言で俯いた。

「物足りないなら、満たせば良い。だが、場所だけ変えた方が良さそうだな」

 そう言って、ウェンデはサイドテーブルに置かれた水の入ったボトルを手に取った。
 
「喉乾いたか?」

「その、少しだけ」

 困惑しながらもそう言うと、ウェンデはグラスに水を注いで渡してくれた。それを飲んでいると、彼はボトルの水を一気飲みしたのである。 

「は……じゃあ行くか」

 私が水を飲み終えたのを見計らって、ウェンデは私の身体に毛布を巻き付けた。そのまま彼は、右肩の上に私を抱え上げたのである。

 無論、彼は一糸まとわぬ姿のままだ。

「ウェンデ様!?」 

「ん? 抱えられるのは苦手だったか?」

「ち、違います!! その、こんな姿誰かに見られたら……」

「夜も遅い。こんな真夜中なら、使用人も誰も寝てるだろ」

 意に介さない様子で、ウェンデは裸のまま廊下を歩き続ける。上手く行けば自分の欲を満たせるかもしれないという期待もあり、私はそれ以上強く言うことが出来なかった。

「……」

 胴体を持たれて前向きに担ぎ上げられているので、自然と視線が下に行く。すると、恥毛の下にある肉竿につい目がいってしまった。

 先程精を放ったせいかそこは柔らかさを取り戻し、萎えている。そして彼が歩みを進める度に、そこはブラブラと揺れ動いていた。 見てはいけない部分を盗み見てしまっているような気がして、私は慌てて視線を逸らした。

 ふと、自らの下半身が涼しいことに気がついた。どうやら毛布が巻かれているのは自分の胸元から腰あたりまでで、長さが足りず尻までは隠せていないようだった。

 つまりは、後ろから誰か歩いてきた場合、自分の恥ずかしいところが見られてしまう訳だ。

 とはいえ、抱えられて動きが制限された状態で、それをどうにかすることは出来ない。せめてもの抵抗として、私は脚を閉じてなるべく秘所をさらけ出さないようにする他無かった。

 早く、早く……!!

 別の意味で焦りを感じ始めたところで、彼はとある部屋の前で立ち止まり、ドアノブに手をかけた。

 辿り着いたのは、浴室だった。

 脱衣所で毛布を取り払われ、二人で浴室に入る。扉を開けると、部屋に立ち込めていた暖かい湯気が身体にぶつかってきたのだった。

 浴槽のお湯は抜かれておらず、そこには筋肉疲労の回復のために入れられた乾燥したハーブが浮いている。その薬草めいた香りは、森を彷彿とさせた。

 匂いのせいで条件反射のように、あの光景が目に浮かんだ。

「ここだったら、何をしても水で流せば良い」

「……はい」

「それで、どうしたい?」

「その……もう一度だけ、……用を足してるとこが、見たいです」

 私は自らの欲望を口にした。
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